アスベスト問題を忘れてはならない - 米崎 義明

アゴラ編集部

東日本大震災の復興における問題は数多いが、あまり取り上げられないが、被災者や支援者全員を含めて関わる問題のひとつに、石綿(アスベスト)問題がある。地震直後の被災地は崩壊した建物から出る石綿(アスベスト)が危険である。石綿(アスベスト)は、名の通り、石の綿で非常に細かい繊維物質の集合体である。杉の花粉よりも細かい粒子であり、非常に飛散しやすい性質をもっている。自分は大丈夫と思っていても、どこから石綿繊維は飛んでくるか分からないし、呼吸をしている限り防ぎようもありません。

1960~1990年代まで石綿は、数多くの建材製品として使用され、自動車や電気製品にも使用されてきた。建物においても防火ための耐火被覆材として、吹付石綿も広範囲において使用されてきた。勿論、吹付石綿のみならず、屋根材や外壁材・内装材等の多用途にわたって石綿製品が使用されてきた。その事を考えると、潜伏期を40年と計算しても、2000年~2030年代以降迄、様々な健康障害の発症が予想される。


日本政府の対応は遅く、厚生労働省は1995(平成7年)阪神・淡路大震災の年にようやくアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)を含有する製品の製造・使用を禁止致しました。そして2004年(平成16年)ようやく、その他の石綿も禁止の対象とした。我々の身近には、まだまだ多くの石綿製品があるのです。
アスベスト濃度が高く、危険な現状であるにもかかわらず、解体作業に従事している労働者にも、被災地の住民にも、その危険性が十分知らされていない。アスベスト使用建物の解体中であることが外部からわかる表示もなされておらず、被災地の住民が防塵マスクを着用して解体現場付近を通りすぎることは稀である。このままでは、数十年後に被災地では肺ガンなどが急増することになりかねず、特に子どもへの影響が極めて深刻であって、事態を放置することはできない。そういった中、立命館大学政策科学部アスベスト研究会から、以下のような勧告がなされている。

震災アスベスト緊急対策について
1.震災直後と解体現場の周辺ではアスベスト飛散の完全防止は困難です。特に工事関係者は専用の防じんマスク着用を義務づけ、住民、ボランティアの方々には少なくとも一般マスクだけでも着用させるように手配すること。
2.アスベスト使用建物についての解体工事については、最低限、環境省「災害時における石綿飛散防止に係る取り扱いマニュアル」に従って応急対策をとること。
3.アスベスト使用建物が不明の場合には、1996年以前の建物には厳重注意をして作業を徹底すること。
4.アスベストの危険について工事関係者のみならず住民やボランティアに周知徹底すること。今後の追跡的な健康調査のために、工事関係者およびボランティアについては登録制度を設け、氏名・作業場所・作業内容等を記録すること。
5.アスベスト濃度測定について恒常的な定点観測をし、撤去現場での測定も随時実施すること。
6.工事監督者や環境測定の専門家による安全確認の監視などの体制をとること。

阪神・淡路大震災や9・11のニューヨークのワールドセンター爆破事件の際のアスベスト対策とそれから得られた教訓にもとづく対策を『終わりなきアスベスト災害―地震大国日本への警告』(岩波ブックレットNo.801)に書いていますので、ぜひ参考にしてください。
立命館アスベスト研究プロジェクト  
立命館大学政策科学部教授 石原 一彦 ・ 立命館大学政策科学部教授 森  裕之

(米崎義明 charity japan)

コメント

  1. minourat より:

    情報をありがとうございます。

    私も、 むかしはマスクも着けないで、 自動車のアスベスト製のブレーキ・パッドを取り替えていました。

    そろそろ危ないですかね?