進歩ないNTTあり方論議 - 原淳二郎(ジャーナリスト)

2009年12月15日 22:55

 総務省のタスクフォースによる,わが国のICT国際競争力についての検討のなかで、NTTのあり方が論議され始めた。NTTのあり方議論は電電公社民営化を決めた第二臨調以来、何度繰り返されてきただろうか。ほぼ30年に渡って同じ議論を続けてきたにも関わらず、まだ結論が出ていない。議論する人間が変わったくらいで中身の進歩がないのはなぜなのか。


今回もNTTの独占性が話題にあがっている。アクセス回線としての光ファイバーの独占が問題視されている。これも10年前から同じ議論が続いている。

NTTが光アクセスの70%以上を占め、競争状態が実現していないから、光インフラ部門を分離し、内外無差別に卸売りすべきだという意見が幅をきかせている。

光アクセスの敷設はNTTが独占してきたわけではない。電力会社も自社の電柱を利用して敷設してきた。CATVなどケーブル会社。ベンチャーも参入した。

地方自治体や地下鉄なども光ファイバー敷設に参入。日本のブロードバンド化は一気に進んだ。

しかし結果としてNTTの光アクセスは70%を超える市場を獲得した。NTTが技術力、資本力などで相対的に有利だったとしてもこの市場占有率は自由競争の結果である。NTTが不当に競争制限をしたり、市場をゆがめる活動をしたりした形跡はない。逆に、ライバル関係にある競争相手からは、もっと安くもっと簡単にNTTの光アクセスを開放せよという要求が続いた。その要求を飲んでいたら、NTTの光アクセスはここまで伸びていたかどうか怪しい。ライバルを有利にするためにNTTが光を敷設するはずがないからである。
なぜインフラベースでの競争が起きなかったのか。いわゆる自然独占性が光アクセスでも存在するのか。これらを検証してからでないとNTTの光独占問題は議論できないはずだ。

もうひとつ事前に検討しておくべき問題がある。ブロードバンドは光ファイバーだけでしか実現できないものではない。無線通信の進歩は目覚しく、光アクセスに近い高速通信が可能になってきている。光と無線のブロードバンド競争は実現可能なのか。実現しないというならその理由は何か。事前に検証する必要がある。

高速無線と光ファイバーが競争関係になるならNTTの光アクセス独占問題はそもそも検討する必要がない。NTTドコモをNTTグループから独立させ、競合関係に置くことの方が重要になるはずだ。

2011年以降、情報通信法体系を見直し、階層構造型の情報通信法に移行させる構想があるが、インフラレベルの競争が実現できないから階層別法体系にするという理屈にも聞こえる。通信インフラレベルの競争はできるのかできないのか。そこを判断しないまま法体系だけ先に進むのは、ちょっと待てよといいたくなる。

タスクフォースの検討の狙いは立ち遅れた日本のICTを活性化するにはどうするかだ。日本は世界最高レベルの通信インフラを持っているのに、ICTはなぜ立ち遅れたのか、まず分析することである。日本のICTはもともと世界から立ち遅れていた。当時その遅れの理由にインターネットアクセスの遅れがあげられた。しかし、いまや世界一のブロードバンド環境がある。いまだに通信インフラの遅れ、独占の問題が議論されているのは理解できない。公社時代のデータ通信は確かに使いにくかった。それがICTの進歩を阻害したのも確かである。だ
が、現在も果たしてそうなのか。

タスクフォースは問題の因果関係、解決しなければならない問題の優先順位を整理してから議論してほしい。いつまでもNTTのあり方を議論していても、ICTの前進には何も役立たないことは過去を振り返れば明らかなのだから。

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