バイデンの本当の顔を詳細な経歴から探る

2020年11月07日 06:01

Skidmore/flickr

来年の1月に米国大統領になりそうな、ジョー・バイデンだが、日本人は、彼についてほとんど知らない。上院議員を40年近く、副大統領を8年もやっているのに不思議なことだ。

バイデンがどういう人かは、『アメリカ大統領史100の真実と嘘 』(扶桑社新書)でも項目をとくったが、私がその人のプロフィールを書くときは、履歴書に出てくるような経歴をもっとも基本に位置づけている。

細かい経歴を見たら、人生のどの段階で何が起きておいたか、かなりよく分かる。逆にあまり信頼していないのがオーラル・ヒストリーだ。しばしば、都合良く脚色されている。回顧録なども同様で、日本にはそこに書かれていることを厳しく検証することがされないから、まったく、信用できない。だから、本人の書いたもの、話したもの、人が書いた聞き語りなどまるで信用できない。

バイデンの経歴から読み取れること

バイデン家の先祖は、アイルランド系だと日本語版Wikipediaに書いてあるが、英語版には母親の実家の先祖がアイルランド系だと書いている。かなり以前のAFPの記事にはマイク・オバマの母親の先祖の1人とバイデンの母系の先祖はいずれもアイルランドの靴職人だという記事をみたこともあるが、どうも勘違いしたらしい。

バイデン家の先祖は18世紀の終わりにリバプールからアメリカに移住したのだが、バイデンというのはサセックス地方特有の名前だそうだ。

ただ、アメリカではアイルランド系は非常に多いので、アイルランドとの関係は大事にしている。いずれにせよ、彼はジョン・ケネディについで2人目のカトリック大統領だ。米国では、カトリックはローマ教皇の意向に逆らえないとみられて、プロテスタント関係者の抵抗が強い。

バイデン氏の母校、シラキュース大学(DebraMillet/iStock)

ペンシルバニア州で生まれ、そこそこ豊かだったが、父親の仕事が不調でデラウェア州で育った。デラウェア大学とシラキューズ大学のロースクールで学んだが、偏差値としては高くない。

以前、「トランプの母校でもある小室氏のフォーダム大学」という記事を書いたが、そこでは、小室圭氏が通っているフォーダム大学のロースクールは名門と女性週刊誌やワイドショーでは紹介されることが多いが、200ほどあるロースクールのなかで27位で名門とは言いがたいと書いた。

そして、「バイデン元副大統領はあまり勉強熱心でなかったので、シラキューズ大学のロースクールから弁護士になっているが、順位は111位である」と指摘したように、勉強はあまりしなかった。

その代わりに、フットボール・チームの強化に手腕を発揮し、フルートを嗜み、女性との交際にも熱心だった。喘息を理由に徴兵猶予となりベトナム派兵は免れた。

上院議員初当選直後、妻と娘を失う悲劇

その後、弁護士となったが、翌年に郡会議員(日本でいえば中くらいの町の市会議員)、30歳で連邦上院議員となり7期務めた(1973年1月3日 – 2009年1月15日)。史上4位の長さらしい。上院議員は各州2人だが、小さい州なので競争者がいなかっただけだ。

しかし、上院議員当選直後に妻とナオミという娘を交通事故で失った。2人の男子が残されたので、ワシントンDC住まいの議員が多い中で、選挙区からワシントンDCまで電車通勤した。なお2人の男子はのちに長男がデラウェア州司法長官に就任するも2015年に脳腫瘍で死去。次男はウクライナや中国との取引でトランプ陣営に攻撃されている話題の人物だ。

外交では上院で超党派の穏健派が団結して、海外との交渉での約束を守れるように妥協点を獲得するために活躍した。国際主義を代表する政治家である。カーター政権時代のSALTⅡ(第二次戦略兵器制限交渉)では、ソ連のグロムイコ外相との会談で名を上げた。

カーター大統領(右)と談笑する若手議員時代のバイデン氏(出典:米議会パブリックドメイン)

司法分野ではリベラルな政策の実現に過激でなかったものの、実質的に貢献した。2008年大統領選挙にも意欲を見せたが断念、オバマ大統領のもとで副大統領として、議会対策を担当した。穏健リベラルとして常識的でそれは安心だが、「核保有国になり得ないとする日本国憲法を、私たちが書いたことをトランプ氏は知らないのか」といった発言に象徴されるように軽い。

日本には菅直人内閣の2011年と安倍内閣になって2013年に訪日しているが、そのときに会った人の印象を聞いてもシャープだという印象はなかったようだ。

現夫人は副大統領候補をお気に召さず?

酒は吞まない。健康面では40代で脳動脈瘤で一命を取り留めたこといがある。女性へのなれなれしい態度が問題視される。

ジル夫人(Skidmore/flickr)

現在の夫人はジルはイタリア系で、学校教師を夫が副大統領になったのちも続けた。政治的な発言は少ないが、夫が大統領をめざすことを強く促したし(2016年の大統領選挙は長男の死のショックで立候補しなかったが夫人は不満だったと言われる)。人事では夫に影響力があるといわれる。

副大統領候補のカマラ・ハリスは、魅力的で即戦力ということで高齢のバイデンの高齢も考慮して選ばれたのだが、ジル夫人はカマラは高慢なうえに、昨年の候補者討論会でバイデンを論破したカマラに好意的でなかったともいわれる。

高齢に加えて、次男のハンターの疑惑が危惧される中で、ジル夫人の心配する、ハリス副大統領の野心がどう発揮されるかも注目だ。

まさかと思うが、バイデンの次男であるハンターをめぐる共和党の追及に、民主党のリベラル派はこれまでは不熱心だったが、ハリスを大統領にするために思惑が合うことだってあり得ない話でない。

アメリカ大統領史100の真実と嘘 (扶桑社新書)
八幡 和郎
扶桑社
2020-09-02
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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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