慰安婦訴訟:政府は主権免除に逃げず、今こそ起訴事実を否定せよ

2021年01月10日 06:01

Aleksandr_Vorobev / iStock

ソウル中央地裁は8日、16年1月に開始されていた日本政府を被告とする元慰安婦12名の訴訟で、原告の起訴事実をすべて認めた上で、被告が原告らに損害賠償金として一人1億ウォン(約950万円)を支払え、との判決を下した。

これに対して加藤官房長官は、「国際法上の主権免除の原則から、日本政府が韓国の裁判権に服することは認められない」などと述べた。

筆者は「また同じことの繰り返えしだ」との感慨を抱く。それは、韓国の原告らや韓国政府のやり口に対するだけのものでなく、日本政府の対応についての感想も同様。理由は次のNHK報道の引用個所に書いてあることによる。

「日本政府は、主権国家はほかの国の裁判権に服さないとされる、国際法上の主権免除の原則から訴えは却下されるべきだとして、裁判には出席しませんでした。」

日本政府は、特に日本統治期に係る元慰安婦やいわゆる元徴用工による日本関係者に対する訴訟では、65年の日韓請求権協定や15年の慰安婦合意、すなわち国家間の条約や合意によって決着済みであることを理由に、裁判に応じないことを基本にしている。

理由はもっともだし、それも一つの戦略だろう。が、裁判に出席しないことでことが済むのか、他にすることがないのか、と筆者は思うのだ。なぜなら、被告のいない法廷で何が起こるかと言えば、原告側の嘘八百の主張が、ほとんどの場合、すべて起訴事実として判決文に載ることになるからだ。

今回の判決文が、徐台教というソウル在住のジャーナリストの「[全訳]慰安婦訴訟についてのソウル中央地裁報道資料(2021年1月8日)」としてネットに上がっていた。そこから筆者が、日本政府として反論すべきと考えるソウル中央地裁の事実認定などの個所を、下線を付して引用する。

―原告たちの請求要旨

原告たちは日本帝国が侵略戦争中に組織的で計画的に運営してきた‘慰安婦’制度の被害者たちで、日本帝国は第二次世界大戦中、侵略戦争の遂行のために組織的・計画的に‘慰安婦’制度を作り運営し、‘慰安婦’を動員する過程で植民地として占領中だった韓半島に居住していた原告たちを誘拐や拉致し、韓半島外へと強制移動させ、原告たちを慰安所に監禁したまま常時的な暴力、拷問、性暴行に露出させた

-判決要旨

カ.裁判権の有無[国家免除の適用余否]に対する判断:裁判権あり (中略)

—しかし、この事件の行為は日本帝国に依り計画的、組織的に広範囲にわたり恣行(*ほしいままに振舞うこと)された反人道的犯罪行為として国際強行規範を違反したものであり、当時日本帝国に依り不法占領中だった韓半島内でわが国民である原告たちに対し恣行されたものとして、たとえこの事件の行為が国家の主権的行為であるとしても、国家免除を適用することはできず、例外的に大韓民国の法院に被告に対する裁判権があると見る。-

タ.損害賠償責任の発生

―日本帝国は侵略戦争の遂行過程で軍人たちの士気振作および民願発生の低減、効率的な統率を追求するためにいわゆる‘慰安婦’を管理する方法を考案し、これを制度化し法令を整備し軍と国家機関で組織的に計画を立て人力を動員、確保し、歴史で前例を探すことのできない‘慰安所’を運営した。

10代の初中盤から20歳余りに過ぎず、未成年または成人になったばかりの原告たちは‘慰安婦’として動員されて以後、日本帝国の組織的で直・間接的な統制下で強制され一日に数十回日本軍人たちの性的な行為の対象となった。原告たちは過酷な性行為による傷害、性病、望まない妊娠、安定性が満足に保障されない産婦人科治療の危険を甘受しなければならなかったし、常時的な暴力に露出され、満足な衣食住を保障されなかった

原告たちは最小限の自由も制圧され監視下で生活した。終戦以後も‘慰安婦’だったという前歴は被害を受けた当事者に不名誉な記憶として残り、いつまでも大きな精神的な傷となり、これにより原告たちは以後社会に適応する際に困難を受けた

ベルリンや台南や世界中の慰安婦像の碑文に刻まれた文言と同様の韓国側の首尾一貫した「詐話」だ。「詐話」とは吉田清治による「済州島での慰安婦狩り」という空前の作り話を、現地に入ってその事実がないことを取材した歴史家の秦郁彦が称した語。いわば「詐欺的な話」のこと。

慰安婦報道は、朝日新聞が30年前ほどから膨大な嘘報道を垂れ流し、その後、虚報と認めて別の虚報と併せ社長が辞任したように、また先般最高裁が、初期に朝日に慰安婦記事を書いた植村元記者による櫻井よしこらに対する訴えを原告敗訴としたように、明らかに「詐話」だ。

韓国でも李承晩学堂のイ・ヨンフン教授らの手になる反日種族主義ベストセラーになり、そこで克明で述べたられ韓国の慰安婦調査から、日本軍や官憲による「誘拐や拉致」、「韓半島外へと強制移動」、「監禁したまま常時的な暴力、拷問、性暴行に露出させた」事実がないことは明白になった。

そうであるのに、日本政府が「条約で決着済み」とか「謝罪した」とか「主権免除」とか言うのみで、肝心の慰安婦問題の本質である「誘拐や拉致」や「強制移動」や「暴力、拷問、性暴行」といった部分に地道に反論しないのでは、判決文を基にした韓国の報道だけが国際社会に流布する。

尖閣も同様だ。「領土問題は存在しない」などと言ったところで、尖閣に日本人を置いている訳でなし、まるで通勤しているかのように中国公船が領海に来るのでは、どちらが実効支配しているのか国際社会には判るまい。それと同じで、慰安婦や元徴用工の問題でも事の本質に反論することが大事だ。

日本政府には「逃げるな」と申し上げたい。

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