気候変動問題が安全保障課題に?未知数なバイデン政権の対中姿勢

2020年12月10日 06:01

Darwel/iStock

免れた憲政危機

トランプ大統領が大統領選での敗北を拒否し、敗れてもなお権力にしがみ付く意思を見せたことで、アメリカの建国以来続いてきた権力の平和的移行が果たされない懸念が生じ、一時はアメリカの憲政の危機のみならず、安全保障上の危機をも危惧された。だが、ただの杞憂に過ぎなかったようだ。

11月23日にトランプ氏はバイデン陣営への権力移行プロセスを開始させるよう一般調達局に示唆したとツイートした。また、同局のトップであるマーフィー長官も独自の判断でバイデン氏を大統領選の勝者だと認め、権力移行に必要な予算、設備を次期大統領に回すと発表している。

それに伴い、次期大統領と連邦から正式に認定されたバイデン氏は自らの政権に引き入れる閣僚候補を次々と発表している。

その中で筆者の目を引いたのが2004年の民主党大統領候補であり、元国務長官であるジョン・ケリー氏を気候変動問題の大統領特使とする人選である。

気候変動問題が安全保障課題に?

気候変動対処はバイデン氏の肝いりの政策であり、環境規制を大幅に廃止し、パリ協定から離脱したトランプ大統領とは一線を画すものである。

そして、バイデン政権では気候変動対処への本気度を示すために、気候変動を「気候危機」という形で表し、安全保障上の課題として取り組んでいくことを記者会見で述べた。

その一環として、バイデン氏は新たに閣僚級のポストである気候変動問題の大統領特使を創設し、そこにパリ協定締結の功労者であるケリー氏を据え、アメリカの外交・安全保障政策を決定する最高機関である国家安全保障会議に出席する権限を与える。

しかし、筆者はこの発表に対してひとつ懸念を覚えた。気候変動を安全保障上の危機と捉えることで、中国の脅威に対してアメリカが妥協的な態度に出る可能性が生じないか?

バイデン政権が直面するジレンマ

気候変動を引き起こす二酸化炭素(Co2)の発生抑制のためには国家間、特にCo2排出量が多い国の間での協調が不可欠である。そして、Co2排出量が多い国の筆頭格はアメリカが安全保障上の脅威と超党派で認めている中国である。それゆえ、気候変動を喫緊の安全保障上の脅威と捉えるバイデン政権はジレンマに直面する。

もし、バイデン政権が気候変動を対処するために中国に対して妥協的な態度で対応すれば、米国の足元を見た中国が活発な行動に打って出ることを容易にし、同盟国のみならず、米国の安全保障を危うくする懸念が生じる。一方で中国の脅威に対応するために、気候変動対処を疎かにすれば、地球温暖化は加速し、より厳格な環境問題へのアプローチを望むバイデン氏の支持者の期待を損ねることにつながる。

どちらの結果もバイデン政権にとっては受け入れがたいものである。

対中政策にどう影響するのか?

しかし、蓋を開けてみなければバイデン政権の気候変動への取り組みが対中政策とどう衝突するかは不明瞭である。

もしかすると、気候変動を大々的に掲げるバイデン政権の言動は自らの支持基盤に向けてのパフォーマンスという要素が強く、対中強硬に傾倒するアメリカの対中政策に影響は出ないのかもしれない。

しかし、その仮定はバイデン政権が対中融和路線になびく想定と同様に、憶測の域を出ない。

中国の脅威に直面するアメリカの同盟国は今一度、気候変動を安全保障上の問題として捉えるとしているバイデン政権の真意を問いただし、これからの戦略を練っていく必要がある。

鎌田 慈央(かまた じお)国際教養大学 3年
徳島県出身。秋田県にある公立大学で、日米関係、安全保障を専門に学ぶ大学生。2020年5月までアメリカ、ヴァージニア州の大学に交換留学していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により帰国。大学の学生寮が閉鎖され、現在は同級生たちとハウスシェアをしながらオンライン授業を受ける毎日。

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