瀬戸内海はいまや水清くして魚棲まずで大弱り

2020年10月26日 21:00

瀬戸内海「きれい過ぎ」是正 水域設け対策、漁業影響防ぐ 法改正へ・環境省』(10月25日時事ドットコム)という記事に目が点になった人も多いかも思う。水がきれいになったので魚がいなくなって漁業者が困っているというのである。

norainorai/写真AC:編集部

日本人は、水は綺麗なほうがいい、森は水を綺麗にする、そうしたら人間も魚も健康に生きられると思っているのではないか。しかし、そんなのは、非論理的な大馬鹿の戯言だ。

滋賀県で育った私は、子供の頃、学校で琵琶湖は貧栄養湖なので漁業資源が少ないので富栄養化した方がいいと教えられた。

しかし、その後、琵琶湖の水は富栄養化が進み、赤潮など出るようになって、犯人として合成洗剤がやり玉に挙げられた。しかし、滋賀県の担当者は、本当の犯人は植林と農業の構造改革だといっていた。

琵琶湖のまわりは比良山に代表される花崗岩質の岩山が多く、これで濾過されると水は綺麗になる。ところが、戦後、せっせと植林したのである。農業の構造改善で圃場整備が進み、栄養を含んだ水がそれまでは上流からゆっくり棚田を降りてきたのが、化学肥料たっぷりの水が広い面積の田圃から短時間で排出され、それが琵琶湖に流れ込むようになった。

丸岡ジョー/写真AC:編集部

水利用という面からも木を植えた方がいいわけでない。降った雨をもっとも有効に利用するとすれば、コンクリートでもなんでもいいが、吸水性の悪いものでダム湖の法面を覆うのが一番だ。

漁業にとっては、先にも書いたように基本的には水清くして魚棲まずだ。三陸では森の落ち葉でたっぷりとした栄養を含んだ水が山から流れ込んで、その恵で牡蠣が育つといっている。

また、魚は環境浄化に貢献するのかと言えば、そんなはずない。とくに養殖は、自然循環でなく大量の餌を外からもってきて、撒いて、そのごく一部しか魚は食べず、海底に沈殿するのだからいいはずない。

むかし、工業立地を進めたから瀬戸内海は富栄養化が進み漁業が出来なくなるから賠償しろと内閣総理大臣が訴えられたので、私は代理人で裁判を傍聴しにいったことがあるが、瀬戸内海は内海で海水の外との入れ替わりはほとんどなく、だから汚れたら二度と元に戻らないとか学者が来ていっていた。

聞いていて、普通は河川の水が入ってくるのだから、押し出されるはずだとも思ったが、それと同時に、入れ替わりがないなら、養殖などしてほとんど魚の口に入らない餌を海に撒くのはどうしていいのかと素朴な疑問を感じた。

正義と反正義を為す者をレッテル貼って色分けしたり、また、バランス感覚でほどよい調和を求めるべきところを、片方に一方的に針が触れた状態がいいなどという愚かな考えをすると痛い目に遭うという教訓だろう。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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