「申告漏れ」という軽さ - 岡田克敏

2009年11月12日 13:03

 「申告漏れ」という言葉はうっかりして漏らしたという響きがあり、意図的・積極的に税を逃れるという意味は感じられません。軽い響きの言葉に呼応するように、大勢の方々が「漏らして」いらっしゃるようです。

 今年6月までの1年間に税務調査を受けた法人の申告漏れ総額は1兆3255億円。業種別で不正発見割合が多かったのは7年連続1位のバー・クラブ(56.1%)、2位パチンコ(46.4%)、3位は廃棄物処理(37.0%)の順です。大阪国税局では12年連続でパチンコ業が1位を守っているそうです。はたしてこれらは「うっかり漏れ」なのでしょうか。


 かつては金融業も上位の常連であったのですが、グレーゾーン金利が否定されてから元気がなさそうです。申告漏れ法人とは別ですが、代わって目立ったのが一部の弁護士・司法書士です。調査対象804人の内、697人(86.7%)に申告漏れがあったとされています。不正発見割合は上記の上位3業種に比べても全く遜色ない「成績」です。

 その背景には消費者金融への過払い金返還請求がおいしいビジネスとなった事情があります。債務者への返還・取消し額は大手4社だけで5200億円(07年度)といいますからたいした金額です。金融屋が取っていた金の一部が弁護士と司法書士のポケットに移ったわけですが、元々この金は借りた人達が否応なく出したものです。

 調査対象を選ぶ基準が同じでないかもしれませんが、法曹の一角がこのように最上位を占めることにはいささかの「感慨」を覚えます。調査対象だけで言えば「漏れまくり」状態です。「法」を商売のタネにしている方々ですが、税法には少し弱いようです。

 私が子供の頃、「弁護士って、どんな仕事をするの」と父に尋ねたことがあります。父は「弁護士とは曲がったものを真っ直ぐに見せる仕事をする人たちだ」と答えました。

 ということもあって、弁護士に対し高いモラルを期待しているわけではありませんが、この「成績」は想像以上です。これでは業界のイメージが損なわれ、真面目に仕事をしている人達がやりにくくなるのではないかと、他人事ながら心配になります。

 今をときめく脳科学者の茂木健一郎氏は約4億円の無申告が発覚しました。こちらは申告漏れではなく、もともと茂木氏の脳から「納税」という機能が漏れていたようです。

 深夜の公園で裸になった草薙剛氏は逮捕されただけでなく、社会的制裁を受けました。その片棒を担いだのはマスコミの大報道です。それに比べると茂木氏の件の報道は遥かに小さく、社会的制裁も僅かです。さて、どちらが悪質だと思われますか。

 他人の不正行為には苛酷なまでの厳しさを見せるマスコミですが、申告漏れ、つまり所得隠しに関しては何故か不思議なほど寛大であります。この疑問を解く鍵は以下の事実に・・・。

  朝日新聞09年2月 所得隠し約5億1800万円
  毎日新聞08年5月 所得隠し約4億円
  読売新聞07年4月 所得隠し約4億7900万円
   ・・・・・・
   ・・・・・・
    (以下略)

 「罪なきものは石もてこの女を打て」は聖書の一節ですが、さすがのマスコミも砂粒を投げるのが精一杯、というところでしょうか。

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