社民党レバレッジの迷惑度 - 岡田克敏

岡田 克敏

 普天間飛行場の移設問題は次のような経過をたどりました。

1.社民党の党首選挙で、普天間飛行場の県外・国外移設を主張する照屋衆院議員を福島氏の対抗馬として擁立する動き。
2.これを抑えるため福島氏は普天間飛行場の県外・国外移設を民主党に要請、拒否すれば連立離脱も辞さずと。
3.社民党の「連立離脱」に仰天した民主党は即座に移転問題の先送り決定。
4.米国との信頼関係に重大な懸念が発生。
5.日米関係が深刻な事態に・・・・?


 つまり、照屋議員を擁立しようとする小グループの意向が回りまわって日米関係に重大な影響を与えるに至りました。FX並みの高いレバレッジ(てこ)が実現したというわけです。支持率が1%前後の弱小政党の内部事情によって、対米外交の方針が大きく変更されるのは異常な事態と言わねばなりません。

 またこの間の動きは大変迅速でありましたが、日米関係の重要性を考えるとそんなに簡単にきめていいのかと思ってしまいます。また決断があまりお好きでない鳩山首相が珍しく即座に決断されたことには驚きました。「先送り」という決断だけは例外なのでしょうか。

 2大政党が拮抗しているとき、小政党がキャスティングボートを握り、大きい影響力を行使することがありますが、この場合は多数が決するということであり、合理性があります。しかし今回のケースは少し様相が違います。

 社民党の福島党首の目的は自党内の反対派を抑え、無投票で次の党首になることであったと考えられます。まあ早く言えば保身です。そして社民党が連立離脱をちらつかせた要求に早々と「無条件降伏」した鳩山政権も内閣の保身のためと言われています。

 この一連の過程では「風が吹けば桶屋が儲かる」式に小党の内部事情が結果的に大きい影響力を行使するというレバレッジが働いたわけですが、その理由は連立という政治構造だけではありません。社民、民主の両党主が国や国民の利益よりも自らの保身を優先させ、国や国民の利益のためという大局的な立場を放棄した結果であると言えるでしょう。

 逆に言うと、この一連の過程で国民の利益という観点から判断する部分がひとつでもあれば、このような事態は避けられていたと思われます。だとすると現政権の統治能力に重大な問題があると思わざるを得ません。

 この状況を見る限り、双方とも「友愛精神」は何よりも自党や自分自身に向けられているように感じます。そろそろ看板の「友愛」を「自己愛」に書き換えられてはどうでしょうか。その方が言行一致でわかりやすいように思います。

 レバレッジを効かせた点では国民新党の方も同様です。こちらは財政支出の拡大を実現させました。ここで気になるのは国債発行の増額を主張しながら、その返済計画をまったく示さないことです。返済のメドも示さず借金をさらに重ねる、なんてふつうの世の中では通りません。

 無責任な野党としてのクセが抜けないのでしょうか。国債増発を主張するのならば概略だけでも返済の根拠を示すのがあたりまえです(民主党にも言えることですけど)。単に増発を主張するだけでは「あとは野となれ山となれ」の無責任な態度と言えるでしょう。長期的な視点が欠けている点は普天間問題と同様であり、この政権の特徴なのかもしれません。

 国債増発に対し、その返済計画を求めないマスコミの見識も大きい問題です。権力の監視役を自称するのであれば、政府が借金を重ねる際には返済計画の提示を要求するのは当然のことです。返済計画の提示はマスコミが好んで口にする説明責任のひとつだと思えるのですが、説明を求める声はなぜかあまり聞こえてきません。

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 たまたま本日の松本徹三氏の記事の内容と一部が重なることになりました。松本氏の「日米関係は本当に壊れるかも」はとても説得力があり、賛同できる内容です。私の記事は見劣りしますが、枯れ木も山の賑わいと、ご了承願います。

コメント

  1. codeblueline より:

    全くその通りです!
    「選挙で選ばれなかった人たち(官僚)が政策を立ててるじゃないですかぁ~!」と選挙前に吉祥寺の駅前でがなり立ててたのは菅直人だけれど、誰も社民党や国民新党の議員を選んだ覚えが無い。社民党なんぞは、事あるごとに「夫婦別姓」とか趣味丸出しの懸案事項がぼろぼろ出てきて見るに耐えない。本当に何とかして欲しい・・。

  2. qwertyunion より:

    連立政権の少数党が多数党に過大な要求をするのはドイツの緑の党をはじめ特に珍しくなく別に社民党は変でもなんでもないでしょう。
    だいたい中共の走狗が日本の国益を第一にするわけないし。
    全ての責任は参議院における少数与党である現実をうけいれてまともな国会運営をする努力を放擲した民主党首脳にあります。
    更に言うならば社民党のようなカルト集団と連立を組むという禁断の秘薬に手をだしたこと自体が大間違いです。
    もっともこれは創価学会と手を組んだ自民党も同じですが。
    まあ、そもそも日共を含めて三つもカルト政党があるような異常な国なんて日本以外にないでしょうしそれを以上とも思わない、カルト政党を三つも存続させている日本の民度が所詮その程度だったというだけのことでしょう。
    なんにせよ事の発端が社民党内部の争いだろーとなんだろーと全ての付けは鳩山政権ひいては日本国民が支払わねばなりません。
    結局はカルト政党を存在させたつけは何時かは自分に返って来るということです。

  3. 未来 より:

    どうして先送りする事がそんなに問題なんでしょうかね。
    来年の参議院選まで引き伸ばす事がなぜいけないんでしょう。
    アメリカ様が怒っているからでしょうか?
    なんかそれって情けなくないっすか?

    アメリカも日本の本当の友好国なら日本の事情を理解しなさいよ。

    急に北朝鮮が日本に攻めてくるとも思えないですがね。

    ただ、社民党に言いたい。
    いい加減にしとけよ。
    人も住まない岩礁にアメリカ軍を移転させろはないだろう。

  4. qwertyunion より:

    それはですね、一国の首脳が他国の首脳と約束したことを破れば日本全体の信用問題になるからですよ。
    お家の事情があるならあるではじめからトラストミーなんぞと言わなけりゃよかっただけです。