バロンズ:米株高の夏、秋に持ち越すか否か

バロンズ誌、今週のカバーは投資アプリで知られるロビンフッドを掲げる。ロビンフッドほど、新型コロナウイルスのパンデミックと米株ラリーの恩恵を受けた企業はないだろう。同社は、年初来の6ヵ月間で新たに600万件もの口座を開設した。さらに6月には1日の取引回数が430万件と、競合のe*トレードの4倍近くに膨れ上がった

約10年前の金融危機では多くの個人投資家が様子見だったが、今は違う。取引手数料無料のロビンフッドは今どきなインターフェイスで新たな個人投資家を獲得しただけでなく、同社の取引プラットフォームでは破産申請を行ったレンタカー大手ハーツやフィルム会社大手イーストマン・コダックなどの取引を活発化した。

とはいえ、ロビンフッドだけが米株相場を盛り上げたわけではない。個人投資家は米株相場の4分の1を担う程度で、ロビンフッドの投資家はそのほんの一部に過ぎない。しかし、同社は個人投資家の存在感を確かに高めた。ロビンフッドの成功は今後も続くのか、詳細は本誌をご覧下さい。

カバー写真:Official U.S. Navy Page/Flickr

米株安に備え、現金を積み上げる時が来た―It’s Time to Build Cash to Take Advantage of Stocks’ Coming Tumble.

黒人が主人公となった初のオペラ作品”ポーギーとベス”に登場する名曲”サマータイム”の歌詞「夏は暮らしが楽だ」とはいかず、米株が上昇するなかで懐疑派は弱音を吐く。S&P500種株価指数は2月19日につけた最高値まであとわずかに迫り、むしろマーケットのトーンはアーヴィング・バーリンの”ブルー・スカイズ”のようなアップテンポな展開を迎えるが、米経済との温度差は広がる一方だ。

3月23日に底値をつけてから100日が過ぎ、S&P500は50%以上のカムバックを果たした。LPLフィナンシャルのライアン・デトリック首席マーケット・ストラジテストは「過去最大の買い戻し」と評価する半面、同時に「何百万人もの人々が職を失い、悲劇的にも16万人以上の命を落とした100日間でもあった」と振り返る。

デトリック氏よれば、過去を振り返ると100日のラリーの後も大抵は上昇が続き、過去18例のうち17件が1年後も上昇していた。しかし、別の専門家は最高値更新が迫るなかで恩恵よりもリスクを見出し始めている

センチメントは、どうみてもバブル発生の兆しが現れている。その証左として、BTIGの首席株式・デリバティブ・ストラジテストのジュリアン・エマニュエル氏は「個人投資家の活発な参入」を挙げる。証券会社のプラットフォームが1株以下の取引を可能とするなか、大手IT関連企業を指す”FAAMG”などは株式分割を経て一段高を遂げ、アップルやテスラは”根拠なき熱狂”を体現する銘柄となったと言えよう。

さらに、エマニュエル氏によれば米株相場と米国経済の不一致は過去30年間で最大だ。経済活動が正常化していない例としては、中西部の大学で構成されるアメリカン・フットボール・カンファレンスのBIG10と西部の大学で構成されるPAC12が、今秋から開幕するシーズンを来春に延期すると発表したことが挙げられる。

政治的にも嵐が訪れそうだというのに、S&P500は12ヵ月先の株価収益率(PER)は26倍という水準にある。新型コロナウイルス向け追加経済対策をめぐる協議は難航を極め、失業保険は期限切れを迎えたままだ。また、来月はハリケーン・シーズンと共に米株相場が最も下落しやすい9月がやってくる。

チャート:9月の平均リターンは1.0%安と1年間で最悪

作成:My Big Apple NY

問題は、10~15%安の調整局面を迎えどのように投資家が反応するかで、その程度の下落は足元の上昇スピードを踏まえれば想定の範囲内だろう。エマニュエル氏は勝ち組から足元の出遅れ組、即ち大手IT関連株からエネルギーや金融、ヘルスケアへのシフトを促す。

GMOのジェームズ・モンティアー氏いわく、投資家は啓蒙思想家ヴォルテール執筆”カンディード、あるいは楽天主義説”に登場する名句「あらゆることが可能な世界において、これが最善である」を胸に刻んでいるかのようだ。ヴォルテール氏はまた「疑問を抱くなんて心地よい状態ではなく、全くもって馬鹿げている」との言葉を残し、モンティアー氏は現状の米株相場を表す表現だと警鐘を鳴らすが、市場は耳を傾けるだろうか。


米株相場が調整局面を迎えるかに思えた前週から一転、株価指数は小動きながら安定的に推移しています。ゆるやかながら米国景気も経済活動の再開に伴いコロナ禍での落ち込みを回復しつつありワクチン開発も進行中で、追加経済対策が成立すれば株高が続きそうに見えます。

米大統領選を前に、金融市場が荒れれば米連邦準備制度理事会(FRB)が救いの手を差し伸べるのでしょう。何も恐れる必要はないように見えますが、そんな時こそ“ピットの王子様”と呼ばれたリチャード・デニス氏の「大衆の一番大きな誤解は相場とは、合理的だと思い込むことだ」という名言を思い出したいものです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年8月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。