これも看板倒れ?世田谷区の「政令市化」で保坂区長と対決

2020年12月03日 16:00

前回は、本会議で「“世田谷モデル”の実施状況について」質問したことを書いた。今回は「世田谷区の自治権拡充と政令市化について」の内容をご報告したい。

私も現地で応援した大阪都構想は、周知のとおり敗北した。2回の否決である。吉村府知事によれば3回目はないとのことだが、都構想の一連のチャレンジは、大阪はもとより、各自治体の在り方を問うという意味で、少なくない影響を及ぼした。かく言う世田谷区も例外ではない。

保坂区長は大阪都構想について各所で反対の論陣を張り、住民投票中も辻元清美衆院議員のツイッターに登場。「政令指定都市になりたい!」と願望を露わにした。

区長が言うように、東京の特別区の権限は極めて限定的である。その象徴的なものが財政調整制度による税源配分だ。簡単に言えば、特別区は法人住民税と固定資産税、特別土地保有税の3税は、都に召し上げられる。これを都は23区に配分するのだが、徴収分の55.1%しか与えられない。

一方、大阪都構想の4特別区には78.8%が配分され、東京に比べて遥かに財源が豊かになる仕組みだった。この他にも大阪の特別区は基本的に中核市並みの権限を持つ予定だったわけで、世田谷区をはじめ東京の特別区にとっては、さらに先を行くモデルケースとなるはずだった。

これに保坂区長は反対していた。しかし、私の議場での質問には「都構想案は、今後の大都市運営と自治の在り方に一石を投じた」と答弁したので、一定の評価はしているようなのだが、ならば活発な反対運動は何だったのか?

三軒茶屋・キャロットタワーから世田谷区内を一望(Ian Gelinas/iStock)

区長が言うように政令市化を目指すのであれば、都との軋轢は必至である。都はそれを望むのであれば、23区の再編は避けられないと言っており、これを受け入れる特別区民はかなり少ないだろう。

このままの形で世田谷区だけ独立するというのは、夢物語に過ぎない。ゆえに、私は本当に政令市を目指すのであれば、そのタイムテーブルを区民に示すことと、大阪のように住民投票を実施するなど闘う姿勢を示すよう迫ったが、これについて区長は無回答だった。

特別区の区長は言うまでもなく、党派問わず多くの議員たちも権限拡大を求めている。その成果の1つとして、世田谷区は児童相談所の移管に成功し、今年4月から運営を開始している。やるべきは、課税自主権、都市計画権限、教員人事権などを一つ一つ獲得する努力をしていくことであり、ドーンと出来もしないスローガンをぶち上げることではない。これでは“世田谷モデル”と同じ看板倒れになるということを、ここでも厳しく指摘しておきたい。

それに政令市は政令市で問題を抱えており、その市長たちは「特別自治市」を目指す運動を展開しており、これまでの大阪の「府市合わせ(不幸せ)」を見るまでもなく、政令市化で問題が解決するどころか、新たな課題が出来するということも付言しておく。

さらに今回質した問題点は、保坂区長は「政令市になりたい」と言うのだが、区が議会に報告した自治権拡充に関する検討資料を見れば、「政令市や中核市への移行や都区制度の改善などを前提とせず、既存の枠組みにとらわれずに検討を進めていく」と明記されており、世田谷区が何を目指すのやらまったく不鮮明であるということだ。区長と行政の向いている方向が一致していないのである。

しかも、この報告書には世田谷区が政令市になった場合の財政シミュレーションが示されており、これによると、地方交付税の不交付団体となることから、財政収支はマイナス380億円にもなる。ますます何のメリットがあるのかわからない。保坂区長には目を引くスローガンをぶち上げるのではなく、区民の利益を最優先し、根拠に基づく地に足の着いた政策を実現することに、力を傾注するよう重ねて要望したい。

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稗島 進
世田谷区議会議員(日本維新の会)

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