製造と開発の仕分け

2020年12月21日 14:00

私がこのブログを通してずーっと言い続けてきたことがあります。アセットライトです。アセットライトという言葉は私が作ったわけではありませんが、2011年頃にその考え方が生まれ、私も11年12月11日号の本ブログですぐにご紹介させて頂きました。あれから9年です。

その意味するところは「持たない経営」です。資産を持たず、人材も持たず、世の中の激変にさっと対応できるようにする、それが今後重要になると9年前に申し上げました。私の会社は実は真逆で不動産を通じてハードアセットを持つ会社です。なぜ、自分でアセットライトと言っておきながら固定資産を抱え込むのか、と言えばアセットライトのコンセプトは持つ人(会社)と持たない人(会社)がうまく組み合わさってこそ機能する仕組みだからです。

例えばシェアハウスはハードアセットをもって住む人を募集するから持たない人達の需要を満たすことができます。誰も持たなかったら世の中、住宅不足になります。アパートや賃貸住宅でも同じです。持たないだけではなく、持てなくなる時も来るのです。その際に市場に賃貸住宅がなかったら困ります。これが需要と供給のバランスなのですが、それをもっと事業全般に広げていくというのが私の考えです。

例えば私は人材(従業員)はほとんど最小限にも満たない数で廻します。どうしても人が必要ならどこかでその専門の人に外注します。そして事業ごとに新たに人材が必要ならば必要最低限だけ増やすようにしています。なぜか、といえばフレキシビリティなのです。

先日、話題の企業、「バルミューダ」がマザーズに上場しました。この会社名を聞いても「?」だと思いますが、「数万円するトースターを作る会社」と言えば聞いたことある、と思う人もいらっしゃるかもしれません。カナダでもアマゾン経由で600ドルぐらいで買えます。売れるということはうまいのでしょう。(私は日常がパン食ではないので使ったことがありません。)

この会社の特徴はファブレスです。つまり自分のところで工場を持たず、アイディアと設計、販売で勝負するのです。ファブレス企業は別に珍しくも何ともありません。ご存じないかもしれませんが、スマホのアップルを筆頭に無印良品、任天堂、お茶の伊藤園、家具のイケヤ、更にはスポーツ用品のナイキもそうです。工場や生産設備を自社で抱えるリスクが大きいということです。

例えば自動車業界では工場を24時間フル稼働するようなことはよほどのヒット車が複数出ない限り少なくなってきました。稼働率5割以下もざらだろうと思いますが、なぜ動かない工場を持たねばならないのでしょうか?もちろん、反論もあります。例えばアイリスオーヤマの大山健太郎会長は工場の稼働率は7-8割で十分で急な増産に耐えらえるように余力を持つことが大事、といっています。

確かにそうですが、それは財務的に余裕があり、非上場会社で同族経営のポリシーが貫ける強みが背景にあります。一般的には工場の稼働率を高めることは経営効率の重要なポイントでしょう。

(Vision-S Sony Japan HPから:編集部)

(Vision-S Sony Japan HPから:編集部)

将来の自動車業界にくさびを打ち込むのか注目しているのがソニーのEV、「Vision-S」です。同社は2020年のラスベガスの家電展示会「CES」で同社初のEV、しかも超短時間の開発期間にもかかわらずずいぶん完成度の高い車を紹介しました。実車の運転ビデオも見ました。正直、これは車というより動くエレクトロニクスです。インパネは全部液晶。手元のコントローラーの横にも液晶がついていて指で正面の手が届かない画面を操作できます。

このクルマ、ソニーという巨大化したコングロマリットの新たな挑戦とみています。そのキーワードはファブレスです。私は以前、カナダに素晴らしい自動車組み立てをする会社があるとご紹介したことがあります。マグナ・インターナショナル社なのですが、ソニーはそのマグナのオーストリア子会社を介してこのEVを製造しています。

マグナは基本的にどんな車でも組み立てることができます。家電などの世界一の組み立て会社、鴻海精密工業の自動車版になりえるとみています。EVになれば部品数は減る、だけれども誰にでも作れるわけではありません。例えばエンジンがバッテリーに置き換わっても駆動系は変わらないわけでそれは自動車メーカーならではの蓄積されたノウハウが必要なのです。ですが、それはそれぞれのメーカーだけが持っているわけではなくて、マグナ社のように「ウェルカム」してくれるところもあるならそこに車の製造をお願いしたらよいという時代は必ず来ます。

ではマグナはどうやって工場を世界に広げるか、と言えばそのうち自動車メーカーで工場を閉鎖しなくてはならないところはいくらでも出てくるはずでそれをテイクオーバーしていけばよいでしょう。

私は多くの企業は自社製造の比率を下げていく、あるいはゼロにするとみています。それはコストで勝てないからです。

北米に巨大なラーメンの製麺所があり、つい最近バンクーバーにも工場ができました。それまでは自分で製麺機を使ってラーメン店を経営していたところも多くがその製麺所に切り替えつつあります。理由は人件費を含め、製造原価的に全く「勝てない」のです。

製造と開発は2020年代の当たり前になるとみています。これはそもそもがアセットライトのコンセプトから来たものであり、企業はこれから本当の知恵勝負になるとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月21日の記事より転載させていただきました。

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