コロナで気づいた経済の原動力

バンクーバーのダウンタウンで平日の夜、やや小さめのレストランに行けば客が誰もいないことが珍しくない状況です。自分が入店してから会計を済ませるまで客ゼロだったケースがごく普通になってきています。私は飲むので1時間半ぐらいは滞在しているのですが、店に誠に申し訳ない気すらしています。

そんなことが続いているせいか、このところ、外食欲求が下がってしまっています。決して外食がおいしくないわけではありません。ただ、私が飲食店に行く理由の一つは店舗の中の風景を見たい、あるいは同じ雰囲気になじみ、同化したいという心理的刺激を期待していると思うのです。

例えば高級レストランでサーバーがきびきび動き、きちんとした身なりのお客さんが歓談しながら食事をしているのを見ると背筋が自然と伸びて自分も品よくなろうと思うでしょう。活気ある居酒屋ならもう一杯飲もうぜ、となるかもしれません。飲食店の店舗環境とは食欲を増進させ、そこにいることに心地よさを感じさせる重要な効果を持ち合わせているのです。

日本の赤ちょうちん。会社帰りにふらりと寄るような時は概ね一人。ちょっとひっかけたいと思うわけです。そんな時、焼き鳥を焼く煙に躍動感を感じ、ざわつく店で注文の声が飛び交うところにいるとホッとすることはないでしょうか?仮に赤ちょうちんに一人も客がいなくて店主が暇そうにしていたら入りたくないでしょう。

コロナでおひとり様生活、「おうちご飯」が当たり前になりました。挙句の果てにどうせ一人、仕事もネットが中心だから家賃の高い街中にいなくてもいいやと思い郊外に飛び出した方もいると報じられていましたが、引っ越した後、3カ月、6カ月したとき、本当に郊外での生活が楽しいのか、聞いてみたいものです。多分ですが、楽しくないはずです。心理的に参ってしまうと思います。

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日経ビジネスにかなりネガティブトーンの特集、「地方が壊れていく、わが街のリアル」と銘打った地方の疲弊の実態を改めて指摘しています。各章のタイトルもざっくり要約すると「企業も人も金も流出危機」「鉄道、航空は大赤字、撤退、コスト増」「猛烈な人口減、溜まる負動産」「水道広げず、橋も壊す」とさんざんな内容です。これを読んでいて寒くなりました。

地方都市の活性化は政府もかなり力を入れていた課題でありますが、さっぱりどころか過疎化が加速度的に進んでいるように感じます。一つは昔から言われていた若者が都会に移住する点であります。なぜ、若者は都会を好むのか、と言えば刺激なのであります。私が冒頭、誰もいないレストランは魅力がないという趣旨のことを書いたのは人々は常に刺激を求めているのではないかと思うのです。

「田舎はいいよ、物価は安いし、家は広いし」と言いますが、若者はそんなことを望んでいません。出会いであり、発見であり、最先端を仲間とシェアし、自分たちの世界を築くことなのです。ネットやSNSがあるからどこにいても大丈夫というのは嘘です。SNSは画面を通じた世界であり、リアルが伴っていません。

「コロナでオンラインが当たり前、不自由はない」という風潮がありましたが、私にとってZOOM会議ほど退屈なものはありません。時としてあくびを噛み殺しながら早く終わらないか、と思うこともあります。理由は緊張感がなく、物事が動いているという実感がないのです。ならば、別に顔が見えなくても電話や電話会議でも構わないと思うのです。むしろ顔が見えない方が想像力を掻き立てられるかもしれません。

経済の原動力とは人が動いていることだろうと思います。東南アジアや西アジアの国々は人口が多く、まさに活気以外の何物でもありません。蹴落とされるぐらいの勢いを感じます。これぞ生きているな、動いているな、と思わせるものです。

カナダは21年に計画上、40万人の移民を受け入れます。この全体プランからバンクーバー地区に移住してくる人の数はざっと10万から12万人ぐらいになります。これらの多くの人たちの多くは経済移民ですのでしかるべきお金を使ってくれます。

住宅については7人に一軒の需要があるとされますのでバンクーバーの新移民層による年間の新規住宅需要は1万7千戸、これは高層集合住宅で一棟平均200戸あるとすれば85棟も必要になるのです。これ、年間ベースです。これに付随する経済効果は更にあるわけで単に人口だけではなく、若い層を増やしているのは優れた経済モデルだといえるのでしょう。

この9カ月、経済がどう廻るのか、働き方や社会の反応を大変よく観察することができています。この教訓を生かしてコロナを克服し、ビジネスが大きく展開できるようにしたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月8日の記事より転載させていただきました。