「貴の乱」と幕末 - 泉ゆきなり

2009年12月25日 20:31

日本相撲協会の役員改選で、37歳の貴乃花親方が理事に立候補する決意を固めているという報道がありました。一門離脱まで覚悟しているということで、大相撲改革にかける思い、同年代の私(36歳)は感服しております。

この「貴の乱」(私が勝手に名付けました)をめぐっては、賛否両論があるようです。「賛」としては、「腐敗した相撲界を変えるのは若い人材しかない」、「積極性を買いたい」という論調。「否」としては、「親方としての実績がないのに早すぎる」、「そんな突飛な行動をしなくても、そのうち理事になどなれるのに」「理事としては若すぎる」という論調でしょうか。


この問題は、実力主義のはずの相撲界が、引退後にはズブズブの年功序列・派閥均衡制度で硬直化していることを図らずも示しているように思います。親方として関取を輩出するという「実績」が必要であるというのは、事実上の参入障壁でしょう。関取を育てることは、関取になることと同じく、相撲協会の運営とは関係ありません。極端にいえば、相撲を取ったことがなくてもマネジメント力があれば理事になっても構わないはずです。

理事の人材を熱意とビジョンで決めるのではなく、年功序列と派閥均衡で決めるという相撲界の体質そのものに、若い貴乃花は反乱を起こしたのではないでしょうか。

若い世代が大暴れするということで連想するのが、龍馬や西郷が活躍した幕末です。幕末に20代、30代という若い世代が体制を覆し、新しい時代を築いていった背景には、日本が外国の植民地になるかもしれないという未曾有の国難がありました。そしてこの国難に対応するには、体力・知力・決断力・柔軟性で優れた若い世代でなければならなかったということでしょう。

若い世代が活躍した幕末も、社会の安定とともに年齢を重ねた老獪な根回し型政治家に取って代わられます。外国の植民地の経験がない日本では、幕末のような実力主義の時代は突然変異のようなもので、一服するとコンセンサス主義に取って代わられるようです。

「貴の乱」の成否は、貴乃花の政治的力量や世論の動向のほか、現在の相撲界にどれだけの危機感が共有されているかに左右されるでしょう。相次ぐスキャンダルは危機感をある程度醸成しているでしょうが、相撲は国技ですから業界消滅の危機にまであるわけではなく、のらりくらりと生き延びることも可能でしょう。傍目から見ると勝ち目は薄い気がしますが、現役時代に数々の名勝負でわれわれを感動させてくれた貴乃花が、親方になった後も相撲に対して「不惜身命」で身を捧げる姿にとんでもない器の大きさを感じます。

さて、現在の日本はとんでもない借金を重ね、幕末のような国難が待っているような気がします。もし幕末に匹敵する国難が襲ってきた場合、今の若い世代は先頭に立って立ち向かうことができるでしょうか。それとも、草食系は草食系なりの新型の解決方法を編み出すのでしょうか。

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