医療的ケア児支援法案まとまる、各自治体も制度設計を --- 徳永 由美子

2020年11月11日 06:00

医療的ケア児の支援団体の立ち上げに関わって3年8カ月になります。私にとって、ケア児との初めての出会いの場になった最初の交流会を開催したのが2017年6月のことでした。この年の厚労省の報告では全国に1万7千人と言われていた医療的ケア児は、3年後の現在、2万人と推計されています。

医学の進歩により助かる赤ちゃんの命は増えたものの、社会的な受け入れ体制は全く追い付いておらず、むしろ不作為の状況でした。NICUを退院したあとはどこに相談して良いかもわからず、気管切開の子は2時間おきの痰の吸引で親は十分な睡眠時間も取れず、仕事復帰したくても受け入れてくれる保育園はなく、「子どもが退院してくるのが絶望だった」と切羽詰まったお母さん達の声を初めて聞くことになったのです。

ケアを行う母親が1人になれる時間がなく親の負担が大きいこと、医療的ケアを理由に子どもの集団生活から排除しないで欲しいという思い、学校に通学できたとしても付き添いを求められ、働きたくても働けないため看護師を保育所や学校へ派遣して欲しいこと、医療、福祉、教育行政の連携がとれていないため情報共有をして欲しいといった事は、全国の医ケア児のご家庭に共通する心の叫びです。

一昨年、私が議員を務める佐倉市内の公立小学校で、医療的ケアを必要とする児童が受け入れられる事になりました。ただし「保護者の付き添い」が条件です。そのため医療的ケア児の支援に関しては、保健、医療、福祉、教育等の連携の推進が求められているところであり、学校において医療的ケア児が安全に、かつ安心して学ぶことができるよう、医療的ケアを実施する看護師等の配置または活用を計画的に進めるとともに、看護師等を中心に教員等が連携協力して医療的ケアに対応するなどの体制整備に努めていく必要を訴えましたが、教育委員会は「付き添いについては保護者の理解を得ている」というのが決まり文句です。保護者に他の選択肢は与えらていないだけなのですが。

ようやく、これらの対処療法に対して光明が差してきました。

10月30日に第31回永田町こども未来会議で医療的ケア児支援法案(仮)が示され、立憲民主党の新井聡元国家戦略相や自民党の野田聖子幹事長代行を中心に、議員立法により今国会での成立を目指します。いよいよ医療的ケア児に対する支援が立法化されることになりました。

(参考)“医療的ケア児”の支援法案 骨子まとまる 超党派の議員連盟(NHK)

今年の3月には、川崎市の医療的ケアを必要とする児童が地域の公立小学校に通学することを拒否され裁判を起こしましたが、原告となった両親の請求は棄却されました。目黒区の女子児童も特別支援学校でも保護者の付き添いを求められ、母親は経済的理由で仕事をやめられないため自宅での訪問学習という選択肢しかないというのが現状です。

かたや大阪の豊中市では保護者の付き添い無しで医療的ケア児を受け入れ、通常学級で授業を受けています。このような義務教育においての自治体間格差があってはなりません。子どもの「今」は本当に一瞬です。各自治体における早急な制度設計が求められます。

法律が制定されても基礎自治体が実施できる制度設計や予算の裏付け、人材の確保などの整備がどこまで実現するのか。看護師配置における人材確保と人材育成。学校受入れの際の責任の所在。学校受け入れに伴い、保護者の就労を継続させるため医療的ケア児等の重度心身障害児を受け入れる学童保育所の整備。各都道府県に相談支援センターが設置されたとしても、需要に対して運営がひっ迫するのではないか、基礎自治体や医療機関とはどのように連携をしていくのか、課題は山積みですが無策ではなくなる事は大きな一歩です。

私は医療的ケア児のためのケアマネージャーが必要であり、NICU退院前にケアマネを中心に医療、福祉、教育保育等、関係者による支援プランを作成し、保護者が安心できる材料を整えることが必要ではないかと思っています。

まだ世間的にも医療的ケア児に対する認知度は高くありませんが、その人数は確実に増加傾向にあることは間違いありません。たとえ今、自分のまわりにいようがいまいが、未来に生まれて来る子ども達のために、安心して生まれてくることができるように、医療的ケア児の誕生を受け入れる社会の構築に取り組んでいかなければなりません。


徳永由美子 佐倉市議会議員(自民党)
子ども・子育ての活動などを経て現在2期目のNPO系市議会議員。医療的ケア児や発達障害・学習障害などにも積極的に取り組む。

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