顧客本位と規制業の本質

2020年11月17日 06:00

資本主義の根底には、情念としての欲望の実現、非理性的で感性的な衝動、非合理で無駄な消費があるから、そうした人間的な欲望の充足、即ち顧客満足の追求なしには、経済は成立しない。

それに対して、顧客本位とは、顧客の理性に訴えることで、顧客が自己の真の利益を合理的に認識できるようにすることである。つまり、顧客を賢くすることだから、逆に顧客の感性や心理的弱さに訴えることで理性的判断を停止させて不合理な行動を誘う顧客満足とは、正反対のものである。

経済は、感性的な顧客満足と理性的な顧客本位との間の微妙な均衡のうえにあるのだが、金融、医療、教育などの規制業においては、規制の主旨が顧客満足に反した顧客本位の徹底を求めている。

例えば、大学は、簡単に卒業させることにより、病院は、簡単に薬を出すことにより、銀行は、簡単にお金を貸すことにより、顧客満足を高めることができるが、真に顧客の利益を考えて行動するならば、大学は、学力がつくように卒業を難しくし、病院は、病院にこないで済むように健康管理を求め、銀行は、借金が増えないように家計の合理化を助言しなくてはならないのである。

規制の本質とは、真の顧客本位が求められる分野において、顧客満足に反していても業がなりたつように業者を保護し、また、真の顧客本位が貫徹するように業者の行為に制限を設けることである。そのような規制が働いている分野の代表が金融であり、教育であり、医療なのである。

しかし、規制業においてすら、顧客満足の追求に流れていくのは避け難い。例えば、金融庁がアパートローンやカードローンの拡大について警鐘を鳴らすのは、そこに顧客本位からの逸脱の可能性を認めるからである。最終的には、真の顧客の需要を超えたローンの供給は、債務者の生活を破壊することもあり得るし、その場合には、不良債権の発生によって金融機関自身の損失にもなるのだから、金融庁として看過できるはずもないのである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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