ICTにおける日本の地位 - 松本徹三

2009年02月15日 19:18

池田先生のご指摘通り、よく見ると、ITUのランク表のベースになっているブロードバンドの定義は、何と「1.5Mbps以上」となっており、驚くほどの低スピードです。私がランク表だけを見て早とちりしたことについては、お詫びをせねばなりません。

先生のご指摘通り、一般ユーザーに普及しているブロードバンドサービスのスピードと、「ビット当りの価格の安さ」からいうと、日本は間違いなく世界一でしょう。これを実現したのが、ソフトバンクの「蛮勇」だったこともご指摘の通りであり、そのことについては、現在ソフトバンクモバイルに勤務している私も誇りに思っています。


しかし、何故このような事実が国際経済フォーラムやITUのランク表では一向に取り上げられないのかは、反省してみる必要があります。要するに、日本政府も日本の企業も、「日本の常識は世界の非常識」ということに慣れすぎており、「世界の中での日本の貢献」を本気で目標としたり、アッピールしたりすることに、無関心すぎるように思います。

思い出してみると、日本の実力が日本の外では一向に評価されていないことは、これ以外にも数多くあったと思います。

以前にSymbianの代表が来て、「世界のスマートフォンの90%のシェアを握っている」と誇らしげに言うので、「そもそもスマートフォンの定義は何か」と聞いたところ、「値段がUS$250以上で、これこれの機能を含んだもの」と答えました。そこで、すかさず、「それでは日本で売られている携帯電話機の殆どがスマートフォンだということになります。(富士通が開発したFymbianを別にすると)その殆ど全てがSymbianとは関係がないので、これを含めて計算すると、Symbainの世界シェアは相当低くなってしまいますよね」と言ったところ、先方は相当鼻白んでいたということもありました。

(尤も、その頃の日本の携帯電話機は、機能は豊富でも、OSは家電製品並みのトロンでしたから、メーカーがキャリアーの要求に基づいて一つずつ手作りで開発しているに等しく、数十億円から百億円規模の膨大な開発費が数十万台かせいぜい百万台の携帯電話機にオーバーヘッドとしてかかってくるわけで、私としても、とても胸を張れる状態ではありませんでした。)

そう言われてみれば、確かに日本のICTが世界の一歩先を行っているケースは相当あるのかもしれません。しかし、その方向は何となく唯我独尊で、コスト高になっているケースが多く、また、その過程において、「世界市場をよく勉強して出来るだけ仕様を共通化しよう」という努力も、十分になされてはいないように思えます。

携帯電話の第三世代技術(3G)とよばれているWCDMAは、多くの日本人が「ドコモが世界に先駆けて開発した」と信じ、「2GのCDMA端末を世界中で売りまくっていた韓国メーカーと日本メーカーの地位が、ここで逆転するだろう」と期待していたようですが、蓋を開けてみると、韓国メーカーは引き続き頑張っているのに対し、日本メーカーは結局最後まで泣かず飛ばずでした。

矢張り、通信の世界になった途端に、日本の会社は、何故か世界の流れから外れてしまう宿命にあるようです。

このように、巨大市場へと成長した携帯通信の世界では、何となく空振りしてしまった感じの日本ですが、もう一つのお家芸である光通信については、なお望みがあるかもしれません。

そもそも、既存の銅線を使って高速データ通信を可能とするADSLという技術が世界市場で脚光を浴び始めた頃、NTTは「そんなものは中間的な技術に過ぎず、やがては全てが光通信になる」という考えから、当初は見向きもせず、「NTTの人の前でADSL等という言葉を口にしたら、もう通信の世界では生き残れなくなる」という噂が流れるほどでした。

NTTが言っていたことは、成る程、最終的にはその通りだったのですが、世の中の需要の伸びは、NTTが考えていたよりはもっと速いスピードで実現したので、もし日本がADSLに全く手を染めていなかったとしたら、日本のブロードバンドの現状は極めて惨めな状態になっていたでしょう。

現時点では、光通信は、遂に大昔の予言通り、日本ではADSLを抜きました。しかし、ADSLの場合と異なり、「光ケーブルのキャパシティーは8本まとめ買いでないと売らない」というような条件がついてしまった為、「ADSLのような多くの事業者による活発な競争」は起こりえず、現在はほぼNTTの独占状態です。

それだけが理由ではないのでしょうが、NTTによる光ケーブルの施設も計画通りには進んでおらず、華々しかった当初の目標値についても、最近では下方修正が続いています。

このような状況下で、池田先生を含め、多くの方々が意外と思われるかもしれませんが、私は、「日本でも、米国のように、NTTや電力会社に代わって国が光ケーブルを全国に施設し、既に世界第一位である光通信の浸透率を更に高め、日本を文字通り断トツの『光の国』にすべきだ」という考えです。

何故「民営化」の流れに逆らってそんなことを言うのかについては、次回のブログで説明させて頂きたいと思います。

有線と無線の使い分けについての私なりの考えも、その時に説明します。

松本徹三

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