なぜ、冬の太平洋側の雪の予報は外れやすいのか

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暖冬だった前回の冬と比べ、2020年度の冬は日本海側を中心に大雪に見舞われています。2020年から2021年にかけての年末年始、関越自動車道や北陸自動車道では車が数十時間も立ち往生したというニュースが話題になりました。しかし、このとき太平洋にはほとんど雪は降りませんでした。

このように、冬は日本海側で大雪が降りやすく、太平洋側ではあまり雪が降らないというのはよく知られていることです。

しかし、太平洋側でまったく雪が降らないわけではありません。ちょうど成人式や大学入試シーズンでは予期せぬ大雪により交通機関が麻痺して、街が混乱する様子がニュースになるものです。

しかも、太平洋側の雪の予報は当たりにくいので、「雨だと予報していたのに雪になりました」ということで気象庁の謝罪会見が開かれたりします。なぜ、太平洋側の雪の予報は当たりにくいのでしょうか。

まず、冬の気圧配置といえば、教科書でも習った通り、西の大陸に高気圧があり、東の海上に低気圧がある「西高東低の気圧配置」です。このような気圧配置のときは、日本海側で雪が降りやすくなりますし、予報が外れることはあまりありません。

出典:気象庁ホームページ

この天気図で大陸にある高気圧はシベリア高気圧と呼ばれていて、寒冷で乾燥した空気で構成されています。シベリア高気圧からは、日本の東の海上にある低気圧に向かって冷たく乾燥した空気が吹き出します。これが冬の季節風です。冬の季節風はもともとは乾燥しているのですが、日本海を通るときに湿ります。そして日本列島の中央を走る山脈にぶつかるときに雪を降らすのです。雪を降らせたあと、冬の季節風は再び乾燥して、太平洋側へと吹き降りていきます。いわゆる空っ風と呼ばれるものです。だから、冬は日本海側でしょっちゅう雪が降るのに、太平洋側ではめったに雪が降らないのです。

では、太平洋側で雪が降るときの気圧配置はどのような感じなのでしょうか。

出典:気象庁ホームページ

冬型の気圧配置にみられがちな、日本列島付近の等圧線の縦じま模様はなく、かわりに日本列島の太平洋岸をなめるような進路で低気圧が通過します。

この低気圧は南岸低気圧と呼ばれ、冬の太平洋側に雪をもたらす元凶です。しかし、この低気圧の進路がほんの少し南北にずれるだけで、降るのが雨なのか雪なのかが変わってきます。そして、低気圧が日本列島から離れすぎるとそもそも太平洋岸では何も降らないのです。

さらに、南岸低気圧の進路だけではなく、低気圧の発達度合いや上空の寒気の強さ、地表付近に滞留している寒気の様子、地上付近の空気の湿度など、さまざまな要素が絡み合って、雨か雪かが決まります。このしくみが複雑なので、まだ太平洋側の雪を正確に予測するのは難しいのです。

今年は雪のほか、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、受験生が例年以上にやきもきする年ですよね。どうか無事、試験で十分な力を発揮できるよう、陰ながら応援しています!