就職難の「ボトルネック」はどこか ―解雇規制か教育問題か― 赤沢良太

アゴラ編集部

解雇規制が就職難の原因という論考が多い中ので、今回は、教育問題から焦点を当ててみたいと思う。日本の教育は、良くも悪くもひじょうに画一的で、子どもの特製に関係や好みに関係なく、同じ内容で、同じ方法によって行われ続けてきた。そうした教育がうまく機能していた時代もあった。社会的体験や遊びの体験がまだ豊富で、社会的スキルを養う機会がふんだんにあった時代はそれでもうまく行っていたのかもしれない。


学校では、「五教科」主義によるペーパーテストでしか「実力」が発揮できない、砂上の楼閣の学力を養ってはいないだろうか。もちろん、ペーパーテストの能力は、各種資格試験でも存分に生かされる。ただし、資格を取っただけで生きていけるような業種は現在、限りなく少なくなっている。

そもそも大学生が多すぎることが問題だ。しかし、その日本の大学という制度の生立ちを思えば、「有用な官僚になるためにできた機関」であって、そこを頂点にして、大学教育、その下に連なる中等、初等教育に影響を及ぼしてきた。その大学が子どもたちに授けられる知識は、万遍ない知識や専門分野に関する知識、論述という「五教科」ペーパー試験型の登用制度で生かされる能力である。

つまり、高等文官採用試験を前提とした「五教科」主義は、現在のように半数の子どもが大学に通う時代に、そぐわなくなっているのは自明の理であろう。子どもの個性によって、総合型の知識か、専門的な手を動かすような技能か、を早い段階で選択できる仕組みに移行しなくてはならなかったと思う。

私見としては、教育改革の失敗は、「ゆとり」教育ではなく、みんながみんな大学を目指す、つまり、普通高校に比べ、職業高校や専門学校が格下に見られるような意識を払拭できなかったことではないだろうか。北欧やオランダなど教育改革がうまくいっている国々では、自分の個性に合わせて、総合制か職業制かという選択が、かなり若い時期に訪れる。もちろん、途中からコースの変更も可能だ。

現在の就職難の原因は、「大学生が多すぎる」ことが原因であろう。が、なぜ「使えない」大学生が増えすぎてしまったのか、その根本的な原因を考えなければ、日本の就職アンバランスは克服できないのではと、再び思う次第である。
(赤沢良太 一級建築士)

コメント

  1. chokotan153 より:

    大卒を減らしたところで、じゃその分増える高卒、専門卒はなにをすればいいの?

    為替のレートや、海外戦略の強化などで、高卒、専門の受け皿だった工場は海外移転が加速してしまった。

    日本で人手不足業界って介護、医療ぐらいしか・・・ここは税金投入分野なので仕事はいくらあっても、税金投入分しか人を養えない。養えないから慢性的人手不足という事情。

  2. pacta より:

    解雇規制は「企業が売上を伸ばせず雇用を拡大出来ない」「能力の低い現役社員を解雇して新規採用出来ない」問題、教育問題は「労働力としての日本人のコストパフォーマンスが悪く採用して貰えない、採用した企業の業績が上がらない」問題だと思います(他にも問題は色々ありそうですが)。
    どちらが就職難のボトルネックになっているかは統計データを解析しないと何とも言えませんが、まだ前者の比率が大きいと感じます。
    今後、グローバル化の進展によって、後者の比重がより高くなって来るのでしょう。

  3. keibiinn より:

    私は旗振りをやっていますが、うちの会社にも大卒が何人もいます。学習院を出た人もいます。年収130万ぐらいの仕事です。本当に大学を出たのだろうかと思うような人もいます。結局 3流大は高卒とたいして違わないんだなあと思います。役に立ちません。

  4. izumihigashi より:

    学生に人気の就職先ランキングってのが有ります。自分の学生の頃にもそれなりにランキングが発表されてましたし、確かに自分もそこに就職したいと思った時期がありました。
    誰から聞いたか忘れましたが、学生は先のことを考えているようで目先のことしか考えない。経験が不足しているから仕方が無いかもしれないが、今学生に人気がある企業が将来も安泰かはわからない。現に、昔は映画会社が一番人気だった。大映も松竹も難関だった。でも今はどうだ?・・・こんな事を聞かされた自分は考えさせられた。

    公務員が人気なのは解る。将来安泰だと思わせるに十分だからだ。しかし、今人気の民間企業が本当に安泰かは誰も解らない。学生は当然のことながらわからない。

    そんな昨今、就職難が叫ばれる中、中小企業は求人難が続いている。学生の脳内の選択幅が狭まっている。視野を広げれば、そこかしこに就職口があるというのに。

    一律教育の影響も有るかもしれないし、解雇規制の影響もあるかもしれない。解雇規制の緩和などは法律の改正を必要とするが、学生の視野を広げるのは民間で出来る。

    マスコミは国の悪口を言う前に、学生の視野を広げる言論を醸成すべきだと思う。

  5. hamong より:

    >izumihigashi
    「学生の脳内の選択幅が狭まっている。視野を広げれば、そこかしこに就職口があるというのに。」

    全くもってその通りです。現在、ほぼ全ての学生が就職支援サイトをメインに企業情報の収集とエントリーを行っていると思います。そうすると、以前アゴラ内で誰かが記事に書いていましたが学生の脳内選択肢は既に就職支援サイトに登録されている企業に限られていることになります。

    これでは支援サイトに登録できるほど余裕のある会社(即ち大~中企業か?)以外は存在していないことになります。また、地方の中小企業なんてほとんどが登録されていません。もしかすると学生は大企業に行きたいと思っているのではなく、大企業しか知らないのかもしれませんね。

    就職支援サイトに掲載されていない企業情報を入手する方法としては、大学の就職課(大学によってきちんと機能しているか不明)に頼るかインターネットを利用して地道に調べるしかないんですかね。

  6. izumihigashi より:

    デジタル情報革命が解決の糸口になるか分かりませんが、
    可能性を考えたいと思います。

    製造業や流通業に限らず、コンシュマーと接点が無い企業は多いですね。もっぱらB2Bに特化している企業。

    こうした企業は学生の目に触れにくい面がありますね。

    ミスマッチの原因を探って行くと、どうやら就職支援サイトに、偏った求人情報が載せられ、学生がその情報以外の情報を選択肢から外している、いや、そもそもそれ以外の選択肢の存在を知らない事が原因と言う事ですね。

    これをどう解決するか?B2C企業なら、広告欄の片隅に、社員募集を載せる事も出来ますね。問題はB2B企業。どう学生にアピールするか?

    販路拡大の為に直販部門を作ってIT活用して学生の目に付く様にするとか、何らかの工夫が必要でしょうね。
    求人しても人が集まらない企業は、その企業にも一定の責任があるわけですし。変化出来ない企業は淘汰される訳ですし。

    先ずは、求人コストが下がるだけでも、かなり門戸は広がると思いますね。就職支援サイトへの情報の寡占化が主原因なら、それを解消すればいいですね。

  7. はんてふ より:

    使えない大学生=ペーパー至上、というのには異論があります。専門的技能を具体的に伝授するにしても、「教育」は一般化、法則化されたものを伝える事。

    大学ではテストの過去問が出回る。それを試験前に暗記するだけ。つまりペーパーへの執着自体がないような気がします、「使えない大学生」というのは。

    実践的技能にしても、例えば万力ひとつに執着する事、これにしてもテキストへの執着なくして上手にはいかないでしょう。実践的技能を発揮している時、人は何かしらテキストで考えているものだと思います。仕事ができない、仕事がおかしい人は、まず、言われた事ができない。つまりテキストの解釈ができていないんです。

    上司に「何故、こんな風に仕事をしてしまったのか」と問われて、内的テキストがなければ、弁明もできない、反省もできない、改善もできない。これでは仕事ができるようにはならない。社会やコミュニケーションに安易にフィードバックするのでなく、自分の仕事は内的テキストに反映させなくては、仕事は上達しない。

    結論:内的テキストのない実務・実践的技能など有り得ない。内的テキストは「人生の役には立たないような」五教科教育によって養われる。少なくとも義務教育までは五教科教育をすべきだと考える。

    補足:暗黙知にしても、その相伝は結局、「ahd387」を教えて「ahd387」を知った、というようなIn=Outの関係にはない。そもそも伝えるべきは「ahd387」であったのかどうかすら、疑わしいのだから。「何を考えてあんな仕事のやり方をしているのか」と噂される大人にならないために。

  8. galois225 より:

    大学で教育をしているものですが、ご意見には同意しかねます。 大学で教えていることは、即実践に役立つことではないかもしれません。 だから実践的なことを教えたらどうか、そういうことを言われる方もいます。

    ところが実践的なことを教えることにしたとき、それが一般性を失うケースが多いのです。 つまり特定の仕事にしか使えないようなことを教えることは効率に面からも無理があります。 

    どんな職場に行っても、自分で考え問題を解決できる人材を作るというのが大事で、それには物事の要点を的確に掴んでものにしてゆく能力を授業や研究の中で身につけさせるしかありません。 

    建築はどうか分かりませんが、理学、工学となると出口が広いので、普遍性も重視して教育を行う必要があると思うのですが、どうでしょうか。 

    理学、工学で実際に手を動かしてやるというのは実験ですが、実験というのはそれ自体は直接役に立たなくても卒業生の役には十分役立っていると思うのです。 

  9. hogeihantai より:

    >5
    就職支援サイト

    先日テレビを見ていたら求職中の学生が「中小企業専門の支援サイトは2ヶ所あるが企業の登録料が高く、登録している企業数が少ないのでなんとかして欲しい」と話してました。ハローワークが無料で登録させ支援サイトを開設すればよいと思うのですが、何故やらないのでしょうか?わざわざハローワークに足を運ぶ手間も省けます。ハローワークはやはり民営化すべきですね。