堀江貴文の強さと失った石 - 渡部薫

2009年08月01日 13:19

昨日のアゴラ起業塾はホリエモンこと堀江貴文氏の講演でした。あのライブドア事件(2006年1月)から約3年半ぶりに公の場でいろいろな話をしてくれました。昨日会場にいた人は堀江氏から学ぶことは多かったのではないかと思います。

堀江氏はとても率直な話をしてくれたと思います。ベンチャー企業の心がけについて、そして今私たちが暮らしている社会にある非常に危うい法との触れ合いについて語ってくれました。


堀江氏は以前から自分が関わっている事に関して警告を発していました。例えば2005年ごろは株式市場について、「きちんと証券市場を知って対応しなければ外国の証券会社にいいようにやられますよ」とか。

そして今堀江氏が熱心に警告してくれているのが一般市民に対する法との付き合い方です。普通の生活をしている人にとっても、結局のところ法に触れる触れないはお上の判断加減一つでどうにでもなるという仕組みに問題があると。そういう恐怖は身近にそういう体験をしない限り分からないものだと思います。

最近のブログの中でも株式100分割の件にも触れられています。この中で
「分割して株式の流動性を上げることで売買単位を引き下げて多くの投資家にリスクを少なく株を持ってもらおうと考えたのだ。」
とあります。
例えば米国のマイクロソフト社は上場してから最近まで配当を出さす、株価が100ドル近くなったら分割して株主には配当ではなく株式価値で還元するというのが一般的でした。(2000年以降は配当を出しています)

このようにだれもが買いやすい株価に押さえることというのは当たり前で、日本の株のように一銘柄何十万、何百万、Yahoo!のように最高一株1億円を超えるようなことはあり得ないのです。マイクロソフトが15年くらいかけてやったことを1、2年で実行してしまったことに問題があったのでしょう。

また2004年にGoogleがIPOするとき彼らはオークション形式で広く一般の人たちも参加できるようにしました。これもこれまでは一部の金持ちしかIPO銘柄を購入できないといったこと、さらには公開直後に暴投して、すぐ暴落するといった投機的なIPOを防ぐためでもありました。もし堀江氏がGoogleの後に上場を予定していたら日本でも同じことに挑戦したかもしれませんね。

粉飾決算についてですが、僕は裁判とは違った見方をしています。ベンチャー企業を経営していたり、短期間で急成長した企業を見ていればよくあることですが、CEOはすべての取引の詳細まで追う事は不可能です。ましては信頼している部下(宮内氏)や法務を通して確認していることであればなおさらです。鉛筆一本から稟議、PCやケータイの私用兼用での会社支給はなし、交際費を認めない堀江氏が粉飾してまで利益を最大化するようなことを考えるとは思えないのです。それに粉飾は隠さなければならないような損失が出たとか、よほど収益が上がっていない企業が陥る手法で、当時のライブドアの売上げと利益を考えるとそこまでする必要があったかどうか疑問です。

またよくあることですが、不正は大抵ナンバー2以下が行うものです。特にライブドアの場合は創業者である堀江氏と当時のナンバー2である宮内氏の持っている創業者利益の差はとても大きなものだったでしょう。ライブドアファイナンス部門があげる利益によってライブドアの株価が上がり、利益を得るのが堀江氏を含む一部の創業者メンバーだけであれば現場の人たちはおもしろくないでしょう。なんとかして自分たちの上げた利益を自分たちのものにしようと画策することは安易に想像できます。堀江氏に落ち度があるとすれば、そうならないようにファイナンス部門の優秀な人材にストックオプションなり報酬を与えるなどの配慮だったでしょうか。とにかくCEOは知らないとか、信頼している部下がまさかそんなことをしているなんて夢にも思わない、ということです。個人的な見解としては粉飾決算よりもライブドアを叩いて出て来たホコリが宮内氏らが仕組んだ不正行為だっただけで、それを無理矢理、堀江氏に結びつけたというものではないかと思います。

堀江氏はそういうことをされるような言動や態度があったのかもしれませんが、それが個人の人生を奪うような不条理な力の行使につながるのであれば、これからベンチャー企業を志す者や社会の仕組みに違和感を覚えるものが突出して活躍するという芽を摘むのではないかと危惧します。

さて、昨日の堀江氏の話を聞いて堀江氏はファイターだなと思いました。こういう信念を持って戦える人材はなかなかいないでしょう。

ここで「あなたにとって大きな石」という話を紹介します。
———————————
目の前に4リットル入る大きな壺があります。
彼は箱からコブシ大の石を十数個取り出して壺に入れました。これ以上入らなくなったところで、聞きました。「この壺はいっぱいでしょうか」
全員が「いっぱいです」と答えました。

次に彼は小石をたくさん入れたバッグを取り出しました。
小石を何個か取り出して壺に入れて、揺すりました。するとすきまが詰まって小石が壺の中におさまりました。
彼はもう一度尋ねました。「この壺はいっぱいでしょうか」
今度はみんな答えることができず、次に何かあるのかなと首をかしげました。

すると彼は次に砂の入ったバケツを取り出して、壺の中に砂を注ぎいれました。
みんなを見渡してもう一度尋ねました。「この壺はいっぱいでしょうか」
何人かは「そうかもしれない」と言いましたが、みんな黙っています。

次に彼は水差しを取り出して、壺がいっぱいになるまで水を注ぎ始めました。
一同を眺めわたし、尋ねました。「この実験の意味は何だと思いますか」

頭のいい若者が答えました。「どんなにスケジュールがいっぱいでもよく考えればもっと仕事を入れることができる」と。
彼は「違います」と笑顔で答えました。「そう答える人が多いのですが、そういう意味ではありません」

「この実験から学べることは、最初に大きな石を入れないと、それは後からは永遠に入れられなくなるということです」

さて、あなたの人生の「大きな石」は何でしょう。家族との時間、将来の夢、健康、それとも志でしょうか。最初にそれを入れないと、それは永遠に入れられなくなるのです。
———————–
この話はビジョンに対する考え方の話ですが、堀江氏の生き方に通じるものがあります。

堀江氏は大きなそして尖った石だったのでしょう。石には尖ったものもあれば丸いものも、いびつかカタチをしたものもあります。日本という大きな壷で言えば、社会は尖った石を様々な困難や障壁で丸くしていくことができたのではないかと思います。壷の中には様々な個性の石が詰まっているものです。カタチはどうあれ大きな石を取り出して小さな石しか入っていない壷にはもう大きな石は入れられない、そんな社会になってしまったのかもしれません。

堀江氏は優秀な弁護士がついているとはいえ、国家権力と戦っているひとりです。その戦いは正義がどうであれ孤独なものでしょう。そこには孤独な強さが必要です。裁判の行方はわかりませんが、願わくば堀江氏のようなファイターがまた活躍できるような社会があってもいいのではないかと思います。

昨日のアゴラ起業塾では堀江氏のそうした強さの一面を学ぶことができたのではないかと思います。そして言うまでもなくこの強さは覚悟から来ます。ベンチャー起業家にとってこの覚悟というものの持ち方が一番大切である事は言うまでもありません。

ベンチャー起業家 渡部薫

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