印鑑完全廃止のプロセスはまず「認印禁止」から

内藤 忍

印鑑と名刺は、日本のビジネスに深く根付いている慣行です。どちらもその必要性は薄れていくと思っていますが、相変わらず印鑑を押さない日はほとんどないと言って良いくらい、頻繁に押印手続きがあります。

不動産取引などで契約書の押印をする場合は、印鑑証明書を添付して実印を使います。これは、本人確認という意味では現状は致し方無いと思いますが、問題は「認印」です。

印鑑を押す必要が必ずしもない請求書に、未だに押印してPDFでメール送付か原本の郵送を求めてくる会社があるのです。それも、コテコテの不動産会社ではなく、IT系の会社だったりするのが意外です。

菅政権になってから、既に規制緩和により行政手続きで必要な押印は99%以上廃止できたそうです。この流れが民間企業にも広がれば良いのですが、その障害になっているのは、企業の経理部門です。請求書に認印が無ければ支払いをしないという会社は、保守的な経理部門が従来からの印鑑至上主義を変えないことに問題があるのです。

実印はともかく、少なくとも認印という慣習は突然止めてしまっても実務上の問題はありません。

企業側の自主的な変化を待つのではなく、今のタイミングを捉えて「認印禁止」というルールを法律で作り、不必要な印鑑利用を減らしていけば、印鑑の使用頻度は大きく減らせます。

実印の廃止のようなハードルの高いところは後回しにして、出来るところから始める。そして、最終的には紙ベースの取引が無くなっていくようになれば、「対面・紙・印鑑」といった従来のビジネスルールが、大きく変わっていくきっかけになるでしょう。

と、こんなブログを書きながら、今日もまたせっせと紙に認印を押して、レターパックで郵送する仕事をしています(笑)。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。