飲食店の淘汰は「これからが本番」

内藤 忍

以前、外苑前にある老舗のイタリアンの前を、30年ぶりくらいに通りかかりました。あまりの懐かしさに、お店に入ってスタッフの方と話していると、何と年末で閉店とのこと。慌てて、グループで出かけました。

リーズナブルで懐かしい味のイタリアンをあれこれ頼んで、1980年代の思い出話で盛り上がり、昭和のバブルの香りを懐かしみました(写真)。

実は、こちらのお店の閉店の理由は、コロナではなく、ビルの建て替えによるものです。かなり老朽化したビルで、オーナーも替わり取り壊しが決まり、テナントが次々と出ていっていました。新しいビルでのこのお店の営業の予定は、今のところ無いそうです。

私の自宅の近くのビルに入っているお蕎麦屋さんも、1987年にビルができた時からの長い歴史のお店ですが、年内閉店と貼り紙がしてありました。こちらの閉店理由は、事情通の人の情報によれば、コロナで2ヶ月間営業停止している間にお店のスタッフの筋肉が落ちてしまったこと。飲食店というのは、高齢者には体に負担のかかる過酷な仕事なのです。

このように歴史のあるお店になればなるほど、建物のようなインフラは老朽化し、オーナーもスタッフも高齢化していきます。

更に、コロナ渦で苦戦している飲食店もたくさんあります。繁華街の人出は戻りつつありますが、以前のような団体の利用は明らかに減っています。

自分で飲食店を経営しているので良く分かりますが、今までは家賃補償などの公的なサポートで何とかしのいできたお店も、需要回復しないと見切りをつければ、区切りの良いところで、早めに閉店という決断していきます。そうしなければ、傷口はどんどん広がってしまうからです。

理由は様々ですが、年内に向けて閉店するお店は、これから更に増えるはずです。飲食店の淘汰は、これからが本番です。

懐かしいお店がこうして次々と消えていくのは、時代の流れとはいえ、何とも寂しいものです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。