ばれるまで黙っていよう、贈与税 - 岡田克敏

2009年12月29日 10:49

 鳩山首相は12億6千万円を親からの贈与と認め、約6億円という多額の贈与税を払うことになりました。不運であったのはたまたま「故人献金」問題で捜索を受けたことであります。これさえなければ鳩山氏は税金を払わずにまんまと贈与に成功していたことでしょう。たいへんお気の毒な、不幸な出来事です(時効成立分については成功ですが)。

 資産家にとって財産を減らさずに子孫に移すことは重大な関心事です。鳩山氏の資産管理会社、六幸商会のことは知りませんが、資産家が相続税や贈与税対策のために資産管理会社を作るのはよく使われる方法です。長期の計画のもとにうまくやれば節税などにかなりのご利益があるとされています。


 もうひとつ気になるのは六幸商会→首相の事務所→各政治団体・個人の活動費・私費への流れが現金となっていることです。一般社会ではこのような高額の受け渡しは小切手か銀行振込みが常識です。現金による受け渡しは面倒なので、跡(証拠)を残したくないときなど、特別な事情があるときに利用されます。

 したがってこのような仕組みは「不透明化」のために用意周到に作られたものであるという気がします。捜査当局は金の流れをほとんど解明できなかったとされており、「不透明化」は大成功のようです。そして鳩山氏だけが資金のことをまったく知らなかったそうですが、われわれの頭脳ではちょっと理解し難いことです。やはり「宇宙人」なのでしょうか。

 鳩山氏は結局、贈与をお認めになったわけですが、もしこの発端が検察の捜査でなく、税務調査であったならば同じことになっていたでしょうか。税務調査の結果、数億円の税逃れが出てくれば普通は立件になると言われています。税務当局と検察庁は「全く知らなかった」という宇宙人のような釈明が理解できるのでしょうか。普通の人が同じことを言ってもまず認めてくれないと思いますが。

 それにしても現職首相による多額の「申告漏れ」という事態に対し、マスコミの優しさが気になります。赤城農相の事務所費が不明朗であるとして今回とは比較にならない程の大騒ぎになりました(それほど重大な罪とは思えませんが)。10年間の事務所費の合計でも数千万円であり、金額は2桁違います。絆創膏を貼って出てきただけでもひどく叩かれ、参院選の自民敗退、安部政権の崩壊へとつながりました。選挙まで左右するマスコミの腕力をまざまざと思い知らされた出来事でもありました。

 今回の「激漏れ」は課税分だけで約6億円であり(延滞税以外の加算税が課せられるのか興味あるところです)、まったくスケールが違います。なぜマスコミはこれほど優しいのでしょう。マスコミには公平性という概念がないのでしょうか。

 税務署長→財務大臣→総理大臣というラインでいえば首相は徴税する側のトップです。納税の範を示すべき立場の人が「激漏れ」とは困ったことです。警察庁長官が刑事事件を起こすようなものです。放置すれば納税のモラルに大きく影響することでしょう。「贈与税はばれるまで黙っていよう、もしばれても払えば済むことだ」、と。

 鳩山氏は民主党のスポンサー、オーナーとも呼ばれ、民主党が鳩山氏の資金力に依存してきたとされています。政治資金規制が徐々に厳しくなった結果、金を集めることが困難になり、自ら資金を持つ人が有利になったという側面は否定できないと思います。

 麻生氏、鳩山氏と自己資金のある首相が続きました。キングメーカーの森元首相は「お世話になったから」と公式の場で麻生氏を首相に推しました。「お世話」が経済的なものかどうかは知りませんが、首相が資質や能力以外の要素で選ばれるのは国民にとってたいへん不幸なことです。その結果かどうかはわかりませんが、両氏とも首相としての資質に疑問が残ります。

 かつて金権政治が批判されました。それが自己資金によるものに変わっただけであるならば残念なことです。首相の巨額の使途不明金が何に使われたのか、たいへん気になるところです。

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