令和2年改正公益通報者保護法が義務付ける事業者の体制整備等措置義務の内容とは?

10月21日、消費者庁HPに「第1回 公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会(2020年10月19日)」の資料がアップされました。ずっと気にはなっていましたが、ようやく中身を拝見しました。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

令和2年改正公益通報者保護法の第11条4項では、事業者の公益通報対応業務に関する体制整備義務とは、具体的にどこまでの体制を整備すれば果たしたことになるのか、その内容は指針によって定めることになっています。

なお、指針の策定は令和3年が予定されており、法施行日(令和4年6月までの日)までに十分な準備期間を確保するそうです。

その「指針」の中身が、資料「ご議論いただきた事項等」でかなり明確になってきましたね。すでに旬刊商事法務2238号「公益通報者保護法改正の概要」(消費者庁立案担当者が執筆)で解説されている事項もありますが、「なるほど、たしかにこんな問題は起こりうるよなぁ」と感心する事項もありますので、とても参考になります。

なお、同法11条では「公益通報への対応体制の整備義務」と規定されていますが、あくまでも「内部通報(事業者内部への公益通報)」への対応体制の整備等措置義務を指すのであり、たとえば内部告発(監督官庁やマスコミへの情報提供)を知って、当該告発事実を調査する、といった体制の整備については指針には含まれないそうです。

一般には「公益通報」と「内部通報」の区別があまり認識されていないので、このあたりもわかりにくいところですね。

部下が上司に社内の不正(の疑い)を相談することも「公益通報」に該当するケースがありますが、ではその際「上司」は改正法に基づく「公益通報対応業務従事者」に該当するのでしょうか?つまり「上司」はその情報を正当な理由なく漏洩すると刑事罰の対象になるのか?このあたりも「内部通報」と「公益通報」の区別があいまいだと職務行為を委縮させてしまうことになります。

今回の法改正を契機として、事業者の皆様にもぜひ内部通報と公益通報との区別を理解していただきたいところです。


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。