人々が実感できる情報量を超えたら?

2020年11月19日 14:00

覚えていらっしゃる方もいるかと思いますが、2020年のオリンピックには、8Kテレビでより鮮明な画像を提供する、という話題がずいぶん前にあったと思います。ところが実態としては8Kどころか4Kも十分に普及しているとは思えません。それ以上に最近は話題にすらなりません。

では音楽の世界。CDの6.5倍の情報量を詰め込んだハイレゾ(ハイレゾリューション オーディオ)はその普及を目指して2014-5年頃に日経も含めずいぶん「押し込み」があったのですが、実際には普及はまだまだという感じがします。4K8Kのテレビにしろハイレゾの音源にしろより情報量が多く、高品位な技術が普及しないのはなぜでしょうか?

一言でいえば一般人全員が常に品質を求め続けるわけではないから、ではないでしょうか?普段見るユーチューブなどは720ピクセルが主流でテレビで映画などを見るときは1080ピクセルではないでしょうか?それに対して「ひどい画像だ」と思う人はほとんどいないはずです。

つまり、情報量に対して一般的には大半の人が満足しうる水準に達しているということです。では4Kならどれぐらいかと言えば2160ピクセルもあり、そこまで必要とする画質が必要か、ということです。ニュース番組、お笑い番組、テレビドラマ、エンタメ系、マンガ…どれをとってもどうしても必要ではなく、せいぜい、映画、科学番組、一部のスポーツ番組、音楽系など限られるのではないでしょうか?

(MARHARYTA MARKO/iStock:編集部)

(MARHARYTA MARKO/iStock:編集部)

では今話題の5G、そして日本勢が必死に開発を進める6Gが我々の世界で必要なのでしょうか?

60歳代以上の方のガラケーの普及率は2020年で23%。2015年は70%もあったのに年々確実に減っています。なぜか、と言えばスマホ世代の50代が60歳台入りしつつあること、ガラケーそのものが店先から消えつつあることでシニアはしょうがなくてよくわからないスマホに切り替えているというのが実情でしょう。わかりやすい例でいればタイプライターやワープロがいつの間にか消えてしまったのと同じです。

しかし、4Gのスマホでその情報処理能力で困る人はどれぐらいるのでしょうか?かなり少ないと思うのです。つまりどうしても5G、いつかは6Gと思う人はマーケット上絞られてきます。個人的には5Gの普及にはかなり時間を要し、6Gに至ってはごく一部のそれを必要とするところでの普及に留まるのではないかとみています。普及しなければ6Gのコストは目の玉が飛び出るような金額になるかもしれません。

今日のタイトル、「人々が実感できる情報量を超えたら?」というのは別にテクノロジーの話に限ったわけではありません。我々が日常、インターネットやSNSから得る様々な情報をどう活用しているのか、その吸収度が落ちてきているのではないか、という疑問があるのです。

「現代人は忙しい、なぜなら情報量が格段に増えたから」と言われます。しかし、インプットされた情報をどれだけ自身の中で吸収、蓄積し、将来有益にアウトプットしていますか、と問われたらどうでしょうか?「えー、ほとんどないかも」という方もいらっしゃるでしょう。そうなのです。我々は本来、情報を取り込み、自分流に思考や工夫を行うことを前提としていたのにいつの間にか外部記憶装置になっています。

例えば料理のレシピ。毎日スマホでレシピを見ながら作っていませんか?本来であれば基準のレシピに対してどのようなフレーバーを加えるかは自分で考え、見つけるべきなのですが、それを外部の情報に頼るようになっているのです。

私がなぜ、ブログを書くのか、と言えばインプットされた様々な情報を咀嚼し、自分の言葉でアウトプットするためなのです。小中学生の時、読書感想文を書いたかと思います。あれは一度読んだだけではなかなか書けないもので「あの部分をもう一度読み返し」ということをしたのではないでしょうか?私は価値ある本は数年たってなるべく再読するようにしています。仮に小説であってもそうです。三島由紀夫のように難解なものだと読解力や読後感の感性が全然違ってきます。

つまり情報量はそれを利用してなんぼの世界なのです。ところが残念ながら多くのケースでは利用せずに読み流してしまっていることが多いのです。それは人々にとって情報インプットのキャパシティを超えつつあり、情報の満腹感となっているのではないかと思うのです。

最後に、情報をベースとしたテクノロジーは「人間が必要とする基準」から「技術が技術を要する基準」に変わってきています。それは人々が欲するわけではなく、技術がより高いものを求めるということです。例えば東京証券取引所の売買システム、アローヘッドは注文してから場に反映するまでにそれまでの2-3秒から0.002秒に短縮されています。このスピードは個人投資家がクリックをしてどうのこうの、というレベルではないことはお気づきでしょう。プログラム自動売買システムがこのスピードを要求しているのです。人間の能力を凌駕しており、プログラムがそれを求めているというわかりやすい例です。

我々の世界では既に人間がコントールする情報量は十分すぎるほどあります。今必要なのは「情報活用」という分野です。これをすることで最新の技術を自分にメリットあるものに変えることができると考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月19日の記事より転載させていただきました。

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