脈々と引き継がれる安倍政権

菅総理大臣として初めての外国訪問として、10月18日からベトナムとインドネシアへ訪問し、21日夜に帰国しました。
どの国のトップも同じで、就任して初めて行く外国、その場所には意味があります。

今回、訪問した国はベトナムとインドネシアですか、そこにどんな意味があるんでしょうか。

その理由、まず何よりもASEAN(東南アジア諸国連合)重視ということです。
ASEAN(東南アジア諸国連合)とは、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスの10か国が加盟する連合ですが、今回訪問した2カ国は、まさにASEANのキーとなる国です。ベトナムはASEANの今年の議長国、そしてインドネシアは人口(2億7000万人)も経済力もASEANでトップの国です。

さらに、この2ヶ国には共通していることがあります。それは、いずれも中国に領土や領海を侵食されていることです。
すなわち、この2国重視という背景には、中国に対する我が国のスタンスがあるということですね。はっきり言ってこれから10年、20年、30年と日本にとって最大の課題は、中国とどう向き合っていくかということです。

そうは言っても中国とは経済的な結びつきが強いことです。ASEANにとって貿易相手国の1位はまさに中国で、貿易額全体の18%を占めています。ちなみに日本は3位に減っています。では、日本はどうかというと、日本の方が中国との貿易量は多く、日本にとってもやはり相手国として1位で、貿易全体の21.3%(331,357億円)を占めています。

その中国が経済力を増せば、軍事力を増強し、他国の領土や領海を我がもののように奪ってきました。今年4月にはベトナムの漁船が中国の公船、よく出てくる中国海警の船に、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で体当たりをされて沈没させられました。インドネシアのナトゥナ諸島と呼ばれる海域についても中国が領有権を主張して、インドネシアは5月に国連に抗議の書簡を出しました。

ベトナム、インドネシア両国とも中国に逆らっても軍事力では勝ち目がありません。また、経済は先ほど言ったように中国に依存しているため、はっきり言って抗議しても中国にやられっぱなしです。これは日本も同じような問題を抱えています。ベトナム、インドネシアのようにまだ力で奪われてはいない尖閣諸島ですが、海上保安庁が24時間365日体制で警備しているので何とかなっています。

今回の訪問で菅総理大臣はこの2ヶ国が接する南シナ海に対して、「南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも反対する。日本は南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも反対をします。全ての当事者が力や威圧によるのではなく、国際法に基づき、紛争の平和的解決に向けて努力することの重要性を改めて強調をいたします」と言っています。すなわち、名指しこそしていませんけれども、中国を指しているわけです。中国にも当然このメッセージは伝わりますし、他の国もその動向を見ることになります。

実は平成24年、民主党から自民党に政権交代した直後の安倍前総理が第2次安倍内閣を発足した時に、最初に訪れた国はベトナムとインドネシアでした。政権発足後26日目の出来事でした。ですから、菅総理は外交安全保障に関しては、私が言ってきた通り、しっかり安倍政権の継承を始めているということです。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。