映像と音楽だけがブロードバンドサービスじゃない - 原淳二郎(ジャーナリスト)

アゴラ編集部

 最近のPCは面倒な設定が少なくなり、使いやすくなった。それでも初心者や高齢者にはまだ厄介な代物である。ましてインターネットと接続するとなるとややこしくなる。

以前からPCベンダーはサポートセンターを開設し、顧客サービスにつとめてきた。しかし、そのサポセンの電話がつながりにくく、つながっても問題を解決するに至らず、消費者の不興を買っていた。サポセンの良し悪しでPCの売れ行きも左右される。


問題が起きるとその原因がPCのハードにあるのか、ソフトなのか、通信なのか、はたまたインターネットのプロバイダーなのか、ユーザーが特定することは不可能に近い。サポセンに問い合わせてもすぐに問題は解決しない。周りにいるその道のプロに相談するしかなかった。

PC歴30年の私も新機種を買った時は、しばしばサポセンのお世話になる。ハードとともにソフトもバージョンアップするから以前の知識は役に立たない。購入後1年間の保守無料期間中にサポセンに電話をかけまくることになる。最近NTTから電話でPCの遠隔サポートに加入しませんかという売り込みがあった。新しく買ったPCもようやく安定して動くようになったのでお断りしたが、その電話セールスによると、電話のやり取りで問題が解決しない時は、オペレーターと利用者が同じPC画面を見ながら説明を受けることができる。それでも説明が理解できない場合は、オペレーターが遠隔でPCにアクセスし直接、PCの問題解決をするというのだ。それでは自分のPCの中までのぞかれてしまう。よけい気持ち悪いから断ったのだが、NTTに聞くと、加入者がサービス開始以来2年半でもう150万に達したそうだ。利用料金は月額500円。安いといえば安い。難しい技術的問題に答えられるスタッフを確保するには人件費がかかる。500円でペイするのかさらに聞くと、収入はもう年間で90億円になる。人材確保も問題はないそうだ。

サポセン、つまりコールセンターといえば、NTTの番号案内104。104はずっと赤字が続き、値上げが繰り返された。人件費を節約するためオペレーションセンターを集約した上で、人件費の安い地方に分散させた。本業を補う形のコールセンターは104に限らず、どこも収益に苦しんでいる。なるべく利用者を減らしコストを切り詰めたい。だからサービスの質がいつまでたっても改善されない。ところが、PC遠隔サービスのオペレーションセンターは都心にある。

NTTの遠隔サポセンはこれまでの発想を逆転し、より多くの利用者を集めることで収益部門にした。NTTのフレッツ光加入者つまりブロードバンド加入者向けのサービスだが、光回線の加入者が伸び悩んでいるのと対称的である。映画や音楽など大量のトラフィックを流すだけがブロードバンドサービスではない良い
実例である。

オペレーターにPCの中まで見せてサービスを受けることに抵抗感を持たない人が案外多いことにも驚いた。個人情報の開示に敏感になのはいいが、あまり敏感すぎるとこんな便利なサービスが受けられなくなる。

コメント

  1. ismaelx より:

    個人情報をパソコンのハードディスクに入れとくほうが問題では?
    どうしてもいうなら光ディスクに入れておいて通常は抜いておくとか。
    ウィルス対策も考えたら大事なものはパソコンに入れておかないというのが基本と思います。