Skypeが再びネットに輝きをとりもどすか - 渡部薫

2009年04月15日 17:10

本日、eBayが発表したリリースによれば子会社であるSkypeを独立企業に分離して2010年にもIPOさせるとのことです。TechCrunchの記事によればSkypeはGoogleが買収する噂が絶えなかったり、最近ではSkypeの創業者たちが買い戻す計画があるといった報道もされていましたが、eBayが選んだ道は単にSkypeの経済的な利益を追求しただけでなくインターネットベンチャー企業に新しい光を与えるものではないかと思っています。


eBayはSkypeを26億ドルで買収したのですが、思ったような相乗効果が出せず、eBayのお荷物とまで言われていました。ところがここ数年 eBayの成長は低調で、AmazonやGoogleに比べると影の薄い存在になりつつありました。唯一急成長していたのは赤字ながらもSkypeだった わけです。Skypeは全世界に4億5000万人以上のインストールベースのユーザ数を持ち、最近ではiPhone、iPod touchにも対応したのでますますユーザはSkypeを使う機会が増えるでしょう。この数年で爆発的に普及すると見られるスマートフォン市場を見ても Skypeの市場シェアは圧倒的で音声通話ビジネスはSkypeのWinner Takes Allになっても不思議ではありません。Skypeは一般の国際電話通信が増えていない中、昨年から44%もトラフィックを伸ばし、世界一の国際電話会社になったばかりです。

Skypeがなぜインターネットに輝かしい光をとりもどせるか、考えてみましょう。

そもそもネットスケープから始まったインターネットIPOは、Yahoo!、Amazon、eBayなどIPO当時は赤字企業でした。成功したインター ネット企業に共通していたのは圧倒的な市場シェアと凄まじい成長率です。この点でSkypeは当時のYahoo!やAmazonを優に超えています。固定 通信を崩壊させ、国際電話を占有したのだから今後モバイルの世界でどれだけシェアを伸ばして行くか、いったいどのくらい成長していくのか想像もつきませ ん。そうした期待が十分にあります。

そして多くの人があまり気がついていないですが米国シリコンバレー型ベンチャー企業は2004年にGoogleが上場してから1社もIPOしていないので す。上場する前にGoogleかMicrosoft(Yahoo!、AOLなど)に買収されていたからです。その代表例がGoogleによる YouTubeの買収ですが設立わずか1年のYouTubeが16億ドルで買収されたとき、多くのベンチャー起業家がIPOではなく、Google証券取引所(売却)こそがエグジットモデルだと確信しその考えがこれまでずっと君臨していたのです。そのGoogleも昨年の金融危機もあり巨額の買収案には慎重な姿勢ですし、 MicrosoftがYahoo!を買収しようとしていた金額4兆円も今はその半分以下も出ないのではないかと思います。

もしSkypeがIPOすればGoogle以来、実に6年ぶりの大型IPOになります。僕の直感ではSkypeの時価総額は軽く100億ドル(1兆円)を超えると思います。

さて、これが実現すれば次は何が考えられるでしょうか。恐らくNASDAQに上場すると思われるので米国の市場は活気づくでしょう。そしてSkypeに続く大型IPOが続々と実現するかもしれません。これはベンチャー起業家に大いなる意識の変化をもたらします。Googleに買収されるよりもIPOによって輝く道を選 ぶ起業家が再び出てくるという意味であり、ベンチャーキャピタルも安易な売却には応じずIPOに目が行くようになるのではないかと思います。

どのようなネット企業が待ち構えているかというと
Facebook:世界最大のSNSで登録者は2億人を超え、1000億PV/月とも言われます。(Yahoo! Japanが約400億PV/月)
LinkedIn:世界最大のビジネスプロフェッショナルSNS 広告モデルに依存しない独自のビジネスモデルですでに黒字化
Twitter:今最も勢いのあるリアルタイムコミュニケーションツール&リアルタイムサーチ

さらにeBayのSkypeモデルが成功すれば同じく赤字運営で苦しんでいるGoogleのYouTubeおよびニューズコープのMySpaceが独立企 業としてIPOする可能性すらあります。いずれの企業もIPOすれば100億ドル規模の大型IPOになるに違いありません。

2010年から2015年はインターネットが誕生してから生まれた子どもたちが社会に出てくるタイミングです。ジェリー・ヤンやジェフ・ベゾス、セルゲ イ・ブリンらの世代から見ても二周り若い世代です。経済危機による影響もだいぶ緩和されているでしょう。2000年以降ネットで光り輝いていたのでは Googleだけでしたが、Skypeが一つのきっかけとなりネット系ベンチャー企業に新しい光が見えるようになるかもしれません。

ここで思い出すのはGoogleのCEO、エリック・シュミットの言葉です。
「ネットが負ける方に賭けるのは愚かだ。
なぜならそれは、人間の創意工夫と創造性の敗北に賭けることだからだ。」

このように米国では失敗だ、失敗だと言われていた投資(eBayのSkype買収など)や、金融危機のハンデ(GoogleやMSは買収しなくなる)を乗 り越え新しい新陳代謝がダイナミックに行われようとしています。そしてそれはIPOという巨額のマネーが動く経済的結果だけでなく、それを見た無数のベン チャー起業家やベンチャー投資家に再び火をつけることになるのです。情熱という炎こそが苦しい環境を乗り越えられる指針なのではないかと思うのです。

eBayのSkpyeのニュースはGoogleがYouTubeを買収した後の世界で失われた輝きをとりもどすきっかけになるのではないかと期待しています。
日本も、まさに今のような時期にこそ新しいチャレンジャーが生まれるべきだと思うのです。

起業家 渡部薫

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