5都道府県の緊急事態宣言発出を検討せよ

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新型コロナの国内感染が初めて3000人を超え、東京でも最多の621人を記録しました。重症者も578人と最多を記録しています。こうした現状を踏まえて、GoToトラベルやGoToイートといったいわゆるGoToキャンペーンを停止するかどうかが課題となっています。

しかし、この間の感染拡大と同キャンペーンとの因果関係は定かではありません。ただ、誤解してほしくないのは、相関がないと言っているわけではなく、日本全国で行われているすべての移動と接触のうち、同キャンペーンを利用した人が占める割合はいったいどの程度なのか冷静な分析が必要だと考えます。

つまり、GoTo を止めることばかりにとらわれると、同キャンペーンを止めれば何とかなるとの発想に陥りがちになり、感染拡大の本質的な原因を見過ごしがちになることをおそれます。

私は、“GoToを含めた”人の移動と接触をいかに効率的、効果的に抑え込めるか、とりわけ、感染経路を追えない人が増えていることを踏まえると、無症状感染者の移動と接触をどう抑え込むかがポイントだと考えます。そのために、速やかに以下の5点の対策を提案したいと思います。

① ピンポイントでの緊急事態宣言の発出

5つの都道府県(北海道、東京都、大阪府、兵庫県、高知県)では本来緊急事態宣言を発する基準である「ステージ4」を既に超えており、期間と地域を限定したピンポイントでの緊急事態宣言の発出を検討すべきです。

今、政府は、緊急事態宣言の発出を避けるために、本来なら宣言下でしかできない休業要請や外出自粛要請を無理やり非宣言下で行おうとしています。「ステージ3」をわざわざ3つの「シナリオ」に分割し、「シナリオ3」で外出自粛要請を出そうとしているのはその典型です。

これは本来、特措法45条1項に基づいて行うべきものです。緊急事態宣言を出さずに店舗に対する休業要請や住民に対する外出自粛要請を行うことは、特措法の間違った解釈に基づくもので、なし崩し的に行うべきではありません。

② 感染拡大地域における検査体制の拡充

感染経路を追えない者が半数を占めている現状を踏まえ、感染拡大地域を中心に検査を大幅に拡充して無症状感染者を割り出し、的確な隔離・保護および追跡体制を強化すべきです。その際、国会でも提案したように「検査の精度管理」を国の責任で行う体制も構築すべきです。

なお、民間による安価な検査が普及しつつありますが、民間が行う検査結果についても、行政がなんらかの形で陽性者情報を集約できる仕組みを構築する必要があります。

③ 追加の現金給付と万全の減収補填

短期決戦で感染拡大を抑制するためには、休業要請や外出自粛要請に従ってもらう必要があることを国民に対して丁寧に説明し納得してもらう必要があります。その際、要請の実効性を担保するために、経済的影響をうける個人や企業に対しては、国の責任で追加の現金給付を行うことや、持続化給付金の複数回給付や上限撤廃による減収補填を行うべきです。

なお、国民民主党は11月27日に発表した緊急経済対策で最大20万円の現金給付、持続化給付金の上限額撤廃、消費税の時限減税などを提案しています。また、独自の特措法改正案も提出し、「命令に従わない場合の罰則の創設」も提案しています。これは全国知事会からも要望があり、国会で早急に議論を開始すべきです。

④ 医療機関及び医療従事者への支援の拡充

医療提供体制のひっ迫が報じられる一方、医療従事者のボーナスの減額や離職が報じられており、深刻かつ残念な事態です。政府は緊急包括支援交付金などで対応していると反論しますが、こうした支援金が現場にまで届いていません。都道府県ともさらに連携を強化し、ボーナスの減少など心配せずに仕事に取り組める環境を早急に整えるべきです。

国民民主党は、緊急経済対策の中で5兆円の追加予算を提案しています。また、保健所機能の強化など保健医療行政を強化し、いわゆる「後ろ向きのクラスター調査」を行う余裕を早急に回復する必要があります。

⑤ 水際対策の強化

10月1日から海外からの入国規制措置が緩和されていますが、接触アプリCOCOAのインストールや公共交通機関の使用抑制などの対策も、全てお願いベースの「要請」に過ぎず、現在の水際対策ははっきり言って「ザル」です。わが党の西岡秀子議員の予算委員会での質問で、政府は公共交通機関を利用している入国者の人数や比率について全く把握していないことが明らかになりました。

国民民主党は、出入国管理法の改正も提案していますが、接触アプリのインストールの義務化を始め、検査、追跡、隔離体制の拡充をはじめ水際対策を一層強化すべきです。

ちなみに、ファーウェイ社の最新スマホにはCOCOAがインストールできない仕様となっており、中国からの入国を先月末に緩和した以上、早急な改善が必要です。

4月下旬、緊急事態宣言下の東京都心部(Fiers/iStock)

経済への影響を考えれば、できれば緊急事態宣言は避けたいのは当然です。しかし、政府によって行われようとしている対応は、本来なら緊急事態宣言下でしかできない休業要請や外出自粛要請に踏み込むもので、これは法的根拠のない人権制約に繋がる懸念があり、それこそ避けるべきです。

確かに緊急事態宣言は強い薬ですが、時期と地域を限定して、短期に感染を抑え込むことが、結果として経済への影響を最小に抑えることにつながると考えます。

残念ながら、菅義偉内閣発足以降、感染拡大を抑え込む新たな戦略や政策が示されていません。今週、いわゆる「勝負の三週間」が終わりますが、新規感染者数の増加は止まりません。ピンポイントでの緊急事態宣言の発出も含め、短期に感染拡大を抑え込む新たな方策を示すときです。

その際、私たちの提案もぜひ参考にしてもらいたいと思います。とにかく、これ以上の無策を続けるべきではありません。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2020年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。