日本の次世代の目玉産業

2020年10月25日 11:30

写真AC

高度成長期のころ、日本の株式市場で圧倒的取引量を誇ったのが新日鉄(現日本製鉄)など「産業のコメ」と称された鉄鋼業界でした。株価が比較的安かったこともあり、株式市場での出来高はほかの業種を圧倒していました。

住宅ブームや不動産価格の高騰で建設会社の株価が踊っていた時代もあります。上場会社のリストを見るとなぜ上場する建設会社がこんなにあるのかと思っていました。差別化がしにくいこの業種では仕事を皆で分かち合うという共同体的な育まれ方をしてきたと思います。

80年代は電機産業が花盛りでした。株価が往々にして高く4桁の株価が当たり前の中、日本の未来を背負うテクノロジー業種として新聞の株式欄のこのセクションには白い△マークで3桁で株価が上昇する銘柄が目立って多かったのです。若かったあの頃はその新聞の株式欄を見て電機業界が日本のエベレストだと思ったこともあります。

その後、自動車産業にバトンを渡したはずですがなぜか、自動車産業の株価のブームは起きなかったように記憶しています。投資家がこぞって自動車関係に投資をするという風景はなかったはずです。あの頃、メディアは自動車産業のすそ野の広さ、雇用、経済規模などから日本の産業のリーディングセクターと位置付けていましたが、私は大学時代に日本の自動車産業は3社に絞られると学んでいた折、建設業がバブル崩壊で雇用の受け皿が減ったことを理由に無理やりそのようなストーリーに仕立て上げているような感じすら持っていました。

あれから20年以上たったわけですが、日本の株式市場で次のリーディングセクターは何だろうと考えるとパッと答えが出てきません。

ソフトバンクグループが2016年に3.3兆円を投じて買収した半導体設計のアーム社をアメリカのエヌビディアに4.2兆円程度で売却しようとしています。(中国当局が同意するか不明なため、まだこのディールは最終ではありません。)ソフトバンクという会社はテクノロジー系の企業に一定の影響力を持っています。しかし、同社は日本企業には目もくれずアメリカ企業を主体に中国やインドを含めた世界中の企業に投資をし、一定の成果を上げています。

孫正義氏(本人ツイッター:編集部)

もしも孫正義氏が日本に新しい産業を勃興させるために日本のスタートアップや成長企業に資金を投じることがあればもしかすると別の産業地図があったかもしれませんが、孫氏にはその選択肢はなかったように思えます。なぜなのでしょうか?

新興企業には面白い会社がたくさんありますが、ナスダック上場の花形企業に比べてバリュエーションで大きく劣ります。それは資金力、人材、創造力、マーケット規模などあらゆる方面において数段の次元の違いが生じてしまっているからかもしれません。孫氏もそういう企業があれば投資を考えたと思いますが、ユニコーンと称する企業価値が1000億円を超える会社はAIのプリファードネットワークスぐらいでで最近ぎりぎりのところでほかに数社引っかかっているという感じです。

日本は長年、内需の国家として知られています。輸出や投資で稼いでいるというイメージがありますが、実は内需7割という国家であります。島国故に自国内で自給経済という姿勢が無きにしも非ずであります。これが世界に誇る日本の産業の核がなくなった理由の一つかもしれません。内需主導が悪いのではなく、内需に頼りすぎて真綿で首を絞められた状態にあるのに気が付かなかったということです。

韓国は人口が少なく、日本より少子化が進む中、輸出は国家の生命線とも言えます。サムスンは一時、その勢いがなくなりかけていましたがここにきて復活ののろしが上がってきています。強いポテンシャルがあると申し上げてよいでしょう。

日本企業はオールラウンダーでありますが、世界に売り込めるものがあるにもかかわらず、それが上手に機能していないと思います。日本が得意分野で世界のリーダーシップを取らねば30年前に一笑に付された日本のアルゼンチン化が冗談ではなくなる日が来てしまいます。(アルゼンチンは20世紀半ばまでは世界有数の富裕国でありました。)そうならないためにもせっかくのポテンシャルをもっと引き上げたいものでありますね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月25日の記事より転載させていただきました。

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