バイデン大統領のアメリカ

トランプ大統領が2日連続でゴルフ場に「引きこもり」をしました。大統領は今、必死で4年間の大統領生活を回顧し、年明けからの自分の姿を想像し、自分の住処と残りの人生のプランを模索しているのでしょう。

敗北宣言をしていない点からまだポジションに固執しているのではないか、とも指摘されていますが、私はこの2日間の逃避を見る限り、今更、対立軸を高揚させるような行動に出るとは思っていません。自分の美しい引け際の演出、そして引いた後に雪崩のように襲ってくる様々な訴訟や金銭問題、そして自分の周りには最後は家族だけしかないというシナリオにメンタルを正常に維持させることすら難しいかもしれません。

そんな折、ロシアのプーチン大統領がパーキンソン病ではないかと報じているのは英国のタブロイド紙の「サン」ですが、根も葉もないわけでもないのかもしれません。一部では早期大統領辞任というシナリオまで出てきており、2つの大国で激変期を迎えるのかもしれません。

この激変の後押しをした影の仕掛け人はやはりコロナだったのかもしれません。今のままでは「まずい」という意識が強まりを受けた民衆の声は否定できないでしょう。その点からすれば日本も安倍前首相が長期政権から離脱したのはコロナ禍の最中であったことを鑑みれば2020年の爪痕は政治の世界にまで深く影響が及んだといえるでしょう。

(11月6日バイデン氏Twitterから:編集部)

(11月6日バイデン氏Twitterから:編集部)

バイデン氏が大統領選の勝利宣言をしています。これをどう受け止めるかは皆様、思うところがあるかとは思いますが、この流れをもはや逆転させることはできないとみています。バイデン大統領誕生で間違いないと思います。

バイデン氏のアメリカはどうなるか、については土曜日の「今週のつぶやき」で「決められない、踏み込めない、進められないアメリカ」になると予想しています。

議会については下院が民主党が押さえた状態が続きます。一方、上院は今の情勢では年明けにジョージア州の再選挙の結果を待たないとわからないかもしれません。ただ、仮にどちらになったとしても民主党という性格、そしてバイデン氏という政治の老練家が民主党の中でも穏健派であるゆえに非常に難しいかじ取りが求められるとみています。今後、ウォーレン氏やサンダース氏のような党内進歩派との調整はたやすくないでしょう。また、側近をどう固めるのか、そして大きな政府を目指す中で財務長官と国務長官が誰になるのかは最大の注目となります。

間もなく78歳になるバイデン氏は自らが先陣を切って動けるとも思えず、ましてやコロナ禍で目立った動きが少なくなるかもしれません。また、下院議長の重鎮、ナンシーペロシ氏も今回下院において民主党の議席を減らしたことを踏まえ、その去就に注目が集まります。彼女も80歳と高齢であることから交代はあり得ると思います。バイデン氏が比較的若い実務ができ、機動力がある人を周りに固め、自らはあまり動かない司令塔になる可能性を見ている中で下院議長もその流れに押されるかもしれません。

財務については大盤振る舞いが見込まれます。財政赤字との兼ね合い、予算のシーリング問題で共和党と激突するかもしれません。仮に上院で共和党が過半数を取れば国政がしばしば立ち往生することも視野に入れるべきでしょう。

私の最大の懸念は外交です。トランプ大統領は外交については行動力を示したと思っています。専門家がどう評価するか知りませんが、私は十分な合格点を差し上げます。民主党はオバマ政権の際、外交下手でどうにもならなかった汚点があります。同じ落第点でもかなり下の30点とかそんな感じでした。ではバイデン氏が外交上手になるかと言えば「仲良くする」という点は聞こえが良いのですが、それがアメリカの国益には全然つながらず、数年後に「なんでこんなになったのだ」という怨嗟の声がでると予想します。

特に中国関係はダメ、北朝鮮を含む朝鮮半島もダメ、ロシアは全くダメ、中東も停滞、イランとは表面的な仲直りで一部からブーイングが出るでしょう。欧州との関係は改善し、パリ協定復帰や国連の枠組み重視といったところはオバマ政権のG20の発想と変わらず、それが地球儀ベースでは確実に修羅場となることを頭に入れておく必要があります。

総括すると初めの1-2年はバイデン政権、いいじゃないか、かもしれませんが、3-4年目がどうなるか、そしてアメリカのビジョンが何処に向かうのか、ここが最大のチャレンジではないかと考えております。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月9日の記事より転載させていただきました。