コロナ特措法改正は「改悪」となるか

recep-bg/iStock

政府は、新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案をめぐり、緊急事態宣言下で都道府県知事の休業命令に事業者が従わない場合、行政罰として50万円以下の過料を科す方向で調整に入った。現行法は、飲食店への営業時間短縮や休業の要請を拒否しても罰則がなく、実効性をどう担保するかが課題となっていたので、強制力を持たせるために改正するというのだ。

勿論、今後の審議過程で改正の内容が変わる可能性はあるが、もしこれがそのまま通るとなると、かなり危険というかおかしな法律になる可能性もある。

そもそも、飲食店への時短要請がコロナの感染拡大防止対策として有効かとの問題がある。午後7時まで営業しようが、店内での感染症対策が不十分だったら、時短営業しても、無意味ではないか(時短などよりも、店の感染症対策を万全にしたり、チェックするほうが意味があると思うのだが)。

もし仮に時短や休業を罰金を課してまで要請するとして、そのまま「はい、そうですか」と従う飲食店ばかりではないだろう。経営者や従業員の生活がかかっているのだ。

今回の特措法改正では「時短要請に協力した事業者への支援や協力金」についても焦点となっているが、雀の涙ほどの支援金では、普通、納得しないだろう。休業期間中の従業員などの給料もしっかりと支援するくらいでなければ、休業要請に従う人は少ないのではないか。

また、要請に従わないからと言って店名を公表するのも止めたほうが良い。「店名を公表するのは、吊し上げる意味ではありません」と言っていた役所関係の人間がいたのをテレビで見たが、吊し上げ以外の何物でもない。「あそこの店、営業しているんだって」「なんて酷い店なんだ」と地域住民等に思わせて休業等に追い込ませるのが目的ではないか。百歩譲って、吊し上げが目的ではないとしても、自然とそのような空気が醸成されて、店が営業しにくくなるだろう。

不信や怒り・差別ーこのようなものが生まれ、それこそ国民の「分断」を生む可能性もあろう。そのような事は決してあってはならない。ただでさえ、コロナに感染した人への差別が問題になっている昨今だ。店名公表など、コロナ対策でも何でもない。百害あって一利なしだ。店名公表する暇があったら、役所の人間は、その店の感染防止対策に尽力しなさいと言いたい気分である。

さて、特措法改正の論点には「臨時の医療施設を開設しやすくする」などもある。これは、コロナ対策としては有効であろう。国会議員の皆様には、特措法が改悪となったと言われないよう、是非、真剣に議論し、良い特措法を成立させてもらいたいと願う。

今こそ、国会議員の「良識」が試されているのだから。