バロンズ:金利上昇は一時的か否か、それが問題だ

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バロンズ誌、今週のカバーはバイデン政権の気候変動対策で脚光を浴びつつある公益銘柄を取り上げる。モルガン・スタンレーのアナリスト、スティーブン・バード氏によれば、風力や太陽光など再生可能エネルギーの発電源の割合が現在の13%から、2030年までに発電源の39%となる見通しだ。一方で、天然ガスは40%から28%へ低下するという。その結果、公益部門からの炭素排出量は2020年から2030年までに60%減少する公算が大きい。さらにバード氏は「大気は一段とクリーンになり、電気料金が下落し、株主は利益を得られ、そろってウィン―ウィンとなる」と語る。

しかし、 2035年までに電力部門のCO₂排出ゼロを実現を目指すバイデン政権下、多くの投資家は公益株の明るい見通しを見過ごしている。”公益事業セレクトセクターSPDR(XLU)”の上場投資信託(ETF)の過去1年間のリターンをみると、5,000億ドルの公益部門はS&P500の24%高を大幅に下回る10%安だ。とはいえ、公益銘柄の平均配当利回りは3.5%で、今後は再生可能エネルギーを始め電池、蓄電関連、新たな送電網、停電防止に向け配電網の構築といった投資拡大を背景に、年間で5~8%の増益が見込まれる。今後投資すべき公益銘柄など、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが注目する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は再び金利上昇について取り上げる。抄訳は、以下の通り。

焦げ付いた株式投資家、債券は退屈ではないと思い知らされる―Scorched Stock Investors Learn That Bonds Aren’t So Boring, After All.

債券は、不当にも退屈な市場とみなされてきた。しかし、一人のベテラン債券トレーダーは、債券市場について、長きにわたる静寂を経て突然戦況が変化した第一次世界大戦の前線になぞらえる。その通り、債券市場は今まさに大荒れの状態となってきた。

ほとんどの人々にとって、米10年債利回りが前週比で0.25%上昇し、1.4%台に乗せたことなど大した問題ではないはずだ。しかし、米債相場は25日に牙を剥き、市場関係者が「歴史的な」売りに直面した。米債市場の大幅安は米株市場にも影響を与え、ダウは過去最高値をつけた翌日に1.8%下落し、ナスダックは3.5%安と1日の下落率としては2020年10月以来で最大を記録、S&P500も2.4%沈んだ。

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チャート:イールドスプレッド(長期金利―株式益利回り)の推移 作成:My Big Apple NY

米10年債利回りは過去3ヵ月間で60bp上昇したが、そのうち35bpは2月に発生した。25日の上昇は20bpに及び、米10年債利回りは一時1.6%に達した背景として、テクニカル的な売りが過剰な金利上昇につながったとみられる。

利回り上昇は、住宅ローン担保証券(MBS)ポートフォリオへのヘッジとして米国債が売られたことで発生したとの見方が有力視されている(注:金利上昇により借り手は借り換えを行わず、結果的に早期償還の可能性が低下する。これはMBS投資家にとって、元本の回収平均期間すなわちデュレーションの長期化を意味し、その場合は長期の米国債などを売ってデュレーションのリスクを相殺する必要あり)。しかし、メリルリンチのMBS市場の責任者を務め、今は”Convexity Maven blog ”を執筆するハーリー・ベイスマン氏は、このコンベクシティ・ヘッジが利回り上昇につながったとの観測を「間違いだ」と否定する。米連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)やフレディマック(連邦住宅金融抵当公庫)などはかつてこのようなヘッジを行っていたが、政府管理下にある両社は、現在そのような取引から足を洗っているという。ヘッジファンドも、同様だ。

残るは、MBSの3分の1を保有する米連邦準備制度理事会(FRB)と、債券インデックスファンドが考えられるが、どちらもデュレーション縮小に向けたヘッジをしていない。最後の容疑者としては住宅不動産投資信託が挙げられるが、ポジションの規模を考えると市場を動かすほどではないという。

米債市場を振り返ると、米10年債利回りの1.5%超え、弱い米7年債の入札を受けて売りに拍車がかかったようにみえる。いずれにしても、米債はテクニカル的に売られ過ぎ水準にある。実際、26日に米10年債利回りは1.4%台へ低下し、金利上昇にブレーキが掛かったようにみえる。

ローゼンバーグ・リサーチのデビッド・ローゼンバーグ氏は、米債利回りの上昇に対しFRBの大幅利上げを織り込んだ動きと分析する。同氏によれば、ゼロクーポンの”STRIPS債”は、FF金利誘導目標が2018年の利上げ局面でのピークにあたる2.5%へ上昇するシナリオを描いているという。

こうした市場の織り込みは、2月23~24日に行った米上院銀行委員会、並びに米下院金融サービス委員会で半期に一度の議会証言を行ったパウエルFRB議長の発言と食い違うものだ。パウエル氏は雇用の最大化に近づくまで、足元の金融政策を継続すると確約した。パウエル氏はまた具体的にではないにしても、過去の物価の低下を相殺すべく、インフレが2%を大幅に上回って推移させると述べた。仮に言葉通り金融政策を運営するならば、20年12月FOMCで示したように、FF金利を2023年まで0~0.25%で維持するのだろう。FF金利の上昇を織り込む市場に反し、ローゼンバーグ氏は「金利上昇は債券投資家にとって贈り物」と発言、割高観の修正もあって米債が買い戻されると見込む

その他の市場も、金利上昇が一時的にとどまる可能性を示す。例えばテクノロジー関連の大型株は高PER銘柄が多いが、その増益率は上昇した金利と比較して正当化されるのかとの問題が生じる。ローゼンバーグ氏はまた、”リスクパリティポートフォリオ(各資産のリスクに合わせポートフォリオを構築する戦略)”、つまり米株と米債相場の逆相関に依拠する投資商品のリターンが低下したと指摘、実際、”RPARリスク・パリティ上場投資信託(RPAR)”は25日、1日で2.1%も下落し、新型コロナウイルスの感染拡大と共に経済活動が停止した20年3月以来の落ち込みをみせた。

ウォール・ストリートのエコノミストは、1.9兆ドルの追加経済対策など財政支援の効果をにらみ、2021年に7%成長など高成長に期待を寄せる。しかし、2022年には20年3月に成立した景気刺激策(CARES法)に盛り込まれた一部の支援策が期限切れを迎え、財政の崖に直面するリスクに留意しておくべきだ。そうなれば、安全資産である米国債が見直されよう。

S&P500の配当利回りが1.5%を小幅に上回る状況で、米10年債利回りはこれを超えてきたため、投資家はポートフォリオの再構築せざるを得ない。しかし、ローゼンバーグ氏のような米債ブル派は金利上昇局面を買い場と受け止め、金利上昇は一時的とみているのだろう。

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チャート:S&P500の配当利回りVS米10年債利回り 作成:My Big Apple NY

――CARES法のうち、2022年に期限切れを迎える主な支援策は以下の通り。

・商務省経済開発局向け、15億ドル相当の経済開発支援(22年9月末まで)
・2.75億ドル相当の公共衛生、社会福祉サービス緊急支援(22年9月末まで)
・雇用主への給与税支払い猶予(21年12月末、2022年12月末の2回に分けて支払い)

CARES法もさることながら、バイデン政権が提示した追加経済対策1.9兆ドルの個人給付と失業保険上乗せの効果はく落も気掛かりです。足元で企業が省人化を進める状況で、対面サービスを提供する業種を始め、雇用がコロナ以前の水準を回復するかが不透明であり、K字型回復が進むリスクをはらむ。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年3月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。