2021年版ウィーン氏の10大予想は米経済に強気、東京五輪は開催?

本日は、年始恒例のこちらをお届けします。

kasto80/iStock

ウォール街のヨーダことブラックストーンのバイロン・ウィーン副会長が4日、前年に続きジョー・ジドル最高投資ストラジテスト氏と共に2021年版のビックリ10大予想を発表しました。

ウィーン氏にとって36回目となる今年、以下の10項目を挙げています。一般の投資家が定義する”ビックリ=サプライズ”な出来事は30%の確率で起こること、ウィーン氏の場合は50%以上と定義していますが、どのような内容か、早速みていきましょう。

1)トランプ氏は任期終了後、2024年の大統領選をにらみ自身のTV局を設立。首脳陣や最高経営責任者(CEO)との対談番組”ザ・チーフ”が看板となり、プーチン露大統領とトランプ氏のインタビューは、TV史上で最大の視聴者数を記録へ。

2)バイデン次期大統領は、中国と建設的な外交・通商関係を再建する。中国A株は、エマージング株式市場の牽引役に。

3)5~10種類のワクチンが寄与し、米国は5月31日のメモリアル・デーまでにある程度の正常化を達成へ。飛行機に搭乗する前や映画館の利用、スポーツイベントの参加など、大規模かつ大人数が集まる場所ではワクチン接種の証明書が必要となる。東京五輪は1年遅れながら、観客ありの状態で7月に開催される。

4)消費者への恩恵が優先され、欧州以外でグーグルやフェイスブックなど解体への圧力は低下する。

5)ペントアップ需要に支えられ経済は拡大へ、宿泊、娯楽、航空関連株が力強いパフォーマンスを遂げる。財政・金融政策は引き続き緩和的に。米国の名目成長率は2021年に6%、失業率は5%割れを迎え、2010~20年を超え過去最長となる景気拡大期の幕を開く。

チャート:名目GDP成長率、6%成長なら2006年以来に

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(作成:My Big Apple NY)

6)緩和策を継続するに合わせ、米連邦準備制度理事会(FRB)と米財務省は、現代貨幣理論(MMT)を公然と支持するようになる。インフレがゆるやかに進むなかで金価格が上昇し、仮想通貨が上昇する過程で一段の支持を得るなか、成長率がインフレ率を上回る限り、財政赤字を問題視せず

7)エネルギー企業の幹部が長期的見通しを引き下げたとしても、”正常化への回帰”への期待は高まり、WTI原油先物は65ドルへ上昇する。リグ稼働数も増加し、エネルギー関連の高利回り債の価格は健全に上昇する。エネルギー関連株は、2021年で最良のパフォーマンスを達成へ

8)リスク・オン相場は必ずしもリスクなしを意味せず、上半期に米株市場は20%近く調整する。しかしS&P500は年末にかけ4,500へ上昇景気敏感株がディフェンシブ銘柄を上回るパフォーマンスを遂げるほか、中小型株が大型株を上回るなどK字型をした分断相場に終焉が訪れる。大型のテクノロジー株は売られ、年間でのパフォーマンス出遅れ組となる。

9)米10年債利回りは経済成長の拡大を受け、2%超えへ。ただインフレ上昇を受け、実質金利はゼロ近くを維持する。Fedは住宅市場と自動車市場の支援を目指し、国債の買い入れ年限を長期化する。

10)ドル安の流れが一転、ワクチン普及後の力強い米経済が背景。欧州や日本を上回る成長率を受け、米国債利回りはマイナス圏に振れることなく、キャリートレードが継続する。

以下は、ビックリ予想10選から漏れた”ありえそうなこと”3選となります。例年の5選から、今年は減りました。

1)東欧や中東からのサイバー攻撃が、経済に影響を与える。銀行口座の情報が書き換えられ、病院でも患者のカルテ記録が失われ、クレジットカードの履歴も消えてしまい、データ消失という災禍に苦しむ。

2)テスラが現金と株式を通じ世界的な大手自動車メーカーを買収し、マスク氏がCEOに就任、内燃機関の取りやめを確約する。

3)北朝鮮の金正恩委員長がロサンゼルスまで届く長距離ミサイルの発射をちらつかせるが、トランプ氏が自身のTV局の番組に招き説得し、金正恩氏がこれに応じる。

——いかがでしたか?バイデン政権が誕生する見通しながら、新政権の政策にはほぼ触れませんでしたね。振り返れば、2020年版でも米大統領選について予想を控えていらっしゃいました。ただ、経済成長や金融市場に関する予想は健在。ワクチンの普及と米国の正常化、経済拡大を予想する割に、米株相場が一時20%近く下落する見通しを示しています。ただ、年後半にS&P500が4,500に届くと予想、つまり2020年末から14.7%の上昇を見込むだけに、根本は楽観的と言えるでしょう。

また、年末年始に高騰が話題となった仮想通貨の上昇を予想。東京五輪も観客を招いて開催されるとあって、一部関係者を安堵させたに違いありません。

さて、2020年の”ビックリ10大予想”の結果を振り返ると・・・1勝4敗5分と2019年と変わらず。1勝4敗5分け、2018年の0勝6敗4分け、2017年の1勝6敗3分けから負け越しを縮小しています。

とはいえ、引き続きウィーン氏の予想は複数盛り込まれるため判断が難しいというのが実情です。気になる方は、是非2020年版を始め過去の一覧をご確認してみて下さい。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年1月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。