ブラジル大統領選:元大統領を有罪にした判事が大統領選出馬へ

ルラ元大統領を有罪にしたモロ判事が大統領選への出馬を決めた。

次期大統領選、ルラ元大統領がボルソナロ大統領より優勢

来年10月のブラジル大統領選挙予測では1回目の投票でルラ元大統領が44%、ボルソナロ大統領は26%というのが先月10月の時点で公表された。(10月1日付「フランス24」から引用)。

過半数を満たさないということで決戦投票となってもルラ氏が優勢であることに変化はない。それを裏付けるべく9月の世論調査ダタフォーリャの予測でも決戦投票になれば前者56%に対し後者31%という報告を出している。(9月23日付「エル・パイス」から引用)。

第3勢力の候補者探し

ところが、ルラ氏もボルソナロ氏も大統領として望まないという有権者が多くいる。前述した世論調査でそれが明らかにされている。それによると、ルラ氏38%、ボルソナロ氏59%という高い比率でこの二人の候補者を多くの有権者が否定しているのである。ルラ氏は企業家と軍人から嫌われている。ボルソナロ氏はこれまでの政権運営から国家指導者として相応しくないということを何度も見せている。

またサンパウロ州のドリア州知事も一時候補者としての可能性が上がっていたが、9月の時点で反対派が37%という比率で彼を拒否している。

それが意味するのは第3勢力としての候補者の擁立が望まれているということだ。ところが、その適任者が見つからないでいる。そこで企業家の間ではボルソナロ氏に言動を控え目にしてもらって彼を支持する方向も検討されている。社会主義者のルラ氏は企業家や軍人の間では大統領として望まれない人物だ。

そのような中で11月に入って第3勢力としてモロ判事が大統領選に出馬することを明らかにした。モロ判事は23年間連邦判事を務め、ルラ氏を資金洗浄と収賄で9年6カ月の禁固刑の判決を下した人物だ。

判事としての活躍が注目を集め2014年のブラジルの雑誌「Epoca」ではブラジルで最も影響力のある100人のリストに名を連ねたこともあった人物だ。

ボルソナロ氏が2018年に大統領に就任すると、彼を法相として入閣させた。ボルソナロ大統領は連邦警察の長官の任命権などもモロ法相に付与されることを約束。ところが、ボルソナロ大統領の3人の息子が汚職など違法行為に絡んでいるとの疑いがかかった。そこで連邦警察がその調査に入った。同大統領はそれを妨害するような動きを見せて、彼の影響力の及ぶ人物を連邦警察の長官に任命しようとした。それがモロ法相との対立を生み、彼は辞任した。

その後、モロ判事はワシントンで10カ月余り生活していたが、今月11月に帰国し中道右派の弱小政党ポデーモス(スペインのポデーモスとは関係ない)に入党して出馬することを表明したのである。彼が出馬を表明して以来、彼の支持率は8-10%をマークするようになっている。ルラ氏とボスロナロ氏の支持率とはまだかなりの開きがあるが今後の動きが注目される。

彼の本当の狙いは上院か下院の議席獲得を望んでいるのではないかという憶測もある。それを足場に2026年の大統領選に臨むのではないかというシナリオだ。

モロ氏は不正を暴く判事としての評価が高まっていた2016年に政界に入るのかという質問を数度受けた際にその意向は全くないとそれを否定していた。しかし、この段になって彼を支持する有権者もおり新たな決意をしたようだ。