左派デモ団体による平和祈念式典妨害を許すな:広島市平和推進に関する条例策定中

椋木 太一

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

広島市議会は、広島市の平和行政の基本理念となる「広島市 平和推進に関する条例(仮称)」を策定中で、今年3月の市議会への提案に向けて作業は大詰めを迎えています。この条例への注目度は高く、市民意見募集(パブリックコメント)では1月15日から1か月間で700件程度の意見等が寄せられています。通常、寄せられる意見等は数10件程度と言いますから、いかに異例かということがお分かりだと思います。

また、複数の市民団体等が素案に対する声明や意見・要望を広島市議会に提出するなど、これほど高い関心を集めているのは、この条例がそれほど重要なのだということを確信しています。

平和記念式典(2019年)の様子 広島市HPより

まずは、改めて条例策定の背景や経緯などを説明します。

人類史上初の被爆地である広島市では、原爆投下の8月6日に開催される「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」(平和記念式典)の最中に、左派デモ団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」が拡声器で叫んだり、太鼓を打ち鳴らしたりするため、平和記念式典の静謐な環境が保てなくなっています。

式典の目的達成が困難な状態は10年以上続いていることから、2018年12月、平和記念式典の騒音に関して市民アンケートを実施したところ、多くの市民が「うるさい」と感じていることが明らかになりました。そして、広島市議会は2019年6月、各会派の代表者による「政策立案検討会議」を作り、条例素案の策定作業を進めてきました。

このほか、デモ騒音問題に関する広島市や広島市議会の取り組み等は、これまでアゴラで紹介させていただいています。以下、ご参照ください。

8.6 広島平和式典の喧騒:「アベ帰れー」のデモは表現の自由か?(2019年8月5日)

またも破られた静寂:原爆の犠牲者を冒とくする「アベ、帰れ」(2019年8月7日)

「アベ帰れ」騒ぎの広島平和式典:参列者の8割「静かな環境を」(2019年9月27日)

「アベ、帰れ」から1年…あすの原爆忌75年は静寂を取り戻せるか?(2020年8月5日)

原爆忌75年、またも破られた静寂:条例での規制に本腰を(2020年8月7日)

原爆の日式典、左派デモの喧騒から静寂を取り戻す!条例案固まる(2020年10月28日)

次に、条例素案は前文と全10条、附則からなります。前文では、条例の趣旨として恒久的に平和を推進することを謳っています。各条文では、目的(第1条)や平和の定義(第2条)、広島市の責務(第3条)、市議会、市民の役割(第4条、第5条)、平和記念日の制定(第6条)、財政上の措置(第9条)などを盛り込んでいます。

特筆すべきは、第6条2項の存在です。同項は、「本市は、平和記念日に、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を、市民の理解と協力の下に、厳粛な中で行うものとする」と規定しています。「厳粛な中」という文言は、2019年6月に市議会が可決した決議(「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式が厳粛の中で挙行されるよう協力を求める決議」)に基づくものです。

この部分に対し、広島弁護士会(足立修一会長)は2月12日、「表現の自由」の観点から第6条2項の「市民の理解と協力の下に、厳粛な中で」の文言を改めることなどを求める会長声明を出しました。また、原水爆禁止広島県協議会は秋葉忠利・前広島市長らの連名で2月15日、同様の観点から、第6条2項そのものの削除などを求める意見と要望を行っています。

上述のとおり、平和記念式典は左派デモ団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」の騒音問題で静謐な環境を損なっています。原爆犠牲者を慰霊し、世界の恒久平和を祈るという、日本にとって「特別な日」が破壊されているのです。

こうした現実は、広島市議会議員としてだけでなく、祖母が被爆者の被爆3世としても、到底、看過できません。8月6日は、今はこの世にいない祖母と、1年に1度、”広島の思い”を確認しあう大切な日なのです。これは、ご遺族のみならず、広島市民、そして、世界平和を願う人々に共通した思いです。

Travel Photography/iStock

この条例素案は、そのような思いを込め、広島市民の代表である広島市議会が策定しました。この素案は仮称ですが、「広島市 平和推進に関する条例」とあるように、文字どおり、広島市が世界のリーダーとして平和を推し進めていくという決意を高らかに宣言するものなのです。

ですから、この素案に反対するということは、平和推進を否定することにつながり、広島市民の平和を希求する思いを踏みにじることにもなります。条文の削除を求めることは、広島の魂を抜くことにほかなりません。だからこそ、日頃、「平和」を声高に叫ぶ人々やグループが反対や条文の削除を求めることが疑問で仕方がないのです。

実は、秋葉忠利氏は広島市長時代の2009年7月、上記の左派デモ団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」に式典時間帯の音量に配慮を求める書面を送っています。立場が変われば一転して騒音を認めろとは、どうにも説明がつかないと思います。

この件に関し、ジャーナリストの篠原常一郎先生が、ご自身のユーチューブチャンネル「古是三春チャンネル」で熱く語っています(参照 #2021/02/14 うめの娘衝撃日記.全翻訳完了、とらさん弾劾失敗、広島のあの弁護士 生ライブ配信 – YouTube 05:30~22:00)。また、「静かな8月6日を願う広島市民の会」など3団体は2月17日、第6条2項の存続を求める声明を山田春男・広島市議会議長に手渡しました。広島市民や広島市議会の思いを汲んでいただき、とても心強く感じています。

静かに犠牲者を悼み、恒久平和を願う――。多くの皆様の思いはここに集約されます。篠原先生もおっしゃっていますが、犠牲者を静かに悼む気持ちは、左・右の政治信条に関係ないのです。そのようなものを超越したところに、この条例の理念はあるのです。被爆者の皆様の平均年齢は80歳を超えています。以前にも増して、1年1年が大事になっています。8月6日に以前のような静謐な環境を取り戻すため、広島市議会は大きく前進して参ります。