憲法論議をぜひ闊達にしてください -中川 信博

2009年08月12日 23:48

―曖昧な表現―

「今後も国民の皆さんとの自由闊達な憲法論議を各地で行ない、国民の多くの皆さんが改正を求め、かつ、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます。」

民主党INDEX2009の最後にこう述べられておりますが、私にはさっぱり何を言いたいのかがわかりません。「合意事項があるかどうかを慎重かつ積極的に検討していく」とは政策集に表記するにふさわしい表現かどうか疑問です。他の項目では「確保する」や「実現する」、「推進する」、「提供する」などの表現をしています。国の根幹に係わる憲法に対する提言としては極めて曖昧かつ消極的な表現ではないでしょうか。


―国家運営の根幹である「憲法典」―

2010年「日本国憲法の改正手続に関する法律」が施行されますが、公布以来憲法改正に関する議論は民主党執行部の政争の具となり―今年の憲法フォーラムで民主党を代表して長島議員が出席し、提言をされておられましたが、憲法議論の不活発を民主党の一方的落ち度であると謝罪しておりましたので、執行部の意向である事は明白と思います―、今日まで国会内で憲法に関しての議論はなされないままであります。INDEXでは「自由闊達な議論を各地で行ない」としておりますが、本当に闊達な議論が行なわれるかは現在の民主党執行部の対応をみておりますと極めて疑問といえます。

私たちは通常「憲法」と「憲法典」を混同して使用していますが、故小嶋東北大学法学部教授は「憲法」と「憲法典」を区別して、憲法典の法源が「憲法(=国家)」にあるという法説を提示されておりました。よって国家の諸法は「憲法」ではなく「憲法典」が法源となると言うことです。

諸法と憲法典で思想や論理が食い違っていては問題ですが、諸法が現実に対応するうちに憲法典と乖離することがあるのは致し方ないことでもあります。昨年は自衛隊の国際貢献活動国籍法で違憲判決が下されております。司法による違憲判決が下された場合には当然、立法府は直ちにその是正に動かなければなりません。昨年末の国籍法の改正は司法の判断に対しての立法府の迅速な対応と言えるでしょう。―改正の中身には言及しませんが―しかし自衛隊の国際貢献の違憲判決に対する議論はついぞ聞かれずじまいでした。

―疑義だらけの「日本国憲法」―

日本国憲法成立過程の疑義はこれまでも一部、学会などでは議論されてきましたが闊達な議論とはいえませんでした。百歩譲って成立過程が合法としても、たとえば日本国憲法施行下で締結された「日本国との平和条約」がいかなる法源で締結されたのか非常に曖昧です。

周知の通り日本国憲法は九条で戦争の放棄を謳っています。交戦権がない憲法で、講和権が存在するのかと言う疑義が残ります。しかし政府は「広義には講和権がある」と解釈しております。ではその法源はどこにあるのでしょうか。それは国家の自衛権の存在と説明されておりますが、国家には自衛権が存在するのであれば、国家(=憲法)に自衛権が存在しているにもかかわらず、憲法典でそれを否定できるのでしょうか。

もう一つの考えとして平和条約は天皇の大権で締結しているという議論です。つまり講和条約を締結するに辺り一旦占領憲法―日本国憲法―が破棄され、大日本国憲法下において講和しているとするものです。主権回復後日本国憲法の破棄手続をしていない当時の吉田内閣の手落ちであったと言うものです。しかし平和条約の一条が連合国との戦争の終了と日本の主権回復でありますので、平和条約締結後主権が回復ですから平和条約締結は占領下であり日本国憲法下あると言えます。

―国民にわかりやすい議論を―

1955年に自由党と日本民主党が大野合した一端は「自主憲法制定」にあったと言っても過言ではありません。しかしこれらの疑義を五十数年も党是に「自主憲法制定」を謳っている自由民主党がほったらかしにしていた罪は重いといえます。諸法が憲法典との齟齬をきたせば諸法は是正されなければなりません。一方憲法典が憲法と齟齬をきたせば憲法典を是正しなければならないのは当然だと思います。「合意形成が出来る事項があるかどうか」というINDEX2009の表現は「なければ改正しない」というニアンスが含まれているように思います。「合意事項」の前に上記に示した疑義に対しわかりやすく「自由闊達な憲法論議を各地で」行なって欲しいものです。

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