中川昭一前財務大臣の「奇行」- 松本徹三

2009年02月27日 06:58

中川昭一前財務大臣の外遊先での「奇行」について、まことしやかなブラックジョークが流れています。今回の酩酊記者会見もバチカン宮殿での行動も、実は、「日本経済に対する信用を落として、独歩高を続ける円レートを正常化し、壊滅的な状況にある輸出産業をいささかなりとも救いたい」と考えた、財務省高官が仕組んだものだというのです。


勿論、ジョークの域を出ない話ですが、「何故、こんなに大事な局面で、そんなに酒を飲まなければならなかったのか?」「何故、お付きの人たちは、『大臣は体調不良』として、記者会見に代理を立てなかったのか?」「お付きの人達は、何故『バチカン見学の中止』を大臣に進言しなかったのか? 或いは、現場では密着して歩き、抱きかかえてでも『奇行』を止めなかったのか?」等々、疑問が噴出する中では、「もしかしたら、本当にそうだったのかも…」と考える向きも、実はかなりいるようなのです。

もともとのブラックジョークは「中川氏を与謝野氏に替えたい人達の陰謀」というものだったらしいのですが、その後、実際に急速な円安が起こったので、「円の国際的信用を落とすための陰謀」という話にすり替わったそうです。勿論、前者では暗すぎて、ジョークにならないのに対し、後者はとてもよく出来たジョークで、外国人の間でも面白おかしく流布しています。

尤も、一部の外国人の間では、「『日本は期待されても何も出来ない』ことを印象付けるために、大臣自らが、かつてのロシアのエリツィン大統領に倣って、酔っぱらったフリをしたのだ」という説が、当初は流布していたと聞きますから、「官僚陰謀説」は、やはり「何事も官僚が主導すること」に馴れている日本人にしか、発想できなかったもののようです。

さて、ブラックジョークはさておき、このような常識では考えられないようなことが実際に起こってしまったということは、日本の政治のレベルの低さをあらためて浮き彫りにしたものだとも言えます。今回の経済大混乱の中で、少なくとも金融面では最も被害が小さく、従って「混乱脱出のリーダーシップを取れるかもしれない」と当初期待を寄せられた日本の存在感は、日増しに薄れつつあります。(「日本企業が、円高を奇禍として、この機会に積極的に海外企業への出資参画や買収を考えるのではないか」という何人かの外国人の淡い期待は、跡形もなく消え去りました。)

それどころか、日本では、今や政治的求心力すらもが失われ、政官界も産業界も、一体何をどうすればよいのか、途方にくれているかのようです。そういう意味では、中川前財務相のローマでの記者会見は、巧まずして、その状態をそのまま率直に表現したものだったのかもしれません。

昨日の日米首脳会談で、麻生首相は、「経済力第一位と第二位の両国が協力して…」という表現を使いましたが、これを聞いても、誰もピンと来なかったのではないでしょうか? 「経済力第二位」といわれても、「あ、そうなんだ」と漠然と思うだけで、そこからは、もう、「意欲」とか「責任感」が湧いてくるような感じはしません。特に今は、日本中が方向を見失い、茫然自失の状態のようです。

小泉内閣の絶頂期には、良かったか悪かったかの議論はこの際さておくとしても、「改革開放が日本を再生させる」という「張り詰めた期待感のようなもの」がありましたが、今は、仮に政権交代があっても、社会主義の尻尾を引きずった民主党のリーダーシップでは、「格差社会の是正」とかの議論が中心になるような感じで、経済に活力を与えるようなダイナミックな政策が打ち出されてくるとは、とても思えません。

日本は、いつになれば「長期低迷」という「酩酊状態」から立ち直れるのか? その為の切り札となりうるものは何なのか? 今こそ、全国民に発想の転換が求められている時だと思います。

松本徹三

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