ディスインフレの中での資産形成

2020年12月28日 14:00

いつもの年よりは少ないかもしれませんが、ボーナスが入り、どうしようか、と考えている方も多いのだろうと思いますが、アンケート調査によると38%が貯金と答えています。使うにも制限が多すぎる昨今、とりあえずは貯金しておこうか、ということでしょうか?

日本で貯金と言っても実際には金利もほとんどない時代が延々と続いているのでとりあえず、銀行という金庫にしまっておく、と考えてよいかと思います。また老後のためにとっておくのはある程度の歳になって貯金が「これしかない」というリスクを回避するためでしょう。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

日銀の黒田総裁はインフレ率2%を半ばあきらめていますが、私が見る日本の構造的ディスインフレの背景としては ①技術革新による商品価格下落 ②企業の価格競争 ③需要減(成熟社会と人口減による)ことが主因だろうと思います。ただ、それ以外にあと二つ、異論があるとは思いますが、付け加えさせていただければ ④政府の政策 ⑤為替の影響があるかと思います。

④の政府政策の一例は左派的ともとれる携帯電話の引き下げ政策やコロナの現金給付政策です。産経の田村秀男編集委員も指摘しているのですが、引き下げた携帯使用料分が他の消費に回らず、貯蓄に回るというものです。コロナの現金給付も麻生大臣が指摘したように消費には廻っていません。菅総理肝いりのこの政策は一般受けはよいのですが、何を企て、それが思惑通りになるシナリオがあるのか、であります。菅総理が老後の生活を支援するため、というならシニア割引制度にすべきでしょう。

もう一点、この携帯電話引き下げについてはNTTなどが発表した価格引き下げ案がネットによる申し込みを原則としており全国約8000店ある携帯ショップの存在を完全否定してしまうのです。これで数年のうち、携帯ショップの過半は消える運命となるわけでそのビジネス機会と雇用の喪失は一応、頭に入れておく必要があるでしょう。

ディスインフレ社会になって20年以上たつ中、政府による消費刺激策はあまりにも多く出現しましたがどれも需要増を長く維持することはありませんでした。一方、携帯電話料金の引き下げは直ちに統計上のデフレ要因に反映されるので黒田総裁としては「うーん、逆風が強まる」と警戒感を示しているのではないでしょうか?

為替については「市場に聞け」ですので大ぼらを吹くわけにはいかないのですが、2021年度は米ドルが対主要通貨で減価する予想が強まっています。理由は財政問題、利回り低下によるアメリカの長期国債への魅力低減、国力や威信への疑問、更には二分化、多分裂化する国内情勢もあります。そうなれば円は買われやすくなり、円ドルで100円突破はあり得ることになります。

これは輸入品の価格低下をもたらしますのでディスインフレ要因になります。つまり、どう見ても日本を取り巻く環境はインフレではなく、ディスインフレないしデフレであります。よってタンス預金だろうが、貸金庫だろうが、金利のつかない普通預金や定期預金でも長期的に見ればお金の価値はさほど下がらないのかもしれません。

そうだとすれば投資をしましょう、資産形成をもっと考えましょう、という機運が出てこないのです。言い方を変えると日本の場合は貯金を殖やすのではなく、「減らさない」という観念で捉える向きが強くそれに従えばデフレ万歳になってしまうのです。

北米にいる私からはそのような見方はもちろんないわけで「お金には24時間365日、働いてもらいます」という姿勢であります。つまりロボット君やコンピューターだけではなくお金も「働かせ倒してなんぼ」なのです。北米でも金利はほとんどつかないので株や不動産への投資は堅調ですし、自分で銘柄選びができなければ投資信託がそれなりの成果を生んでくれています。

私もほったらかしにしているカナダの老齢年金の投資信託がありますが、十数年で2倍ぐらいにはなっています。顧客の90歳を超えたカナダ人のおじいさんがビットコイン投資をしているのにはたまげましたが、国民全般に投資という意味をよく理解し、積極的にお金を入れているともいえそうです。

資産形成をしたい、老後のためにもっと積極的にお金を運用したいと思わせるには物価が下がるような政策は真逆の効果となるため、本来なら政府は消費を増やすために知恵を絞らねばならないのです。

例えば年式が15年以上経った車には環境税と称して所有税がかかるとか、コンパクトシティ化を推進するために集落に住んでいる住民に近隣の街への移住促進政策をするとか、確定申告で電子申請は税額控除額をもっと増やす、空き家には空き家税をかけるなど異論はあるのは分かっていますが、いくらでも知恵は出てくるのではないかと思います。(当地では空き家には空き家税がかかります。)

個人的には日本がディスインフレを脱却できるとは毛頭思っておらず、物価が2%になるのは太陽が西から登るぐらいの話だろうと思っています。それを本気で変えるならば使わない社会から使わざるを得ない社会への構造的転換が不可欠であり、国民のマインドをそっくり入れ替えるほどの力技が求められると思っています。タンス預金は不利だと思わせるほどの施策ははたして生み出せるのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月28日の記事より転載させていただきました。

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