現職都議が大阪都構想を分析:3度目の議論もあってもいいのでは

奥澤 高広

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)
無所属 東京みらい おくざわ高広です。

11月1日、大阪都構想の住民投票の結果、否決の判断が下されました。賛成派からすると、大阪府と大阪市の一体的な取組を制度化するという壮大なチャレンジが失敗したということであり、反対派からすると、大阪市を守ったということになります。

1. 思い返すと…

思い返すと10年前に、大阪維新の会ができたとき、私はまだ政治に興味を持ち始めたばかりで、橋下徹さんというタレント議員が暴れてるなぁくらいにしか思っていませんでした。

しかし、その後の大阪の改革はめざましく、

①財政難や利権政治などの問題点を暴き出し、
②それを改めるためには二重行政の解消がヘッドピン(主要課題、共通課題)との考えのもと、
③府と市の長をおさえ、(制度ではなく人の繋がりという不安定な構造ではあるが)二重行政の解消により、
④大阪の改革を推進してきた→バーチャル都構想と呼ぶそうです
⑤そして、それを安定した形で進めていくために(誰が長になっても推進できるように)制度化するために、
⑥住民の賛否を問う住民投票を行った

という流れがあったわけで、
問題発見→ヘッドピンの設定→現制度の中での実証→制度化を目指す
という、全ての政治家がお手本とすべき問題解決の手法がとられていたと思います。

事実、今回の住民投票にあわせて行われた各種調査では、大阪維新の会の支持率は70%とされており、これまでの改革が評価されていることは明らかです。

2. なぜ否決されたのか…

では、なぜ今回の住民投票が否決されたのか。私は、不安と不信からくる安定志向が出たのではないかと見ています。
(本当は、変化しないことは安定とは別物なのですが、それは今回は議論しません)

これまでの良い変化は評価しつつも、どうなるか分からない未来を選択することは誰しもが不安をもちます。また、日本では住民自らがその選択権をもち、直接民意を反映させる機会がほとんどありませんから、変化に慣れていないというのも事実だと思います。

加えて、新型コロナの影響もあり、今を良しとは思わないけれど、今変化することは避けたいという心理もあったかと思います。これは7月に行われた東京都知事選において、ひしひしと感じていたことです。

さらにいうと、(賛成反対の意向が報道を機に大きく変化していることから)毎日新聞の記事は大きな影響があったと思います。賛成派の財政予測は誤りだ、200億円を越える負担が生じるという内容ですが、この真偽のほどは、さして関係なく、有権者を迷わせるには充分でした。迷い、不信が生じれば、変化を怖れることに繋がります。普段であれば影響は大きくなかったかもしれませんが、新型コロナで疑心暗鬼になる人が増え、自らの手に未来が委ねられるという重圧の中では、反対へ誘うには充分なものでした。

3. 大阪都構想住民投票から学ぶべきは…

そもそも大阪府と大阪市が抱える問題は、形を変えて全国に生じている問題です。東京23区では、私たちは‘ととくと問題’と呼んでますが、新しい社会課題について、都と区とどちらがやるべきかと押し付けあっているものもあれば、都と区と施策の方向性が異なるものもあり、決して一枚岩ではありません。

また全国のほぼ全てといっていいほどの自治体が国からの交付金に頼っている状況で、自律的な財政運営をできていません。この解決策を見出している自治体はほぼ無い状況で、国に対して、もっとお金をよこせと言い、市民に対して、国がお金を出さないからできないと言い訳しているのが実情ではないでしょうか。

その意味では、大阪都構想という解決モデルを示し、賛否を問うところまで至った大阪維新の会の功績は多大で、日本の政治に一石を投じたどころではありません。私は東京都議会議員ですが、その波紋を受け止めて、では、東京都のヘッドピンを探し出さなければならないと考えています。

東京都では、小池知事就任以降、情報公開(見える化)、議会改革、そして今はデジタル化というヘッドピンらしきものが提示されてきましたが、まだ、真のヘッドピンは見えてきません。上述の大阪都構想の流れでいうところの、①問題発見のフェーズで足踏みしている状況といった方が正しいかもしれません。

情報公開や議会改革は問題をあぶり出すための手段にすぎません。デジタル化はすでに見えている課題解決の一手法です(沢山の課題が一気に解決できる可能性が高いという意味ではヘッドピンといえる?)。東京の抱える真の闇はどこにあるのか、引き続き考え続けたいと思います。

4. もう大阪都構想は議論されないのか…

大阪都構想は、大阪という都市の問題を解決する一手段として提示された改革モデルです。記者会見では、賛成派の松井市長、吉村知事は、自らの任期中での大阪都構想の再度の住民投票はないと話していました。また、反対派の自民党は、3度目があってはならないと話していました。

私は、これは間違っていると思います。繰り返しますが、大阪都構想は、大阪をより良いものにする手段として提示された改革モデルです。大阪をより良いものにしようという議論を続けていく中で、選択肢に残すべきものです。(もちろん、他の手段も考えるべきものですが。)

おそらくですが、全国の自治体で、今の制度がベストだと思っている人は少ないのではないでしょうか。ベストとは思わないけど、変えられないから仕方ない、現状の中でベターを探そうとしている方も多いのではないでしょうか。でも、今回の住民投票は、(結果は否決でしたが)その制度自体を変えることができる可能性を示してくれました。

5. まとめに変えて

私たち地方議員はじめ、現状におかしいと思っている人たちは、これに続かなければならないと考えています。解決手段は、自治体ごとに異なるはずです。場合によっては、今の制度がベストという結論になるかもしれません。しかし、今のままでいいのかと議論を開始すべきときを迎えています。第二、第三の大阪都構想が巻き起こることを期待し、私自身も東京にとって、町田にとってのヘッドピンを探し出し、来年の都議選で問題提起をしたいと思います。

なお、大阪都構想を礼賛し、東京でも同じ流れを求めるものではありません。東京にとっての大阪都構想、東京大改革モデルを見つけ、その実現を目指すプロジェクト「東京大改革連合」をつくることができたらと思いを馳せつつ、まずはヘッドピンの特定に全力を尽くします。

最後に、少なくとも今回の大阪都構想をめぐる10年で、私も含め、多くの、特に若い世代の政治意識を変えたことは間違いありません。まずは一区切りとなりますが、賛成派の皆さんも反対派の皆さんも、投票に臨まれた皆さんも、お疲れ様でした。

今の民意をふまえて、大阪が、日本が成長することを心から願うとともに、感謝と敬意を表します。ありがとうございました。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2020年11月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログをご覧ください。