航空会社再生への道

岡本 裕明

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全日空は7〜9月の決算発表で通期赤字が5100億円に上ると発表しました。あくまでも見込みですので今後、6カ月で特に国際線がどれだけ回復するかにかかっています。これは同社の努力もありますが、コロナの行方、人々の旅行に対するマインドの回復、そして国の扉が開くのかどうかといういくつものハードルを想定しなくてはならず、なかなか予想が難しいところであります。

一方日本航空は日経が通期で2400〜2700億円程度の赤字になりそうだと報じています。こちらも再上場後は初めての赤字になりそうです。ライバル同士で赤字幅が倍半分の差になったのは全日空が機材を含む投資が積極的で攻めの経営をしてきたことが主因で日本航空は再生の過程において様々な足かせがあったことが結果として有利に展開しました。

日本の航空会社は長年、国際線開拓が一つのキーワードでありました。国内線は新幹線網の拡充で時間や移動の面倒くささという点から厳しい競争となりました。行先にもよりますが、私個人は新幹線がある限りにおいて東京から本州圏は概ね、新幹線に分があります。理由は移動時間よりも移動する手間暇が嫌なのです。例えば東京駅から新幹線に乗れば青森だろうが岡山だろうがあとは乗っているだけでその間、一つの塊の時間となり、有効活用できます。

ところが飛行機になると羽田まで行く、空港内で歩き回る、搭乗まで待つ、到着してから市内まで移動するという時間の分断が生じてしまい、面倒くさいのであります。ならば目的地までの総時間が1時間程度の差までなら新幹線でよいと考えています。(あくまでも個人の許容範囲の問題です。)

似たような議論はずっとあったわけで航空会社の国内線開拓はなかなか厳しい環境にあったといわざるを得ません。そこで国際線の充実が一つのキーワードとなったのはこの数十年全く変わっていません。スカイマークが以前倒産した際、その理由の一つが国際線参入のための投資だったと理解しています。一方で訪日客の飛躍的増加で国際線はドル箱的な発想が生まれたのも事実。この影響をもろにかぶってしまったのが全日空だったということなのでしょう。

どうやったら再生できるか、いろいろ案はあると思います。私なら国内線は一部を除きほぼ全部LCC型のリミテッドサービス型に変えてしまってよいと思います。別に飲み物を全員に配らなくてもいい、欲しい人だけが貰えばよいでしょう。カナダの長距離線でも飲み物は来ますが、寝てればそれっきりです。欲しければCAの呼び出しボタンを押すだけです。あるいはどうしてもサービスしたければ水だけさっと配ってしまえばよいでしょう。たかが1-2時間のフライトでそもそもサービスが必要なのかと思うのです。(新幹線に乗っても無料のサービスはありません。)

チェックインそのものも全部電子化でよいと思います。事前にオンラインで搭乗手続きを済ませQRコードで処理することでチェックインカウンターは荷物を預けるだけにしてしまってよいと思います。新幹線に乗るとき、JRの人とやり取りをすることはありません。それと同じです。

いつも思うのですが、搭乗口にいるスタッフの数も多すぎると思います。北米ではせいぜい2〜3人。路線によってはCAにやらせてもよいのにと思っています。機上の人と地上の人の職制の区切りをなくすこともアリだと思います。(組合がうるさそうですが。)

かつては空の上の旅はとてもロマンチックなものでした。ですが、それから何十年かたった今、私にとっては通勤電車に乗るのとさして変わらないのです。よく「移動大変ですね」と言われますが、それが普通になると時間の使い方が分かっているので何一つ不自由はないわけです。それがやれポイントだ、どっちのCAのサービスがいいといったような二次的でさして重要ではない部分に注目が集まってしまったことにも原因があると思います。

航空会社の経営は世界で様々な航空会社が淘汰されていることも手伝っていずれ経営の状況は今よりは改善されるのでしょうが、それがいつなのか見えないところに恐ろしさがあります。ならば今のうちに20年後の航空機移動のあり方を取り込んだ経営体制に向けた構造改革をしていくしかないのではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月3日の記事より転載させていただきました。