感染者を増やすだけの“世田谷モデル”

稗島 進

世田谷区の保坂区長(区公式YouTubeより)

ここ数日で東京都の感染者が急増している。世田谷区については、3連休前の11月18〜20日では、それぞれ、57人、34人、45人の陽性者を数える。今後、爆発的に増加しないという保証はないので、万全の体制を敷くことは当然である。

さて、鳴り物入りでスタートした“世田谷モデル”は、11月15日現在で、971人に実施し、陽性者は14人(区の発表)。区長の“私的”なツイッターの発表では、その数はもっと多い(区の発表と区長のそれが、なぜ違っているのかは、謎である)。

当然、全員、無症状者である。職員以外に、利用する高齢者2人に陽性反応が出た特養老人ホームもあり、この2人の方は医療施設へ収容された。

私が危惧するのは、今後、この検査を進めて、介護施設を利用する高齢者の感染が増えた場合、病院などの収容先が確保できるのか、ということである。保健所や医師会を中心とする従来型検査(有症状者)で陽性者が増える一方、“世田谷モデル”で無症状者をどんどん掘り起こしていく場合、収容する際の判断はどうなっているのか。限りある収容施設に、有症状で苦しむ若者と無症状の高齢者のどちらを優先的に受け入れてもらうのか、というような問題が必ず出てくる。

また、保坂区長が宣伝中のプール方式についても、たとえ国の認可が下りたとしても、現在、1検体当たり16,101円の税金を使っているので、コストカットにはつながり、検査の処理能力は向上するのだろうが、入口にあたる採取の方法(現在は前鼻腔拭いと唾液)の効率、検体数を飛躍的に増やさなければ、その目的であるはずの感染者の早期発見、感染拡大防止という点では、あまり意味がない。

つまり、生産工場の処理能力ばかり上げても、原料が少なければ、生産は増えないわけだ。この辺りも見通しが甘いと言わざるを得ない。もし大量検査を指向するのであれば、すでに民間で販売されている簡易キットなどの導入も、一考するべき時に来ているのではないか。

そもそも、区長は“世田谷モデル”の実施にあたって、保健所に負担はかけないと言ってきたが、陽性者が出れば必ず保健所は関与しなければならない。

また、民間委託にしたものの、この会社が一連の検査ノウハウを身に着けるまで、区側が手取り足取り指導しなければならず、結局、独り立ちするまで時間がかかっているのである。それに、区内の学生寮で感染者が多数出た際には、なぜか繰り返し検査をするわけでもなく、どうも辻褄合わせで、その都度、検査回数や実施判断を場当たり的に判断しているとしか思えない。

つまり、クラスター化の抑止や感染拡大防止に真剣に取り組んでいるのか、甚だ疑問なのである。

“世田谷モデル”は今のところ、来年1月いっぱいまでがメドになっているが、その後はどうなるか未定である。区長は常々、「“世田谷モデル”は、誰でもいつでも何度でもを目指すものだ」と答弁してきた。今月11月からは小中学校の職員も対象に加えると言う。

ならば、飲食店や風俗店、娯楽施設も検査すべきではないのか。そうなれば、4億円の財源で済む話ではなくなってくる。いつも国や都の支援を当てにしているが、毎回うまくいくとは限らない。それに、国や都の支援なるものも、われわれの血税である。財政見通しはどうなっているのか。

思い付きの検査を続ける前に、まずは少なくとも1月終了の時点で、検証作業をするように要望する。このことを含めて、今週27日(金)の本会議(15時50分くらいから。中継はこちら)で“世田谷モデル”について、しっかり質問したい。