『地方創生への挑戦』

株式会社きんざいから『地方創生への挑戦―SBIグループが描く新しい地域金融』という本を上梓しました。来週水曜日20日より全国書店にて発売が開始されます。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は私たちの生活と社会構造に大きな変化をもたらしました。感染リスクを低減するため、人との接触や移動が制限されたことで、デジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に加速しました。リモートワークも急拡大し、レストランの料理をオンラインで注文するといった行動様式もすっかり〝新しい日常〞となりました。また、ニューヨークやロンドン、東京といった巨大都市では新型コロナの感染者が著増し、日本では東京一極集中のリスクが顕在化したことで地方分散型社会への転換がこれまで以上に叫ばれています。今までは当たり前のことだと思っていた日常のさまざまなことが、非連続的な変化を迫られています。

こうした大きな困難に見舞われている今はあらゆる面で進化すべき時でもあります。東京一極集中から地方分散型社会へ。ポストコロナは間違いなく地方の時代です。

地方は魅力にあふれています。その魅力、そこで暮らす人たちや企業、行政のことを一番よく理解しているのは、そこに根差した地域金融機関です。実際、私どものもとには、実にさまざまな業種の方々から「地域金融機関の協力を得て地方でビジネスをしたい」との相談が舞い込んでいます。

地域金融機関の強みは、その顧客基盤と長年にわたって培われた地域における「信用」です。地域に根付く中堅・中小企業と幅広く取引をし、個人のお客様とも多くの接点があるだけに、地域におけるブランド力も抜群です。それらはメガバンクや最先端のテクノロジーを持つフィンテック企業でも到底かないません。

もちろん、地域金融機関には本書で触れているような課題が多くあるのも事実です。しかしその課題を克服すれば、間違いなく「持続可能なビジネスモデル」を構築でき、地域も活性化していくはずです。

SBIグループはこれまで3年超にわたり、そうした地域金融機関の諸課題の解決に資するべく提携を強化し、インターネット金融グループとしての先進的なテクノロジー、ノウハウ、ビジネスモデルを提供してきました。2020年12月現在では、7つの地域金融機関との間で戦略的資本・業務提携を行っています。2019年9月の島根銀行との資本・業務提携を皮切りに、それぞれの取り組みで徐々に成果を上げつつあり、十分な手ごたえを感じています。

その上で、今後は地域金融機関のほかに地域住民、地域産業、地方公共団体を加えた4つの経済主体にアプローチすることで地方創生の具現化を目指すべく、2020年8月に志を同じくする複数のパートナーと地方創生に関する企画・戦略を立案し推進していく母体として「地方創生パートナーズ」を設立しました。本書はSBIグループの地方創生への取り組みが地域金融機関との連携からさらに進化し、新たな段階に入ったことをご説明したいと思い、上梓するものです。

ポストコロナの時代に目指すべき地方分散型社会の構築は、SBIグループが地域金融機関とこれまで取り組んできた方向と一致しています。しかし、地方をひとくくりで論じることはできません。それぞれの地域ごとに名物料理があるように、文化や環境が違います。同じ色に染まるのではなく、その地方の持つ特徴や良さ(魅力)を活かしてそれぞれが活性化し、発展していくことが重要です。

SBIグループが地方創生に取り組む根底には、「公益は私益に繋がる」という考え方があります。すなわち、世の為人の為になる活動をしていけば、やがて自らの利益にもつながるという考えで、これはSBIグループの創業時からの想いです。地方が元気になること、それが日本に明るい未来をもたらすと私は信じています。本書が、一人でも多くの方に地方創生への関心を高めていただくきっかけとなり、「ふるさと」の活性化につながれば大変うれしく思います。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。