転換期に来たネットの言論 - 渡部薫

2009年02月09日 12:45

ブログ炎上、18人を摘発 名誉毀損容疑で – ITmedia News

まだ記憶に新しい記事ですが、匿名のネット暴力について考えてみたいと思います。そもそも池田信夫さんがアゴラを始めた主旨にも
「日本では匿名掲示板の悪影響でウェブ上の言論が壊滅状態なので、専門家が実名で発言することによって、政策担当者やジャーナリスト、あるいは一般市民との交流をはかりたい。」
とあり、これはネットでの発言が単なるメディアとしての情報発信だけでなく、人間関係のよりソーシャルなメディアに育っているためであるとも言えます。


僕はインターネットの特性を考えるとき必ずしも匿名が悪だとは思っていません。悪く言われる2ちゃんねるですが、中にはとてもすばらしいスレもあり、恐らくほとんどの人は会って話をすればとてもいい人ばかりなのだろうと思うからです。また日本の閉塞感のある社会では、匿名でないと言いたいことも言えない空気もあり、匿名によってどれだけ社会や企業の不正が暴かれているか、またあまり発信できないような直接対面では聞くことのできない相談もできるという利便性があります。

しかし一方でネットの世界には古くからアングラな面もあり、これは現実社会の鏡として悪の部分も反映しているのも事実でしょう。

Googleの企業理念に「邪悪になるな。」(Don’t be evil.)という有名な言葉があります。これはネットの本質を知り尽くして新しい社会のルールを創ろうとするGoogleの姿勢をよく表しています。情報を生み出すのも利用するのも人間ですから、”使う人間のモラルに委ねる”のです。

現実社会と異なりこのネット社会はまだ始まったばかりで社会の成熟度は低いです。匿名の暴力だけでなく、プライバシーの侵害、個人情報漏洩、著作権侵害などほとんど無法地帯と言っていいでしょう。ネットを未だに情報メディアとしか思っていない人には理解しがたいかもしれませんが、ネットはすでに新しい社会基盤であり産業基盤になっているのです。

Googleはウェブの情報インフラとして確たる地位を築き上げましたが、ウェブの社会インフラとしてはFacebookがその先を行っています。

一般的に社会が成熟してくると情報を配信する手段も成熟してきます。政府が情報をコントロールすることもありますが、どこから信頼できる情報が発信されるか、が重要になってくるため新聞やテレビなどのメディアができて社会に大きな影響を及ぼすのは歴史が証明しています。ところが現在の現実社会とウェブメディアをつないでいたのは現実社会に存在する信頼に足る新聞社やテレビ局のメディアだったのですがWeb2.0によってすべての人に情報を発信する権利が与えられました。それらの情報の信頼性を確保するために生まれたのがGoogle PageRankですが、

今のウェブはどこの情報元が信頼できるかではなく、誰が信頼できるか、というソーシャル(社会)に変わって来ているのです。

従ってGoogleのPageRankでは対応できずにFacebookのソーシャルグラフの出番になるのです。

Facebookでは登録者のほとんどが実名で現実社会と密接につながっています。創業者のマーク・ザッカーバーグはこのように言っています。
「実名だからこそ相手のことがわかり、実際の人間関係のままFacebookでもつながることができる」とし、「Facebookでは実名を使うことが常識になっており、実名を使わない人の情報は偽物とすら思われてしまう」

そしてウェブはドキュメントベースのハイパーリンクのつながりからFacebook ConnectやGoogleのOpen Socialのようにウェブ上の人と人のつながりへ移って来ています。これはひとえにどこの情報が信頼できるか、ではなく誰の情報が信頼できてその情報の責任元はどこにあるか、ということを証明するものだからです。

このFacebook Connectを使うと例えばこのアゴラのブログでコメントするときにFacebookからプロフィールとソーシャルグラフ(友人のつながりなど)を参照することができるようになります。したがって単に実名でブログを書いたりコメントするだけでなく
“あなたがどういう人間であるか”
ということまでわかるようになります。

このようなソーシャルウェブになると人と人のつながりをよりよくするために、また自分の信頼性を上げるためにサイバー空間に対面で会話するような言葉の責任というのが発生し、正と悪のバランスが取られるようになるのです。

日本では時に逮捕や自殺などという過激な手段でネットの問題が表面化されますが、ネットのいじめ、学校裏サイト、匿名の暴力などはネットの影の部分としてネット社会が徐々に形成されているから出てくる問題です。この問題の解決は現実社会の法律にはなく、ネット社会における新しい仕組みが必要になってくるのでしょう。私たち大人は新しい社会のルールを創り、次の世代の子どもたちに引き継いで行く責任を負っていることも忘れてはなりません。

私たちがネットでどのような振る舞いをするか、それが可視化されて信頼の絆が積み重なって行くのです。どのような振る舞いをするかはあなたのモラルに委ねられているのです。

起業家 渡部薫

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