イマドキの起業のしかた - 渡部薫

2010年02月17日 20:32

僕は自称、ベンチャー起業家。これまでに10社くらいは起業し、直接、間接合わせて40億円ほど資金調達して、自分の手金を投資したことがあっても、借金してまで起業したことはないし、保証人になったこともない。見方にもよるだろうがまだ成功はしていないが(苦笑)、リスクの割には大きな失敗もしていない。

そんな僕がここ1、2年で明らかに起業のスタイルが変わったと感じることがあり、起業を志している人の役に立てばと思いそのノウハウとイマドキの起業法を伝授したい。


まず心構えから。おいおい精神論からかよ、と思うかもしれないが、、、

■心構え
1. 起業は怖くない
 リスクは避けるものではなくヘッジするもの。自分の許容できるリスクの範囲をきちんと見定めること。最大のリスクは恐れるという心の弱さのことなのだ。恐れるということを恐れよ!

2. 安定基盤を捨てなくても起業はできる。
 サラリーマン諸君に言いたい。辞めるというリスクを取る必要はない。それで怖さが和らぐなら、サラリーマンであることを有効活用しよう。日本の雇用法は素敵だ。とりあえず9時~18時しっかり働けばよい。残りの時間を自由に設計しなさい。

3.サラリーマンでも1日8時間、年にすると2920時間以上使える
 約3000時間分の自由がある。これだけあればかなりのことができる。起業を月給や年収単位で考えるのではなく細切れの時間単位で考えるようにすること。あなたがもし1000円/時間の価値を生むビジネスを始められたら、300万円にもなるのだ。もちろん夢はもっと大きく持っていい。恐れを少しでも感じるならばこの方法をまずおすすめする。

4. 考えるな、まずやれ!
 あれこれ悩むんじゃない、考えるんじゃない、相談するな。事業はやってみないとわからないことばかりだ。ただしこの方法はあくまでゼロコストでやれる事業に限る。ゼロコストスタートアップというのは限りなく無駄な出費を抑え資金を100%能力価値に費やす手法だ。以下の方法↓

5. 労働集約モデルを捨て、できるだけストック型モデルを考えること
 自分の労働時間に比例する事業は避けよう。体調を壊したり代わりの者ができないようでは事業の拡大ははるかに難しくなる。ストック型モデルというのは一旦契約なりお金が入る仕組みができると後はほぼ自動的に集金できるビジネスモデルのことだ。水道、ガス、電気、携帯電話などはまさにそれ。コピー機を格安でレンタルしてインク代で儲けていくのも似たようなものだ。

さて精神論はともかく具体的な方法に入ろう。

■具体的な方法、それはクラウド型起業
クラウド型起業というとどういうものかというと、いくつか特徴がある。そしてこれは我々のジークラウド社を立ち上げたときの方法である。★はジー社の取った手法である。

・オフィスを持たない(余計なコストはかけない)
 かといってSOHOのように自宅がオフィスというわけでもない。どこでも仕事ができるモバイルおよびクラウド型ワークスタイルのことである。これができないと細切れの時間を使って効率よく事業を進めることができない。
 ★(東京の例で恐縮だが)六本木ヒルズにあるアカデミーヒルズをメインのオフィスにすればよい。1万円/月という料金で信じられない環境を手に入れることができる。一人あたりのスペースはそこらへんの社長室より広いだろう。何より49階と40階で見晴らしもよく、開放感抜群。狭いマンション事務所にするなんてありえない!電話と郵送物はどうするかって?極力メールとフォームを使え。郵送物なんてほとんどない。局留めを活用しろ。実際今もアカデミーヒルズで夜景を見ながら書いている。

・Google Appsを使え
 Google Appsは最高の起業ツールだ。これがあれば大企業より優れたITソリューションを手に入れることができる。Google Appsを知らなければまずは勉強することだ。これそのものを教える時間は僕にはないが、今夏にはクラウドコンピューティング講座も準備するつもりだ。
 ★ジー社が最初に立ち上げたサービスは2つあり、一つはRainbowApps。これはAmazon Web Serviceというクラウドコンピューティングを使っている。Yahoo! Japanよりサーバのパフォーマンスが高い(笑
 もうひとつはiPhoneアプリ開発スクールですべてGoogle Appsを使って1、2ヶ月で構築した。すべて自分で作った。外注などしない。

・資本金は1円で十分、取引銀行口座開設のために株式会社登記はしよう。
 個人事業主と起業の決定的な違いは、法人口座を持っているかどうかにつきる。フリーランスや個人事業主は個人口座を使うが、せめて起業していると思いたいなら株式会社にしよう。それだけで取引先の対応は大きく異なる。

・足りない能力はネットで見つけてコラボレーションする
 もうなんていうか僕の経験からいうとITの世界で(特にエンジニア)優秀で融通の効く人間はいくらでもいる。彼らは本当に優秀だが足りないのはビジネスセンスと企画力、交渉力、コミュニケーション能力だったりする。技術力があれば技術で起業してもいいが、技術がなければ技術者をコラボできる方法を見つけよ。
 ★ジー社では技術者は全員プロフェッショナル契約ベースだ。エンジニアも社員になりたい派ではなく、自由を好む人たちだ。僕はすべて信頼して開発には基本関与せず時間も場所も好きにやってもらっている。信頼関係こそすべてだ。経験上大企業の組織では仲間内の信頼関係すら構築できない。政治的なやり取りをするバカが多すぎるのとオールド世代のノンITリテラシー世代がすべてを邪魔するからだ。

・自由でオープンな環境こそが自由な発想とクリエイティブなサービスを生み出し続ける
 クラウド時代ではすべてはネットワークでつながる。時間も場所も仕事そのものに拘束されることはない。コラボレーションは同期もあれば非同期もあるがゆるやかなつながりが生産性を上げるのだ。通勤、部署、稟議、決裁すべてストレス以外何ものでもない。自由には責任を伴う。それがわかる人と仕事をしろ。
 ★ジー社では就業規則などない(笑 業務契約だけだ。開発管理はすべてオンラインWikiで行われる。チームが面と向かって話すのは週1回1時間程度だ。

・大きく儲けるより、小さく持続性のあるものがゼロコスト、ロングリターンになる。
 起業と言えばハイリスク、ハイリターンだとか言われるが、これからはゼロコスト、ロングリターンを目指すべきだ。ロングリターンにしていくには顧客との関係作りが重要だ。また大企業(大資本)が参入できないように自らの事業は小さく、スピーディーに行うことだ。
 ★ジー社のiPhoneアプリ開発スクールで言うと、毎回受講生のアンケート結果によってカリキュラムを改善する。完全だと思われるカリキュラムはiPhoneの世界では3ヶ月で不完全になるからだ。大手プログラミングスクールが参入しても、我々はスピードと受講生とのコラボレーション教育モデルによってエッジを効かせられるだろう。ゼロコストという観点からいうと、コンピュータプログラミングスクールを開講しようと思えば教室の設備投資やら多大な投資が必要に思える。しかしモバイル&クラウド時代すべてのコンピュータリソースは受講生が持っているし、オープンソースで開発できるため、むしろ受講生のカスタマイゼーションを提供する方が喜ばれるのである。したがってジー社では0コストでプログラミング教室を開講することができた。
※実際には0コストではないが、これまでに比べると初期コストは10分の1から100分の1くらいに抑えられるという意味

・ベンチャーキャピタルも成長している
 これまでベンチャーキャピタルはそもそもオフィスもないような会社に出資するなどあり得なかっただろう。しかしジー社のVCであるサイバーエージェント社は実に画期的な英断を下した。クラウド型ベンチャーに投資したのである。VCにとっても当たり前だが投資判断は、事業内容とそれを実行する人たち(メンバー)の能力を元に判断すべきであり、場所や設備によって判断がされるわけではない。
 ★ジー社では出資してもらったお金はできるだけ100%エンジニアの能力に投資しようとしている。オフィス代、交際費、移動費などオールド世代が出世したら無駄を貪るようなことに他人の資本を使うことはない。これはGoogleが電気を100%クラウドコンピューティングに使いたいという思想に似ている。我々は生産性能力と創造性能力のエネルギーのために資金を使うのだ。

・スピードこそ命
 ウェブビジネスはとても小さく、早く、短くなってきている。iPhoneアプリやAndroidアプリなどロングテールのあらゆるニーズを埋めるために無数に開発されるだろう。もはや大企業はこれらのニーズにスピードで付いていけない。要するにスピードは重い方が不利だからね。軽ければ軽いほどいい。
 ★ジー社ではRainbowAppsを正味3ヶ月×2人のエンジニアでリリースし、スクールは2ヶ月×2人で開講にこぎ着けた。すべてのシステム構築と入金確認などビジネスフローも含めてだ。なぜこんなことが少人数、短時間でできるかというとすべてオンラインで進めるからだ。われわれに無駄な移動時間や会議などはない。いつでもどこでも仕事ができるという環境は、求められるスピードに対して、気軽に休息を取ったり息抜きのための美術鑑賞やカフェでのんびりしたり、大切な人との大切な時間を取る事も可能にした。

詳しくノウハウを出せばもっと長くなってしまうのだが、クラウドコンピューティングを駆使し、モバイル型のワークスタイルとネットワーク型のワークフローにして、オープンな事業モデル、ゼロコスト・ロングリターンモデルに当てはまるよう創造していくのだ。結果、事業実務はとてもシンプルで経理も自分でできる。経費計算は10項目くらいしかない。今は自分の得意分野でしか実践していないが、やりながら感じることは、他にもこの手法が当てはまるビジネスはたくさんあるだろうということだ。

我々が何をしたかというと高度なクラウドソリューション(Google AppsやAWS)を使って、高度なサービスを作り上げたのではなく、クラウド型に業務プロセスを再構築しただけなのだ。たったそれだけで競争力のある新しいサービスが作れるのだ。

願わくはこれを読んでいるあなたがいち早くそれを見つけ実践してほしい。質問や相談があれば、こちらからどうぞ。

P.S.
この話は、ゼロコスト・ロングリターンモデルをターゲットにした起業法のひとつであり、ハイリスク・ハイリターン的なスタートアップベンチャーの立ち上げ方はそれぞれですよ。言ってみれば昔の飲食店モデルで言えば同じハンバーガーレストランでも、ファーストフード店を作るようなイメージです。プロセスのスピードが変わるだけで新しいサービスが生まれる。

起業家 渡部薫

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