コロナでも伸びる企業

家具、インテリアの島忠にインテリア業界2位のDCMがTOBを仕掛けていますが、ニトリがそれに参戦をしてきました。島忠をめぐりすでにTOB期間に入っており特に両経営陣でもめているわけでもないところにニトリが割って入る構図となり、かつてない異例の展開となりそうです。

(島忠HPから:編集部)

(島忠HPから:編集部)

記事の解説からは巣ごもりの今期はインテリア業界は好調な決算で過去最高となっているものの、巣ごもりが明けたら激しい競争が待っているというシナリオの下、今のうちにできるだけのことはしておこうという狙いのようです。

コロワイドによる大戸屋の買収劇もある意味、コロナのさなかの出来事でした。6月の株主総会で大戸屋の19%の株式を持つコロワイドの株主提案が否決されたため、力づくの勝負となりました。コロワイドからすれば大戸屋再生の目途と勝算は十分にあったのでしょう。そもそも19%の株式を取得していてIFRSの決算基準の同社にとって最低40%の株式取得で子会社化できる状況にあったので極論すれば目をつぶってでもTOBは成立させることができたのです。

大戸屋を巡る話は長くなるので省きますが、要は急激に利益率が下がり、このままでは大戸屋のバリューが大きく遺棄するところで救ってもらった形です。コロワイドは飲食系のブランドを数多くぶら下げている企業であり、こんな時期だからこそ攻めるという姿勢だったと思います。

日経によると今年1-9月の日本国内のM&Aは件数では9年ぶりに12%減(金額では12%増)と報じられています。海外勢による買収がコロナで減っているということですが、私はこれから半年-1年ぐらいの間に日本国内企業同士のM&Aは相当増えるとみています。

それは以前このブログで述べたようにアメリカではM&Aなどで上場企業数が減っているのに日本では増える一方です。時価総額やGDPを基準に考えれば会社が小粒化しており、経営効率が下がり、株価も低迷、海外企業から注目もされず、日本企業が海外に買収に向かう余力もないという悪循環を招いているとみています。サル山の大将であります。

よって私はM&Aが増えることは望ましいことだと思うし、ニトリが島忠争奪戦に加わったのは正解だと思っています。アメリカでは石油メジャーのコノコがシェール開発大手企業を1兆円で買収すると報じられていますが、この理由もシェール業界が石油価格低迷で再編を余儀なくされているからであります。

私も当地で長く業務をしていると取引先(しかも大半が非上場)がM&Aになるケースはごろごろあります。もはや当たり前で食うか食われるかのギリギリ勝負感は半端ではありません。事業展開でM&Aがなぜ有利かと言えばすでにそこにビジネスがあり、顧客がいて、従業員がいるからなのです。自分でゼロからスタートするのはとてつもなく手間暇がかかるうえ、それが成功するかどうかはふたを開けてみないとわからないのです。とすればM&Aの方が効率だけを考えれば圧倒的に良いわけです。

私は今後の業界再編に於いて異業種による買収が起きてくるとみています。以前にも論じましたが、今や一つの業界が垣根を作る時代ではありません。関連事業が様々に絡み合ってビジネスを作りあげています。日本の業界地図を見渡せばまだ手を付けていないところはいくらでもあります。そして業界内のなぁなぁ感や共存共栄感に対し、業界外からくる国内の黒船が遠慮なく攻め入ってくるでしょう。その意味では異業種の方が買収しやすい環境にあると思います。

そしてタイトルにもあるようにコロナで必要以上に体力を消耗した会社は狙われます。買収する側はその会社の潜在的能力とコロナで落ちた体力が回復可能なものか確実に分析しています。狙われるならそれだけ素質がある会社だと思わなくてはいけないのでしょう。

業界再編、これから数年間のキーワードになる気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月22日の記事より転載させていただきました。