ポピュラー音楽のリマインダー/ビートルズ「ゲット・バック」


東京五輪を除いて(笑)、2021年に私が最も期待しているのが、8月27日に世界同時公開のドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』です!
この映画は、原点に戻る目的で始まった伝説のレコーディング「ゲット・バック・セッション」やロンドンのビルの屋上で行ったゲリラ・ライヴ「ルーフトップ・コンサート」等を含む大量の未発表映像と未発表音源で構成されるとのことで、ロックファン必見の映画になると予想されます。この12月に公開された先行特別映像を見ただけでも目頭が熱くなってきます。

この映像を見て真っ先に思ったのは、最高に仲が悪いとされていた当時のメンバー達が、割かし和気あいあいと仲良くレコーディングしていることです(笑)。ジョン・メンバーの恋人で「ビートルズを解散させた女」と恐れられている我らがオノ・ヨーコさんが、レコーディング中にメンバーの目の前でガン見する映像も散りばめられています(笑)。しかも、ポール・メンバーの恋人リンダさんと楽しそうに歓談する映像もあります。

この当時、めちゃくちゃ仲が悪かったのが、ポール・メンバーとジョン・メンバーであり、そしてそれ以上に仲が悪かったのが、ジョージ・メンバーとポール・メンバー、そしてジョージ・メンバーとジョン・メンバーとされています。敵の敵は味方みたいなことはなく(笑)、三国志状態が続いていたようです。リンゴ・メンバーはジョージ・メンバーと仲が良く、ポール・メンバーと対立していました。仲が良い稲垣メンバーと草薙メンバーが木村メンバーと対立するようなものです。

さて、ビートルズのメンバー同士の対立は、曲作りにも反映されていたと考えられています。この記事では「Get Back」を中心に不滅の名曲を時系列順に並べ、その対立から解散までの経緯を追っていこうと思います。なお、鬱陶しいとお思いの方も多いと思いますので、以降メンバーの名前を呼ぶときは、「メンバー」という肩書を取って名前で呼びつけにしたいと思います(笑)

Hello, Goodbye

1967年に録音されたこの曲は、「イエス」と言えば「ノー」、「ハロー」と言ったら「グッドバイ」というようなすれ違いを表現したポールの曲です。もしかしたらこの頃から対立が始まっていたのかもしれません。この曲はシングルのA面としてカットされましたが、ジョンのサイケの名曲[I am warus]がB面にされたことで、ジョンはキレたと言われています。そして、この直後にジョンは[前衛芸術家]のオノ・ヨーコさんと出逢います。

Hey Jude

この不滅の名曲は、オノ・ヨーコさんと不倫して妻のシンシアさんと離婚することになったジョンの息子の[ジュリアン]君を慰める曲としてポールが書いたものです。勿論、ジョンとオノ・ヨーコさんにとっては面白くなかったことでしょう(笑)。

Get Back

音楽性の違いや人間関係でメンバーの対立が深まる中、ポールが原点回帰を目指して提案したのが、スタジオに一同が介してレコーディングを行う「ゲット・バック・セッション」でした。その思いでポールが作ったがこの曲です。前に突っ込んでいく2ビートにジョンの繊細なギターが絡む展開を見せるコテコテの名曲です。

Don’t Let Me Down

ロック魂をパワフルぶつけてくれるこのストーレートアヘッド過ぎる曲(笑)は、盲目な恋にハマったジョンがオノ・ヨーコさんのために書いた曲と言われています。映像はルーフトップコンサートです。オノヨーコさんが向かって右側の「特等席」でガン見しています(笑)

The Ballad Of John And Yoko

この頃、ジョンとオノ・ヨーコさんはメディアの前でよせばいいのに[ベッド・イン]しました(笑)

Come Together

ジョンが書いたこの曲のタイトルは、表向きは「みんな集まろう」ですが、ジョンがはまっていたドラッグの隠語でもあります。さらにビートルズは混迷を深めていきます。

Let It Be

「ゲット・バック・セッション」は最後のアルバム”Let It Be”に収録されました。タイトル曲であるこの曲は「あるがままをあるがままに受け入れる」ことを宣言した曲です。結局、メンバーは解散を受け入れたのです。

The Long And Winding Road

最後のアルバム”Let It Be”に収録されている最後の全米No.1シングルとなったこの美しい名曲は、孤立したポールがスコットランドの農場でリンダさんに励まされながら書いた曲です。行先もわからない長く曲がりくねった道でポールがもがき苦しんでいる様子が示唆されています。

Across The Universe

やはりジョンのサイケ曲は素晴らしいです。しかもアコースティックなフォーマット!
最後のアルバム”Let It Be”の後ろから2番目に収録されているこの曲は [Tomorrow Never Knows] [Strawberry Fields Forever] [Lucy In The Sky With Diamonds]にも肩を並べる最高に偉大なサイケです!「なにものも私の世界を変えられない」いう歌詞はビートルズの終焉を意味するものです。

Get Back (Reprise)

最後のアルバム”Let It Be”の最後に収録されているのはGet Backの繰り返しヴァージョンです。やっぱり最後の最後に未練を残したと言えます(笑)

以上、ビートルズの対立から解散までにリリースされた代表曲ですが、これらの曲は彼らの状況を表現した私小説のようになっています。仲が悪かったとされる定説が本物なのか、それとも陰謀論なのか、映画『ザ・ビートルズ:Get Back』が教えてくれそうな気がします。


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年1月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。