トランプ大統領のTwitterアカウント凍結と、言論の自由

八幡 和郎

DKart/iStock

Twitter社がトランプ大統領のアカウントを永久凍結した。トランプ氏の投稿には削除されても仕方ないものがあったが、個別の投稿に対処すれば良いし、アカウント停止も一時的であるべきで、永久にアカウント停止するのは検閲そのものになりかねない。

停止されたトランプ大統領のアカウント

もし、一民間企業によるこのような行為が許されるなら、裁判や行政措置で公的に言論の自由を永久に剥奪する刑罰や措置を取ることも憲法違反ではなくなってしまうのではないのかという疑念が生じる。

Twitter社はしてよくて、中国政府はしてはいけないというのでは、理屈が通らないのではないか?すべてのプラットフォームが永久追放すればいいことになる。

トランプ氏がこうした行為を正当化する口実を与えたことは残念であるが、こうしたプラットフォーム側の行為を支持することもできないことも明確にしたい。

少なくとも、禁止行為の明確化、客観性の確保できる審査機関への異議申し立ての機会確保、最終的な判断は裁判所で行われるべきことが必要なのではないか。

さらに、“言論の自由を約束する”として、投稿をほとんど規制しない新しいSNSサービス「Parler(フランス語でスピーク)」のモバイルアプリが、AppleとGoogleのアプリストアからそれぞれ削除され、Webアプリからもログインできない状態になっているそうだ。削除される前、Parlerには米新大統領就任式前に議事堂を再度襲撃する、などの投稿が表示されていたそうだが、こうした措置は戒厳令かなにかで初めて許されることではないか。内乱誘発と言うなら刑罰で対処すればいい。

逆にこうしたSNSやApple、Googleの過剰な反応がトランプ大統領の過激な措置を誘発しかねないし、トランプ大統領の行動を抑制するためのペンス大統領らの最終手段発動にも抑制的に働くだろう。

世の中どっちもどっちに持って行かないようにしないと、言論の自由も民主主義も守れないのは双方に対する苦言である。

また、日本では、SNS上の規制が、なぜか、特定の国について不均衡に厳しいという指摘もある。もしそうであるならば、実質的に、特定の国の検閲を受けているのと同様の結果になってしまいかねないのだから、これも議論されるべきだ。

公式写真

*本件についてNHKは次のように報じている。

ツイッター社 トランプ大統領のアカウント 永久に停止と発表

『大統領は8日、2件投稿し、自身に投票した有権者に「7500万人の愛国者よ」と呼びかけたほか、今月20日のバイデン次期大統領の就任式に出席しない考えを明らかにしていました。

ツイッター社の声明によりますと、アメリカ国内で緊張が続いていることを踏まえて投稿を詳しく検討した結果、「愛国者」という呼びかけは議事堂の占拠への支持を表明しているとも解釈されるほか、就任式の欠席は「トランプ氏の不在は就任式での暴力行為を企てている者を後押ししかねない」と結論づけました。トランプ大統領「私たちを黙らせることはできない」』

『アメリカのツイッター社がトランプ大統領のアカウントを永久に停止したことについて、大統領は声明を発表し、「ツイッターの社員は民主党や過激な左派と連携して私のアカウントを削除した。私と、私に投票してくれた7500万人のすばらしい愛国者を黙らせるためだ」として、表現の自由を制限していると強く非難しました。

そのうえで、「近い将来私たちは自分たちのプラットフォームをつくることを検討している。私たちを黙らせることはできない」として、アカウントの停止に対抗していく構えを強調しました』。

この問題の議論はアゴラサロンでやっています。