バロンズ:ブルーウェーブ実現で、米債市場はどうなる?

2020年10月26日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーはコカコーラを取り上げる。同社は世界200カ国以上に進出する消費財関連企業のなかでも最たるグローバル企業のひとつだが、ペプシコやP&Gを下回るパフォーマンスにとどまる。ただし、経済の正常化が見込まれる2021年にはレストランやバー向けなどを含め需要が回復し、業績が急速に改善してもおかしくない。

コカコーラの配当利回りが3.2%と高く、S&P500構成企業全体の2倍近い上、58年間連続で増配してきた。クレディ・スイスのアナリストによれば、2023年の1株利益は2.70ドル(2020年7~9月期は前年同期比34%減の40セント)となる見通。さらにコカコーラは年間増益見通し目標を7~9%増とするが、クレディ・スイスは2021年にも達成できると予想する。その他、気になる詳細は本誌をご参照下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米大統領選でバイデン候補が勝利し、且つ米上下院で民主党が多数派を獲得するブルーウェーブが及ぼす米債市場の影響について焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)

米債市場にとって、ブルーウェーブの意味とは―What a Blue Wave Could Mean for the Bond Market.

ブルーウェーブを迎えた場合、米債市場は下落するのだろうか?民主党の完全勝利は、米株市場では冷静に受け止められているように見える。しかし、米株市場を始めそうなった場合には注意が必要だ。

米債市場は力強い景気刺激策を予想しているようで、米10年債利回りは上昇基調をたどり価格は下落中。問題は、持続的な景気回復を表すポジティブな利回り上昇か、超低金利政策と財政赤字の急拡大次第の経済への警告かどうかである。

今のところ、米10年債利回り上昇ペースはゆるやかだ。しかし今後も続けば、低金利トレンドを一変させるかもしれない。米連邦準備制度理事会(FRB)が抵抗するイールドカーブ・コントロールへの待望論が高まりうる

10月19日週に米10年債利回りは0.85%、米30年債利回りは1.63%で推移し、それぞれ6月以来の水準まで上昇した。その陰で価格は下落し、iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)は遂に2018年以来の200日移動平均線割れを迎えた。BCAリサーチの米債ストラテジストは、追加の財政刺激策を見据え選挙結果が80%の確率で利回りを押し上げると予想、向こう6~12カ月にわたるゆるやかな米債の弱気相場を見込む。ルネッサンス・マクロは、民主党が勝利すれば政府支出の拡大と高成長により米長期債利回りが上昇し、スティープニングが進むと予想する。

BCAリサーチはブルーウェーブ実現の確率を45%とし、2021年の追加景気刺激策はタガが外れたものになると予想。同時に、法人税の引き上げと規制強化に伴う企業業績への”負の衝撃”も見込む。2番目のシナリオとしては、トランプ大統領の再選と共和党による上院多数派維持で30%の確率を掲げ、民主党案より規模の小さい追加景気刺激策と共に、中国を始め欧州連合(EU)などとの貿易戦争が起こると予想する。バイデン候補が勝利し、共和党が上院多数派を維持するシナリオは20%。このシナリオが金融市場には最も好都合と解釈するが、その理由は対中貿易摩擦激化と増税が回避されるためだ。逆にトランプ再選と民主党の上下院多数派獲得が実現する確率は5%で、大規模な追加景気刺激策と共に増税回避、一方で対中貿易戦争激化が見込まれる。

トランプ氏が再選しようがバイデン氏が勝利しようが、米財政赤字が膨らむことは間違いなく、BCAによれば前者の場合は2030年までに4.95兆ドル、後者の場合は5.6兆ドルとなる見通しだ。ただしバイデン勝利の場合の歳出額は11.1兆ドルに対しトランプ再選の5.45兆ドルの約2倍に相当する。また、民主党政権誕生により、増税を受け歳入も5.8兆ドル上積みされる見通しで、共和党政権継続なら7,500億ドルと桁違いだ。

BCAはまた、民主党政権下の経済対策がばら撒きを含めリフレ寄りと判断する。格付け会社ムーディーズによれば、バイデン政権下なら2022年に雇用の最大化が達成される見通しで、トランプ再選の2024年より前倒しされるという。

ワクチンも開発動向も、米債利回り上昇につながっていることだろう。ただし、やはりインフラや育児・介護向け支援策のほか、教育支援を盛り込むバイデン氏の政策綱領の影響が色濃いのではないか。

米債利回り上昇を防ぐ上で役割が期待されるFedはと言えば、2023年末までゼロ金利政策を維持する方針だ。また、毎月1,200億ドル(米国債800億ドル、住宅ローン担保証券400億ドル)の資産買入も継続中。ただ、BCAは利回り上昇がいずれフォワード・ガイダンスに挑戦状を叩きつけると見込む

米2年債と米10年債の利回りスプレッドは70bpと、2018年以来の水準まで上昇中だ。しかし、2018年と今とでは全く状況が異なり、当時はFF金利が引き上げられている最中にあった。逆に現状では、パウエルFRB議長が「検討することすら全く考えていない」と発言する通り、物価が2%をゆるやかに上回って推移するまで利上げは想定されていない。それでも、米10年物ブレークイーブンインフレ率は1.77%へ上昇しつつある。

チャート:米10年物BEI (作成:My Big Apple NY)

チャート:米10年物BEI (作成:My Big Apple NY)

超低金利はグロース株の上昇を支え、同時に住宅の買い手に恩恵を与えてきた、米連邦住宅金融公庫フレディ・マックの30年物固定住宅ローン金利は10月19日週に2.8%と過去最低を更新した。前年比でみると95bpも低下している。住宅ローンでいうならば毎月の返済額が30万ドルの場合、1,389ドルから1,233ドルへ下がることを示す。

チープ・マネーにより住宅市場は2000年代を彷彿とさせるブームに沸いているが、当時と違って投機的な建物が乱立している状態ではなく、むしろ供給が不足する状況だ。米9月中古住宅販売件数は2006年5月以来の高水準を達成した一方、在庫は2.7ヵ月相当と1959年以来で最低を更新した。

しかし、米債利回りの上昇が住宅市場に冷や水を浴びせる懸念が浮上、iシェアーズ米国住宅建設ETF 投資信 (ITB)やS&P SPDR 住宅建設 ETF (XHB)のほか、住宅市場と関連が深い白物家電ワープールなどもつれ安となっている。

米債利回りの低下は株式などの資産価格だけでなく、住宅市場を支え個人の純資産を押し上げてきた。エバーコアISIによれば、米債利回りは経済成長の拡大を6ヵ月先回りして上昇するという。とはいえ、成長回復とインフレ加速は債券投資家にとって必ずしも恩恵を与えるとは言えないはずだ。

――バイデン勝利を見込むコラムが3週連続で続きました。バロンズ誌は、トランプ大統領の敗北を織り込んだ記事に終始しています。リアルクリアポリティクスによれば、バイデン氏のリードは第2回大統領討論会後に約8ポイントと小幅に広げており、コラムの予想通りとなる展開が見込まれます。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の記者は、バイデン陣営の選対本部長の発言を引用し「全米世論調査は水増しされており、(バイデン陣営が)2桁もリードしていない」とツイートしていました。あまり後追い報道が聞かれていませんが、2016年と同じ展開となるか、選挙結果が明らかにしてくれることに間違いありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年10月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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