次期UNIDO事務局長は“中独”合作か

2020年11月15日 11:30

ドイツからの情報によると、同国のゲルト・ミュラー経済協力・開発相(65)は2021年11月の国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長選に立候補する。中国人の李勇・現事務局長は来年、2期目の任期が終了する。国連機関では3選出馬は基本的に認められていないから、その後継者の事務局長の選出が行われる予定だ。ミュラー開発相はドイツ与党「キリスト教社会同盟」(CSU)の所属でメルケル政権の全面的支援を受けているだけに、次期事務局長の最有力候補として急浮上してきたと受け取られている。

▲UNIDO本部があるウィ―ンの国連機関の正面入口(2013年4月撮影)

▲UNIDO本部があるウィ―ンの国連機関の正面入口(2013年4月撮影)

独経済協力・開発省(BMZ)の広報部は13日、ベルリンで「ミュラー開発相が来年11月のUNIDO次期事務局長選に立候補する。UNIDOはグローバルな開発、開発途上国の雇用開発にとってわが国の重要なパートナーだ」と述べ、ミュラー開発相の事務局長選出馬を追認している。

ミュラー開発相は既に、来年の連邦議会の議席を求めず、2013年以来7年間務めてきた経済協力・開発相を辞任する旨を明らかにしている。ミュラー氏は開発相の前は8年間余り連邦農業省次官だった。1994年以来、連邦議会議員。

▲UNIDO次期事務局長選に出馬を表明したゲルト・ミュラー経済協力・開発相(独連邦議会公式サイトから)

▲UNIDO次期事務局長選に出馬を表明したゲルト・ミュラー経済協力・開発相(独連邦議会公式サイトから)

同相は開発途上国への支援活動に専念し、ドイツの政治家の中では国民の信頼も厚い。開発途上国の経済発展に貢献したいという熱意を持っている政治家として知られている。開発相を辞任した後、次は国連の舞台で開発途上国の工業開発を支援したいというわけだ。

独日刊紙アウグスブルガー・アルゲマイネ(電子版)13日は「ミュラー氏は党を超えて尊敬されてきた政治家だ。UNIDO事務局長選で選出されるチャンスは高い」と報じている。現時点では他の候補者は出ていない。

ドイツは2016年、国内総生産の0・7%を開発援助に充てるという国連の目標を初めてクリア。BMZの資料によると、「ドイツの開発政策は、グローバルな構造政策や平和政策の礎石として、パートナー諸国における生活条件の改善に貢献し、飢えと貧困を克服して民主主義と法治主義を強化することを目標とする」と明記されている。

ミュラー開発相はメディアのインタビューの中で、「自分の経験が評価され、ドイツ代表としてUNIDO事務局長選に立候補できることは光栄だ」と述べ、メルケル政権の全面的な支援に感謝を表明している。

UNIDOは1986年、開発途上国の工業発展と経済設備の支援などを推進する国連専門機関として発足したが、これまで欧米諸国の主要国が次々と脱退していった。カナダが1993年、その3年後には最大の分担金を払う米国が脱退、未払いの分担金もこれまで払っていない。

脱退した加盟国は、「UNIDO内部は腐敗し、非能率な機関だ」と批判してきた。UNIDOから脱退した国は、カナダ、米国、英国、フランス、ポルトガル、ニュージーランド、オランダ、オーストラリアなどだ。脱退を検討している加盟国も少なくない。

欧米諸国の脱退ドミノ現象の中で、日本とドイツ両国はUNIDOに留まり続けてきた。一時期、ドイツの脱退の噂が流れた時、「ドイツが出ていけば、UNIDOは終わりだ」という悲鳴にも近い声が聞かれたことがある。

G7諸国は欧米諸国のUNIDO脱退の主因として、その国の財政事情の悪化を挙げているが、これは間違っている。欧米主要国にとってUNIDO への分担金は大きな財政負担ではない。問題は少額であったとしても分担金を支払う意義、価値があるか否かだ。残念ながら、UNIDOは“価値なき国連機関”と受け取られてきた。米国が脱退してからは、世界のメディアもUNIDOの動向は報道しなくなった。UNIDOで記事となるのは、その腐敗と不正問題だけだ、といわれるほどだ。そのような国連専門機関のトップに誰が就任したとしても荷が重い仕事だろう。

ちなみに、中国人初のUNIDO事務局長のポストの2期目を務めている李勇事務局長(元中国財務次官)は任期をあと1年余りを残し、ここにきて「中国の、中国による、中国のための活動」に没頭してきた。中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)を支援し、同社の広報官のような活動に邁進中だ。2018年4月、中国メディアとのインタビューでは、「UNIDOは中国共産党と連携し、習近平国家主席が提唱した『一帯一路』プロジェクトを推進させてきた」と自負しているほだ。

なお、中国共産党政権とメルケル独首相は欧米諸国が羨むほどの良好関係だ。来年政界から引退することを表明してきたメルケル首相は政権15年の間で12回、訪中している。メルケル首相ほど頻繁に中国を訪問してきた欧米の政治家はいない。それだけ、中国とドイツ両国間には強い繋がりがある。中国人の李勇事務局長の後釜に、ドイツ人の経済協力・開発相が出馬するのは決して偶然ではないだろう。

ミュラー開発相はメルケル政権ばかりか、中国からも全面支援を受けているとすれば、同氏の次期事務局長選出は決着済みかもしれない。次期事務局長は中独両国の合作で、というわけだ。いずれにしても、ミュラー氏が選出されればUNIDO初の欧州出身事務局長となる。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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