箱根駅伝にみた今年の戦略

今年の箱根駅伝のドラマは近年でも印象深いものがありました。個人とチームのバランスがこれほど結果に影響したのも驚きでした。創価大学のムードは絶好調でタスキを渡す際も皆、ニコニコしていたのはかつて青学が初優勝した時と同じ顔だった気がします。そして10区で3分以上の差をつけている中、誰もに楽勝ムードに浸っていたと思います。しかし、鬼の駒大、大八木監督のがなり声がスピーカー越しに聞こえる中、驚異のゴール2キロ手前での逆転は選手層の厚さが最後に勝利に結びついたように思えます。

もう一つのドラマは青学だったと思います。往路であまりにも無残な結果となり、原監督は早々に白旗、シード権が取れればよい、というところまで目標を落としたところで選手たちの肩の力が抜けたように思えます。結果を見れば復路優勝で前回優勝校の意地を見せました。こちらも選手層の厚さがモノを言ったわけですが、大学駅伝に出る選手たちの実力は伯仲しており、区間ごとの組み合わせ、そしてその時のムードに大きく左右されることを改めて感じました。

2021年をどう攻めるか、この駅伝の結果に学ぶところは多いと思います。まず、普段の積み重ねでどんなシーンにも確実に対応できるだけの経験とノウハウを蓄積すること、そして自分のやり方は果たして正しいのかという疑問を常に持つことが基本中の基本になると思います。

コロナで大きく動揺した方も多いと思います。が、危機対応に優れ、臨機応変で創造的、かつ、柔軟性を持っていた会社は業績を上げ続けました。つまり、前例主義に胡坐をかいていたところは厳しい結果になったと思います。今までの顧客がダメなら全然違うところを当たってみたところは多かったかもしれません。一つ、二つ当たってダメで「やっぱり無理」とあきらめたところも多かったでしょう。私は10、当たって一つでもまともなものがあれば御の字だと思います。

以前にも何度かご紹介した柳井正氏の自書「一勝九敗」はその言葉通り、ほとんどは失敗なのです。私が生業とする不動産業は「千三つ商売」と言って1000件で成約は3つしかないとも言われます。成功率0.3%です。我々は大した努力もしないですぐに結果が出てくることを当たり前に思うようになりました。多分、ネットなど進化もあり、結果が見えやすい時代になったとも言えますが、逆に粘りがなくなったのでもあります。

冒頭の駒大の10区の選手は逆転できるとは思っていなかったし、監督でもそれは奇跡だと思っていたはずです。しかし、粘り強く頑張れば手にすることができることを証明したと思います。

2020年を駅伝の往路、21年を復路に例えるとどうでしょうか?青学は往路で何度かのつまづきと想定外が起きました。選手も人間で本当のコンディションと気持ちは完全一致していないことは大いにあります。この歯車が狂った時の絶望感は目を覆うものがあります。

しかし、気を取り直したのが復路でした。その選手たちは誰一人、ずば抜けた人がいて、〇人抜きをしたわけではありません。着実に順位を上げて詰めていけたのは持っている能力以上に気持ちの余裕があったともいえそうです。

私は21年には期待をしています。今週、大きな会議があり、私がその議長をするのですが、参加者から事前に募った意見からはコロナのこの状態は数年続くという悲観的なものもあります。本当に続くのかもしれないし、続かないかもしれません。そんなことは誰もわからない、だから私は決め打ちはよくないと考えています。柔軟に対応できるように常にオプションAとBを持ち続け、どちらになってもよいようにしておくことが今年を生き抜く一つのテクニックと考えます。

もう一つ、私はコロナという濃霧の中でもがいているのが今の世界全体だと思っています。ところが濃霧はある時突然晴れるのも経験者はご承知かと思います。晴れたとき、自分の立ち位置が何処にあるのか、過去1年以上、コロナに対する守りだけでその間に着実に変化した世の中の趨勢に取り残されていないかは重要な意味を持つとみています。

今のうちに下地を作り、いつでも水平展開できるだけの準備は確実にしておきたいところです。

ちょうど一年の抱負を考える時だろうと思います。抱負も何もとにかく今日を生き延びるのが精いっぱいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、そういう方こそ、打算的ではなく、積み上げる力、そして、世の中のベクトルを読み、ビジネスの新しい切り口を見出していくことが大事だと確信しています。

皆さんとタスキをつないで行ける社会を作りたいと強く思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月4日の記事より転載させていただきました。